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デイジーのお陰なのだろうか魔物に会う事なく、4人は森の奥までやって来ていた。

開けた所に小さな湖。
水を飲む動物達の姿も見える。

「ここって魔森なんだよね?なんか普通の森みたい。
緑も湖もキラキラしていて、とても綺麗だね。」

デイジーの言う通り、空気も清んでいて、とても魔物がいるとは思えない。
けれど油断は大敵だ。
大昔に魔物が森から出て人を襲ったと言い伝えがある。
もっと奥に潜んでいるのか、それともこの森を捨て離れたのか分からない以上、気を引き締めないと。

カインとロビンは、早速、持ってきたテントを張っている。
当面はテント生活だが、ゆくゆくは家を建てたい。
時間は、たっぷりあるのだ。
のんびりと遣っていけば良い。

アリッサは湖の水を確かめに行くと、水は清んでいて魚も泳いでいる。

「水も飲めそうだし、魚もいるから食料にも困らなそうだね。種を持ってきたから、畑も作り、ここでの生活も何とかなりそうだ。」

1年半位をここで暮らして、その後は隣国にでも行けば良い。

この国の忌まわしき迷信の為に、捨てられた命。
デイジーが聖女を嫌がるのならば、この国よりもデイジーを守りたい。

元々、双子が不吉だと言い始めたのも、遥か昔の王族や貴族達。
平民は、双子が産まれても喜び育てたのだ。

「愚かな迷信のせいで、双子だからとデイジーを捨てたんだ。知らなかったとはいえ、この国は、その時に神に逆らったのさ。罪を犯せば罰は下る。この国は、聖女を殺そうとした罪に問われるのさっ。」

カインもロビンもデイジーも頷いた。

「お父さんが見付けてくれなければ、あたしは死んでた。王様が今でも双子の1人が忌子として処分されている事を知らないのなら愚かな王としか思えない。今更、聖女と言われても、そんな王様も捨てた親も守りたいなんて思わない!」

捨てられ拾われた者達。
カイン以外の3人は親の顔も自分が誰なのかも分からない。
名前さえ付けて貰えず死を望まれた者達。

何も分からぬまま、ただ双子だからと忌み嫌われた者達。

国が迷信を信じるなと、赤子を殺せば重罪だと法を変えてくれれば、捨てられる事も殺される事もなかったのに…。


◈◈◈

「大神官長、一体新聖女は何処に居るのだ?後2ヶ月で1年になるぞ。聖女も日に日に弱って結界も綻び始めようとしている。早く見付けねば、この国は終わってしまうぞっ!」

大神官長も頭を抱えていた。
小さな村の外れに住む家族の作った煎り薬が奇跡を起こしたと報告が有った。
早急に家に向かえば、家はもぬけの殻。
国境を出た報告も無い。

一体どこに消えたのか?
まさか村の外れにある魔森に?
いや、わざわざ魔物に喰われに行く訳がない。
あそこに入るという事は死にに行くという事だ。
聖女が嫌で家族で死ぬなんて有り得ない。
ならば一体どこに行ったのだ?
誰かが匿っているのか?

何としても見付けねば。


◈◈◈

「村外れの家の娘が怪しいと?ならば連れ来い!平民なんて僅かな金を渡せば娘さえも売る。売らないと言うのなら拐ってこい!!神殿より先に話をつけるのだ!」

バーロック侯爵も、従者からの報告で聖女かも知れない娘が居ると報告を受けていた。

魔森に近い村の娘だと、まさか…いや、そんな事はあるわけがない。
あの時、馭者は、森の中に捨てたと言った。
誰も近寄らない魔森だ。
森の中に入る者など居る筈がない。
偶然、同じ年に産まれた子がいたのだろう。


だが、実際は馭者は、魔物が出ると自分が危ないと森の中までは入らずに森の入り口に赤子を置いたのだ。
どうせここでも誰にも見付かる事なく飢え死ぬと思い、主には指示通り森の中に捨てたと嘘の報告をしていた。

バーロック侯爵家の従者は、神殿の使いよりも1日早く村外れの家に着いた。
家の中に入れば先程まで人が居た気配が残っていた。
家族で何処かに出掛けたのだろうか?

夜まで待ったが、誰も帰ってこない。

逃げたのか?
主の激怒した顔が浮かんだ。

ああ帰りたくない。
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