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28、猫おやつ始めました

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橘 信司は覚悟を決めた。
「猫様のおやつを、お客様にあげさせてあげよう」
猫たちのものを食べる姿は可愛い。

今までは、猫たちの健康を考えて常連にもやらせていなかった。
しかし、猫たちの可愛らしい姿を信司が独り占めするのも、もったいないなと思うようになってきた。

それに、この店<猫様が主役>では、マナーの悪い客はリピーターになることは無かった。
「お客様を信じてみよう」

こうして、信司はメニュー表に、<猫様のおやつ 500ギル>を書き加えた。
店を開ける。

最初にやって来たのはラインとレインだった。
彼らは手を洗うと、大人しく入店時間を書いた紙を首から提げた。

「あれ? メニューが増えてるぜ?」
「はい、猫様におやつを、お客さんから食べさせられるようメニューを追加しました」
「おお! それじゃ猫様のおやつを頼む! 二人分な!」
「申し訳ありませんが、1テーブルに着き1おやつのみの提供とさせて頂きます」
ラインとレインは顔を見合わせた。

「それじゃ、一つお願いしよう」
レインが言った。
「それといつもの奴な」
ラインも言った。
「承りました」
信司は台所へ行き、猫用のおやつを取り出すと、ラインとレインのテーブルに置いた。

「猫様が食べているときに、邪魔はしないでください」
「はいよ」
ラインとレインが猫おやつを床に置くと、にゃんにゃんがやって来た。
「おお、来たぞ、にゃんにゃんだ」
ラインは嬉しそうだった。

にゃんにゃんは置かれたおやつを美味しそうに食べ始めた。
「そんなに美味いのか? 一口味見しても良いか?」
「はい、大丈夫です」
レインの質問に信司は答えた。
「なんだ、ただのゆでたとりのササミじゃないか」
「猫様のおやつですので、シンプルにしています」

その後も、猫用おやつは好評だった。
信司は猫たちがお腹いっぱいにならないよう、猫用おやつは先着5テーブルまでとした。

「よかったですね、皆さん喜んでいらっしゃる」
信司は特にトラブルも起きずにすんで、一安心した。

「猫おやつは、メニューに加えて大丈夫そうですね」
信司は満足そうな猫たちを見て、微笑んだ。
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