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森の中での生活は快適で、ここに来てからどの位たったのかも忘れてしまっていた。

「あれから1年位は経ったかね?ちょっと外の様子を見に行ってみようか。」

「そうね。それに、そろそろ洋服も入らなくなってきたから街に買い物に行きたいし、家も心配だし、大丈夫なら森の外に出ても良いよね?」

あたし達は森を出て1度家に戻る事にした。
しかし森の入り口に立って呆然とする。

「「「「…………」」」」

黒い雲が国を覆い、空気が淀んでいる様に思う。
視界も悪く遠くに見えていたはずの村が今では見えない。
地は荒れて、草さえ枯れている。

しかし自分達がいる森の空を見上げれば青空。
森の中の空気も清んでいる。

「うわぁ~もしかして、これって聖女の力なのかな?勝手に力を発揮している?聖女って凄いっ!!」

デイジーは、他人事の様に言っているが、あんたが聖女だからね。

こんな状態では村や街へなど行っている場合ではない。
家は無事かと心配になり、4人で黙って歩き出す。

デイジーが歩けば空気も浄化される様だ。

「あはは!やっぱり、あたしって聖女だったんだねぇ~。本当に、びっくりだわ♪」

無自覚聖女は、恐いものなしでおそろしい。

1時間掛けて家に着いた。

家の中は、誰かに捜索されたのか、物取りが入ったのかグチャグチャに荒されていた。

取り敢えず欲しい物だけを持ち、また森へと戻る事にした。

今の状況が分からないし、誰かが物色した形跡がある以上、またやって来るかも知れない。
それならば森に戻る方が安全だ。

「それで、これからどうするか?デイジーが居れば、この森で生活はしていけるけれど…」

「今のままでは、この森以外の地…いや、この国の未来はないなっ。」

「なんかこのまま見捨てたら後味悪いなぁ~王様と貴族達は嫌いだけれど、あたしが聖女ならば、この国を救っても良いのかなぁ~と思う。出来るかは分からないけれどね。」

「はぁ!?何を言っているんだ。今はデイジーだけの身体じゃないんだぞ。無理をして俺達のお腹の子に何かあったら、どうするんだ!?」

森の中で暮らす内に、デイジーとロビンは、お互いを異性として意識している事に気が付き夫婦になっていた。

「う~ん。でも産まれてからだと手遅れかも知れないじゃん。簡単に子供を捨てる貴族達は助けたいと思わないけれど、だからと言って何の関係もない国民の皆も死んじゃうのは嫌だ。村の皆も良い人だったし、街の人も優しかったよ。そういう人は助けたい。まあ選べないから、結局皆助ける事になるんだけれどね。」

「デイジーが決めたのなら、好きな様にすればいいさっ。無理しすぎだったら、あたしが止める。ロビンもデイジーを守って無理させなければ良いんだ。」

「お母さん、ありがとう!」

「あーもう分かったよ!てかさぁー、デイジーの結界はどの位まで届くのかなぁ?もしかして、ここからでも国全体に結界を張れたりしてぇ。」

「無理無理!きっとそんなに簡単には出来ないよぉ~。大体、あたし結界の張り方も知らないしぃ~。」

「前の聖女様が教えて…もう儚くなっていたら、誰か教えてくれる人いるのかな?だいたい神官達が張れてたら、聖女を血眼になって探してないだろう?こんな状況にもなってねぇだろう?」

「それもそうだね!」と言って、デイジーは、森の入り口まで出ると、「取り敢えず祈ってみる!」と手を祈りを捧げる様に握り膝を着き「村を、国を、民を守りたい!」と言って祈った。

覆っていた黒い雲が徐々に晴れて光が差していく。
遠くの村が見える様になった。

「「「おおーっ!!」」」

「なんか出来ちゃった♪」
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