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4.結婚

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 結婚式までの日々はあわただしかった。大急ぎでウエディングドレスを頼んだり、披露宴の招待客リストを作ったり。結婚式は王宮の教会で、披露宴はブラッド様のご実家で行う予定だ。

 自分の部屋に戻り一息ついていると、ドアがノックされた。
「お嬢様、お手紙が届いています。お花も。」
「ありがとう」

 私はメイドから手紙を受け取った。手紙には真っ赤なバラの花が一輪添えられている。
「……やっぱりブラッド様からだわ」
 家族の顔合わせをしてから、毎週末、ブラッド様から手紙が届くようになった。

<準備は順調に進んでいる。君と共に過ごせる日が待ち遠しい。ブラッド>

 ブラッド様、騎士団長のお仕事も忙しいはずなのに……。
 私はブラッド様の思いに応えられるか、と考えて気が沈んだ。
 どうしてブラッド様は、こんなに私のことを思ってくださるのかしら。

 結婚式当日。

 白いドレスに着替え、髪を編み、お化粧をしてもらう。
 お母様と一緒に注文した、ダイヤモンドとサファイアで小さな花弁を表現した豪華なネックレスを首にかけた。
 鏡の中の自分を見て、ため息をつく。
「本当にブラッド様のお嫁さんになるのね」
 騎士の妻なんて想像がつかない。私はやっていけるのだろうか。

 薄曇りの中、馬車で教会に向かう。四人乗りの馬車の中では、お父様とお母様、私が向かい合って座っている。
「ローラ、しっかりと頑張るんだよ」
「はい、お父様」
「寂しくなるわ」
「お母様……」

 教会に着いた。すでに何台もの馬車がとめられている。
 お父様たちに続き、私も馬車を降りる。
 教会に入るとブラッド様が待っていた。
 鍛えられたしなやかで大きな肉体をつつむ軍服には、いくつもの勲章がつけられている。
 
 私を見つけたブラッド様は立ち上がり、目を見開いてから微笑んだ。
「なんて美しいんだ、ローラ嬢」
 感情をこらえるようなブラッド様の震える声が聞こえた。
「ありがとうございます」
 私は、はにかんでお辞儀をした。
 
 結婚式が始まった。
 私はお父様の腕に手をかけ、バージンロードを歩く。
前方でブラッド様が待っている。
私はお父様から離れ、ブラッド様の腕につかまる。
神父様の話を聞き、誓いの言葉を口にする。
指輪を交換すると、神父様は言った。

「それでは誓いの口づけを」
 神父様の言葉に従い、ブラッド様を見た。ブラッド様は私の顔にかかったヴェールを上げ、そっと唇を重ねた。

 式が終わり、教会を出る。私の頬を伝う涙を、ブラッド様が指先で拭った。
「これで君と夫婦になれた。これから、よろしく」
「こちらこそよろしくおねがいいたします。ブラッド様」

「ブラッドと呼んでくれ」
「……ブラッド、私のことはローラと呼んでください」
「ローラ。私の美しい妻」
 ブラッド様は私を抱きしめた、

「さあ、私の屋敷へ向かおう。披露宴だ」
「……はい」
 私たちは馬車に乗り、ブラッドの屋敷へと向かった。

「……こんなに人を愛せる日が再び来るとは思わなかった」
 ブラッド様のつぶやきに、私は首をかしげる。
「ブラッド?」
「なんでもない」
 ブラッドは、くしゃり、と破顔した。
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