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36、カフェの誘い
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ベティは家に着いて少し考えてから、ロージーを呼んだ。
「ロージー、明日の午前中にクライド様に手紙を届けてくださる?」
ベティはロージーにそう言うと、部屋に戻って手紙を書き始めた。
「はい、ベティ様。 出来上がったらまた声をおかけください」
「ありがとう、ロージー」
ベティはペンダントのお礼と、来週のお昼に町に行きたいという内容で手紙をしたためた。
「クライド様は、あのカフェを気に入ってくださるかしら?」
ベティはそう呟いて、手紙に封をした。
「ロージー、この手紙をお願いします」
「はい、届けるのは明日の午前中ですね」
ロージーは手紙を受け取ると、自分の部屋に帰っていった。
翌日、ロージーは起きるとクライドの屋敷に向かった。
ベティは一人で部屋の中をうろうろとしていた。
「さてと。今日は何をしようかしら? そういえば読みかけの本がありましたわね」
ベティは静かに本を読み出した。
昼が近づいた頃、ロージーがクライドの屋敷から戻ってきた。
「ただいま戻りました、ベティ様」
「ありがとう。ロージー」
「こちらがお返事です」
「はい、ありがとう」
ベティはクライドの少しクセのある字を指でなぞると、うふふ、と微笑んだ。
手紙には、来週のデートを楽しみにしていることと、愛しているという文句が書かれていた。
ベティは赤面しつつもロージーに礼を言い、昼の食事をとった。
デートの当日になった。
「今日は、ロージーは家に居てくださいます?」
「はい、ベティ様。 お気を付けて」
ベティはロージーを残し、クライドの屋敷に馬車で向かった。
クライドの屋敷に着くと、クライドは濃い青色のマフラーを巻いて現れた。
「まあ、先日のマフラーを使ってくださっているんですね。嬉しいですわ」
「そう言うベティ様も、先日のペンダントを身につけて下さっていますね」
二人は見つめ合った後、にっこりと微笑んだ。
「今日は町を歩いて、私のお気に入りのカフェにご招待しようと思っておりますの」
「それは楽しみですね」
二人は町に向かって歩き始めた。
ウインドーショッピングをしながら、歩いていると昼の時間になった。
「クライド様、ここが私が良く行くカフェですわ」
「ほう、なかなか渋いお店ですね」
二人はベティの行きつけのカフェに入った。
「こんにちは、ミカエルさん」
「これはこれは、ベティ様。そちらは……」
「クライドと申します」
「ミカエルです。どうも」
ミカエルが愛想良く手を差し出すと、クライドはその手を握り返した。
「こちらのチョコレートケーキは、アプリコットのジャムがきいていてとても美味しいの」
「そうですか」
ベティはカフェオレを、クライドはブラックコーヒーを、そしてチョコレートケーキを二つ注文すると二人は窓際の席に着いた。
「町は楽しいですわ」
「そうですか」
ベティとクライドがたわいの無い話をしていると、飲み物とチョコレートケーキをミカエルが運んできた。
「いただきます」
「……美味しいですね」
クライドが驚いた様子でそう言うと、ベティは嬉しそうに微笑んだ。
「でしょう? 是非クライド様にも食べてみて欲しかったので、そう言っていただけて嬉しいですわ」
ふたりがケーキを突いていると、通りがかったオーレリアが窓の外から手を振って店の中にやって来た。
「まあ、仲の良いこと。 羨ましいですわ」
「うふふ」
「ごぶさたしております、オーレリア様」
「クライド様もこんな小さなお店に来ることがあるんですね」
オーレリアが言うと、ベティが答えた。
「落ち着いていて、良いお店ですわよ」
「小さくて悪かったですね」
ミカエルが苦笑しながら口を挟んだ。
「あら、ミカエル様、怒らないで下さいませ」
オーレリアはクライドとベティに挨拶を済ませると店を出て行った。
「嵐のようなお方ですね」
クライドはそう言ってから、コーヒーを一口飲んだ。
「悪いかたではないのですけれど」
ベティはそう言ってオーレリアをかばった。
ベティとクライドはケーキと飲み物をとりおわると店を出て、冬がはじまった町を手をつないで歩いて行った。
「ロージー、明日の午前中にクライド様に手紙を届けてくださる?」
ベティはロージーにそう言うと、部屋に戻って手紙を書き始めた。
「はい、ベティ様。 出来上がったらまた声をおかけください」
「ありがとう、ロージー」
ベティはペンダントのお礼と、来週のお昼に町に行きたいという内容で手紙をしたためた。
「クライド様は、あのカフェを気に入ってくださるかしら?」
ベティはそう呟いて、手紙に封をした。
「ロージー、この手紙をお願いします」
「はい、届けるのは明日の午前中ですね」
ロージーは手紙を受け取ると、自分の部屋に帰っていった。
翌日、ロージーは起きるとクライドの屋敷に向かった。
ベティは一人で部屋の中をうろうろとしていた。
「さてと。今日は何をしようかしら? そういえば読みかけの本がありましたわね」
ベティは静かに本を読み出した。
昼が近づいた頃、ロージーがクライドの屋敷から戻ってきた。
「ただいま戻りました、ベティ様」
「ありがとう。ロージー」
「こちらがお返事です」
「はい、ありがとう」
ベティはクライドの少しクセのある字を指でなぞると、うふふ、と微笑んだ。
手紙には、来週のデートを楽しみにしていることと、愛しているという文句が書かれていた。
ベティは赤面しつつもロージーに礼を言い、昼の食事をとった。
デートの当日になった。
「今日は、ロージーは家に居てくださいます?」
「はい、ベティ様。 お気を付けて」
ベティはロージーを残し、クライドの屋敷に馬車で向かった。
クライドの屋敷に着くと、クライドは濃い青色のマフラーを巻いて現れた。
「まあ、先日のマフラーを使ってくださっているんですね。嬉しいですわ」
「そう言うベティ様も、先日のペンダントを身につけて下さっていますね」
二人は見つめ合った後、にっこりと微笑んだ。
「今日は町を歩いて、私のお気に入りのカフェにご招待しようと思っておりますの」
「それは楽しみですね」
二人は町に向かって歩き始めた。
ウインドーショッピングをしながら、歩いていると昼の時間になった。
「クライド様、ここが私が良く行くカフェですわ」
「ほう、なかなか渋いお店ですね」
二人はベティの行きつけのカフェに入った。
「こんにちは、ミカエルさん」
「これはこれは、ベティ様。そちらは……」
「クライドと申します」
「ミカエルです。どうも」
ミカエルが愛想良く手を差し出すと、クライドはその手を握り返した。
「こちらのチョコレートケーキは、アプリコットのジャムがきいていてとても美味しいの」
「そうですか」
ベティはカフェオレを、クライドはブラックコーヒーを、そしてチョコレートケーキを二つ注文すると二人は窓際の席に着いた。
「町は楽しいですわ」
「そうですか」
ベティとクライドがたわいの無い話をしていると、飲み物とチョコレートケーキをミカエルが運んできた。
「いただきます」
「……美味しいですね」
クライドが驚いた様子でそう言うと、ベティは嬉しそうに微笑んだ。
「でしょう? 是非クライド様にも食べてみて欲しかったので、そう言っていただけて嬉しいですわ」
ふたりがケーキを突いていると、通りがかったオーレリアが窓の外から手を振って店の中にやって来た。
「まあ、仲の良いこと。 羨ましいですわ」
「うふふ」
「ごぶさたしております、オーレリア様」
「クライド様もこんな小さなお店に来ることがあるんですね」
オーレリアが言うと、ベティが答えた。
「落ち着いていて、良いお店ですわよ」
「小さくて悪かったですね」
ミカエルが苦笑しながら口を挟んだ。
「あら、ミカエル様、怒らないで下さいませ」
オーレリアはクライドとベティに挨拶を済ませると店を出て行った。
「嵐のようなお方ですね」
クライドはそう言ってから、コーヒーを一口飲んだ。
「悪いかたではないのですけれど」
ベティはそう言ってオーレリアをかばった。
ベティとクライドはケーキと飲み物をとりおわると店を出て、冬がはじまった町を手をつないで歩いて行った。
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