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私は、お兄様に連れられて王家主催の夜会に参加していた。
失意に沈む私を気晴らしになればと連れ出してくれたのだけれど、皆の私を憐れむ視線が痛い。
「…もう帰りたいわ…」
王太子殿下に呼ばれて行ってしまったお兄様には悪いが、先に帰ってしまおうか…。
「まだ始まったばかりだよ。久しぶりだね、セシリア嬢」
「まあ、アイザック様!?いつご帰国されたのですか?」
私に声を掛けてきたのは、この国の宰相のご子息マブラス侯爵家嫡男のアイザック様だ。
彼は、マブラス侯爵の様に優秀で次期宰相に決まっており、今は勉強の為に隣国に留学している。
確か半年後に卒業し帰国される予定の筈なのだ。
「驚いた?父から君が、婚約破棄したと知らせが来てね。次の者が決まってはと慌てて帰国したんだ。大学の方は全て単位を取り終わって卒業は確定していたからね」
「まぁっ!隣国に居たアイザック様まで婚約破棄が知れ渡ってしまうなんて…もう、恥ずかしいですわ。お兄様が戻り次第、早々に失礼させて…」
「ま、待って。セシリア嬢、どうか私と1曲踊って頂けませんか?」
「アイザック様。申し訳御座いません。わたくしは、目立ちたく…」
アイザック様は、私の手を取ると強引に中央へ連れ出した。
中央へ連れ出されてしまえば、さすがに断わるなんて出来ない。
私は仕方なく1曲だけアイザック様に付き合う事にした。
「セシリア嬢。ありがとう」
「……」
「怒ってる?私は、セシリア嬢に会いたくて急ぎ帰って来たのに、君はダンスもせずに帰ろうとするんだもの、これはもう強行手段しか無いと思ったんだよ」
「わたくしに会いたくて?本当に?冗談ではないのですか?」
「まさか冗談で帰国などしないよ。セシリア嬢。私は君を迎え入れたいと思っている。バルック侯爵には、もう君との縁談の申し込みをしたんだ。あとはセシリア嬢が受け入れてくれれば、私達は婚約する事が出来るんだ。セシリア嬢は、あれから部屋に籠っているとマーカスに聞いてね。今日は頼んで夜会に連れ出して貰ったのさ」
曲が終わると、アイザック様は、私の手を握り、庭へと向かった。
「セシリア・バルック嬢。どうか私アイザック・マブラスと結婚して欲しい」
「わたくしで良いのですか?わたくしは、婚約者に浮気をされ婚約破棄された傷物ですよ?」
「セシリア嬢、君が良いのだ。君が、モイツ伯爵子息と婚約していると聞いた時は、この世が終わったと思った。君には悪いが、婚約破棄されたと聞いた時は神に感謝した。このチャンスを逃してなるものかと大急ぎで帰って来たんだ。セシリア嬢、必ず幸せにすると誓おう。どうか私を信じてこの手を取って欲しい」
差し出された手を、本当に信じて取ってしまって良いのだろうか?
アイザック様の蒼い眼を見ると、私の事を真剣に見つめてくれている。
傷付くのは怖い。
それでも貴族令嬢として結婚しなければ成らないのなら、この方を信じても良いのでは無いか…。
私が良いと言ってくれた蒼い瞳に嘘は見えない。
「アイザック・マブラス様。結婚をお受け致します。どうか宜しくお願い致します」
その瞬間に、アイザック様は「やったー!!」と叫んで喜んだ。
失意に沈む私を気晴らしになればと連れ出してくれたのだけれど、皆の私を憐れむ視線が痛い。
「…もう帰りたいわ…」
王太子殿下に呼ばれて行ってしまったお兄様には悪いが、先に帰ってしまおうか…。
「まだ始まったばかりだよ。久しぶりだね、セシリア嬢」
「まあ、アイザック様!?いつご帰国されたのですか?」
私に声を掛けてきたのは、この国の宰相のご子息マブラス侯爵家嫡男のアイザック様だ。
彼は、マブラス侯爵の様に優秀で次期宰相に決まっており、今は勉強の為に隣国に留学している。
確か半年後に卒業し帰国される予定の筈なのだ。
「驚いた?父から君が、婚約破棄したと知らせが来てね。次の者が決まってはと慌てて帰国したんだ。大学の方は全て単位を取り終わって卒業は確定していたからね」
「まぁっ!隣国に居たアイザック様まで婚約破棄が知れ渡ってしまうなんて…もう、恥ずかしいですわ。お兄様が戻り次第、早々に失礼させて…」
「ま、待って。セシリア嬢、どうか私と1曲踊って頂けませんか?」
「アイザック様。申し訳御座いません。わたくしは、目立ちたく…」
アイザック様は、私の手を取ると強引に中央へ連れ出した。
中央へ連れ出されてしまえば、さすがに断わるなんて出来ない。
私は仕方なく1曲だけアイザック様に付き合う事にした。
「セシリア嬢。ありがとう」
「……」
「怒ってる?私は、セシリア嬢に会いたくて急ぎ帰って来たのに、君はダンスもせずに帰ろうとするんだもの、これはもう強行手段しか無いと思ったんだよ」
「わたくしに会いたくて?本当に?冗談ではないのですか?」
「まさか冗談で帰国などしないよ。セシリア嬢。私は君を迎え入れたいと思っている。バルック侯爵には、もう君との縁談の申し込みをしたんだ。あとはセシリア嬢が受け入れてくれれば、私達は婚約する事が出来るんだ。セシリア嬢は、あれから部屋に籠っているとマーカスに聞いてね。今日は頼んで夜会に連れ出して貰ったのさ」
曲が終わると、アイザック様は、私の手を握り、庭へと向かった。
「セシリア・バルック嬢。どうか私アイザック・マブラスと結婚して欲しい」
「わたくしで良いのですか?わたくしは、婚約者に浮気をされ婚約破棄された傷物ですよ?」
「セシリア嬢、君が良いのだ。君が、モイツ伯爵子息と婚約していると聞いた時は、この世が終わったと思った。君には悪いが、婚約破棄されたと聞いた時は神に感謝した。このチャンスを逃してなるものかと大急ぎで帰って来たんだ。セシリア嬢、必ず幸せにすると誓おう。どうか私を信じてこの手を取って欲しい」
差し出された手を、本当に信じて取ってしまって良いのだろうか?
アイザック様の蒼い眼を見ると、私の事を真剣に見つめてくれている。
傷付くのは怖い。
それでも貴族令嬢として結婚しなければ成らないのなら、この方を信じても良いのでは無いか…。
私が良いと言ってくれた蒼い瞳に嘘は見えない。
「アイザック・マブラス様。結婚をお受け致します。どうか宜しくお願い致します」
その瞬間に、アイザック様は「やったー!!」と叫んで喜んだ。
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