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34、二つのマフラー
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ロージーが屋敷を出て行くと、ベティはロージー用にウサギの顔つきマフラーを編み始めた。
「ロージーは喜んでくださるかしら?」
ベティは手慣れた様子でサクサクとウサギの顔を編んで、にっこりとした。
「戻りました」
玄関の方でロージーの声がした。
ベティは慌てて毛糸で編んだウサギの顔を机の中に隠した。
「クライド様からのお手紙です」
「ありがとう、ロージー」
ロージーから受け取った手紙を開けると、そこには<明日の午後、お待ちしております。クライド>と書かれていた。
「よかった。明日お会いできるみたいですわ」
「そうですか。今日もココアを召し上がりますか?」
「いいえ、きょうはもう用事はありません。ロージー、ありがとう」
「それでは失礼致します」
ロージーがベティの部屋を出ると、階段を降りるような音がした。一階に何か用事があったのだろう。
「それじゃあ、ロージーに見つからないうちに、ウサギのマフラーも編み上げてしまいましょう」
ベティは、ロージーの瞳の色と同じ茶色の毛糸を取り出して、黙々と少し小さめのマフラーの残りを編みだした。辺りが暗くなり、明かりに火をともす。
ランプの油が無くなる前に、なんとかマフラーが編み上がった。
「完成ですわね。可愛らしく出来ましたわ」
ベティは茶色いマフラーにウサギの顔を取り付けて、にっこりと微笑んだ。
「今は……もう真夜中ですわね。明日のために寝なくてはなりませんわ」
ベティは、茶色のマフラーと深い青色のマフラーをそれぞれ柔らかな布の袋に詰めてリボンをした。そしてそれを机の上に置き、ベットに入った。
「お二人とも、喜んで下さるかしら?」
ベティは明日のことを考えて、にっこりと微笑んだ。
「ロージーは喜んでくださるかしら?」
ベティは手慣れた様子でサクサクとウサギの顔を編んで、にっこりとした。
「戻りました」
玄関の方でロージーの声がした。
ベティは慌てて毛糸で編んだウサギの顔を机の中に隠した。
「クライド様からのお手紙です」
「ありがとう、ロージー」
ロージーから受け取った手紙を開けると、そこには<明日の午後、お待ちしております。クライド>と書かれていた。
「よかった。明日お会いできるみたいですわ」
「そうですか。今日もココアを召し上がりますか?」
「いいえ、きょうはもう用事はありません。ロージー、ありがとう」
「それでは失礼致します」
ロージーがベティの部屋を出ると、階段を降りるような音がした。一階に何か用事があったのだろう。
「それじゃあ、ロージーに見つからないうちに、ウサギのマフラーも編み上げてしまいましょう」
ベティは、ロージーの瞳の色と同じ茶色の毛糸を取り出して、黙々と少し小さめのマフラーの残りを編みだした。辺りが暗くなり、明かりに火をともす。
ランプの油が無くなる前に、なんとかマフラーが編み上がった。
「完成ですわね。可愛らしく出来ましたわ」
ベティは茶色いマフラーにウサギの顔を取り付けて、にっこりと微笑んだ。
「今は……もう真夜中ですわね。明日のために寝なくてはなりませんわ」
ベティは、茶色のマフラーと深い青色のマフラーをそれぞれ柔らかな布の袋に詰めてリボンをした。そしてそれを机の上に置き、ベットに入った。
「お二人とも、喜んで下さるかしら?」
ベティは明日のことを考えて、にっこりと微笑んだ。
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