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4、ティータイムに致しましょう
しおりを挟む孤児院でロイ様とお会いしてから、一週間が経ちました。
私は小作人からの訴えの返答や、町民の小競り合いの調整を致しておりました。
ライム家としての政治的な仕事は、私一人で行っておりますから。
義母であるエイダさんは、ミサに行き神に祈りを捧げるのが生きがいのようですわ。
政治的な判断は時に残酷ですからエイダさん、いえ、義母と呼んでおきましょう。
義母には荷が重すぎたのでしょう。
私が仕事を引き受けるまでは、義母は精神的に参ってしまったのか部屋にこもりがちになってしまいました。
私は今日も午前中に事務仕事を終え、昼食を取りました。
町人の言葉を聞きに広場に出かけておりますと、めずらしく義母が私に客人が来たと伝えるため、屋敷から出てきたのです。
私は慌てて屋敷に戻ると、そこにはロイ様が笑顔で立っていらっしゃいました。
「こんにちは、遊びにきましたよ」
「ご機嫌麗しゅうございます。ロイ様」
義母は私たちが話し始めると、静かに台所に移動していました。
「こんなところで立ち話も何ですから、広間でティータイムに致しませんか?」
私がそう申し上げると、ロイ様は笑顔でおっしゃりました。
「喜んで、お邪魔致します」
屋敷は広いですが、メイド長のユリアの一件が有ってからはメイドが居着かず結局義母と私の二人暮らしをしております。
「どうぞ、こちらへ」
ロイ様を広間のテーブルに案内し腰掛けて頂いたところで、義母が紅茶とスコーンを運んできて下さいました。
「ありがとうございます、お母様」
「ありがとうございます」
「お友達ですか? 数少ないご友人ですから大事にして下さいね、レイズさん」
義母は悪気がなくそう言っているのは十分に伝わります。
私は少し気まずい思いをして、扇子を広げて口元を隠しました。
「ロイと申します。自己紹介が遅くなり、失礼致しました」
「私はレイズさんの義母のエルダと申します」
私が義母をじっと見ていると、察して下さったようです。
義母は席を外しました。
「それではごゆっくり」
「貴方の家には召使いはいないのですか?」
「はい、数年前にちょっとした行き違いがございまして」
ロイ様はそれ以上は聞かずに、紅茶を手にしました。
「頂きます」
「粗茶ですが」
私も扇子をしまい頂きますと言って、紅茶を一口飲みましたが味はしませんでした。
緊張していたのでしょう。
「突然お邪魔して、申し訳ありませんでした」
ロイ様は少ししょんぼりした表情を浮かべていらっしゃいます。
「いいえ、ご来訪嬉しく感じております」
私は精一杯の微笑みを浮かべました。
「レイズ様はお仕事を一人で行っていらっしゃるんですね」
「はい」
「ご立派です」
「恐縮致しますわ。大した仕事は行っておりませんもの」
ロイ様はスコーンに手を伸ばしました。
「これは美味しいスコーンですね」
「私が作りましたの。お口に合ったのなら嬉しいですわ」
私もスコーンを一囓りして、紅茶を飲みました。
「家事もお二人でされていらっしゃるんですか?」
「はい」
私は素直に答えました。
「孤児院の子ども達に手伝わさせてはいかがですか?」
ロイ様の問いかけに驚いて、私は目を見開いてしまいました。
「そんなことは出来ませんわ。家がメチャクチャになってしまいます」
ロイ様は困ったような笑顔を浮かべて、紅茶を飲まれました。
「レイズ様は東洋のめずらしい作物を小作人に育てさせて莫大な利益を享受されていらっしゃるそうですね」
「あら、そんなことまでご存じなんですか?」
私は目をそらしました。
「そのお金は、義母が教会に寄付してしまいますの」
私は嘘をつきました。
「それで、この質素な生活を行っていらっしゃるんですね。尊敬致します」
お金の半分は私の名義で銀行へ貯金しておりますし、四分の一は孤児院の子ども達が成人したときの支度金として取っておいてあるのです。
どんなに罵られようとも、私は自分の生活も爵位も守りたいと考えておりますから。
「美味しいお茶とスコーンでした」
ロイ様は、私の目を見つめて微笑まれました。
「粗末なもので申し訳ございません」
「いいえ。今度は僕が貴方を王宮のティータイムにお呼びしてもよろしいですか?」
「まあ、そんな恐れ多いこと」
私はそう言いながらも顔がほころんでしまいました。
私は小作人からの訴えの返答や、町民の小競り合いの調整を致しておりました。
ライム家としての政治的な仕事は、私一人で行っておりますから。
義母であるエイダさんは、ミサに行き神に祈りを捧げるのが生きがいのようですわ。
政治的な判断は時に残酷ですからエイダさん、いえ、義母と呼んでおきましょう。
義母には荷が重すぎたのでしょう。
私が仕事を引き受けるまでは、義母は精神的に参ってしまったのか部屋にこもりがちになってしまいました。
私は今日も午前中に事務仕事を終え、昼食を取りました。
町人の言葉を聞きに広場に出かけておりますと、めずらしく義母が私に客人が来たと伝えるため、屋敷から出てきたのです。
私は慌てて屋敷に戻ると、そこにはロイ様が笑顔で立っていらっしゃいました。
「こんにちは、遊びにきましたよ」
「ご機嫌麗しゅうございます。ロイ様」
義母は私たちが話し始めると、静かに台所に移動していました。
「こんなところで立ち話も何ですから、広間でティータイムに致しませんか?」
私がそう申し上げると、ロイ様は笑顔でおっしゃりました。
「喜んで、お邪魔致します」
屋敷は広いですが、メイド長のユリアの一件が有ってからはメイドが居着かず結局義母と私の二人暮らしをしております。
「どうぞ、こちらへ」
ロイ様を広間のテーブルに案内し腰掛けて頂いたところで、義母が紅茶とスコーンを運んできて下さいました。
「ありがとうございます、お母様」
「ありがとうございます」
「お友達ですか? 数少ないご友人ですから大事にして下さいね、レイズさん」
義母は悪気がなくそう言っているのは十分に伝わります。
私は少し気まずい思いをして、扇子を広げて口元を隠しました。
「ロイと申します。自己紹介が遅くなり、失礼致しました」
「私はレイズさんの義母のエルダと申します」
私が義母をじっと見ていると、察して下さったようです。
義母は席を外しました。
「それではごゆっくり」
「貴方の家には召使いはいないのですか?」
「はい、数年前にちょっとした行き違いがございまして」
ロイ様はそれ以上は聞かずに、紅茶を手にしました。
「頂きます」
「粗茶ですが」
私も扇子をしまい頂きますと言って、紅茶を一口飲みましたが味はしませんでした。
緊張していたのでしょう。
「突然お邪魔して、申し訳ありませんでした」
ロイ様は少ししょんぼりした表情を浮かべていらっしゃいます。
「いいえ、ご来訪嬉しく感じております」
私は精一杯の微笑みを浮かべました。
「レイズ様はお仕事を一人で行っていらっしゃるんですね」
「はい」
「ご立派です」
「恐縮致しますわ。大した仕事は行っておりませんもの」
ロイ様はスコーンに手を伸ばしました。
「これは美味しいスコーンですね」
「私が作りましたの。お口に合ったのなら嬉しいですわ」
私もスコーンを一囓りして、紅茶を飲みました。
「家事もお二人でされていらっしゃるんですか?」
「はい」
私は素直に答えました。
「孤児院の子ども達に手伝わさせてはいかがですか?」
ロイ様の問いかけに驚いて、私は目を見開いてしまいました。
「そんなことは出来ませんわ。家がメチャクチャになってしまいます」
ロイ様は困ったような笑顔を浮かべて、紅茶を飲まれました。
「レイズ様は東洋のめずらしい作物を小作人に育てさせて莫大な利益を享受されていらっしゃるそうですね」
「あら、そんなことまでご存じなんですか?」
私は目をそらしました。
「そのお金は、義母が教会に寄付してしまいますの」
私は嘘をつきました。
「それで、この質素な生活を行っていらっしゃるんですね。尊敬致します」
お金の半分は私の名義で銀行へ貯金しておりますし、四分の一は孤児院の子ども達が成人したときの支度金として取っておいてあるのです。
どんなに罵られようとも、私は自分の生活も爵位も守りたいと考えておりますから。
「美味しいお茶とスコーンでした」
ロイ様は、私の目を見つめて微笑まれました。
「粗末なもので申し訳ございません」
「いいえ。今度は僕が貴方を王宮のティータイムにお呼びしてもよろしいですか?」
「まあ、そんな恐れ多いこと」
私はそう言いながらも顔がほころんでしまいました。
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