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第3章
プロローグ
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先に車を回し外で待っていた伊坂が恭しく雅也を迎える。
「お疲れ様です雅也さん、」
「はい」と、頷く雅也からカバンを受け取り代わりにペットボトルの水を手渡してやる。
「ありがとうございます」
「大丈夫でしたか、象山先生のお話は長いですからね」
「あはは~そうなんですよね。暖かくて少し眠くなっちゃいました」
「大変でしたね。寝て、ませんよね? 」
「ね、寝てません…」
ボトルのキャップをひねりながら雅也が目を反らす。
おやおやと、視線を追いかける伊坂。可哀想だが上尾の若君がうたた寝していたとなると途端に噂になるような世界なので釘を刺しておかねばならない。
「雅也さん、お疲れの所悪いんですが」
「うぅ、すみません。気をつけますから…」
暗に「小言はやめて」と上目遣いでうるうるされれば、言いかけた言葉も引っ込んでしまうというものだ。
「ごほんっ…今日は忙しかったし仕方ないですね。この後は、家に帰れますよ」
咳払いして後部座席のドアを開けてやる。
「わ~い、やった」
「明日の協会の会合ですが、どうします? 特に重要な案件はないので他の人間に行かせてもいいんですが」
「んー? 」
水を喉に流し込みながら雅也が伊坂を見上げる。
「佐久間さんが出席されるそうですよ」
「…あぁ、なるほど。」
佐久間さんね、と猫のように瞳を細める。
「いいですよ、行きましょう。」
はっきりした口調で告げると車に乗り込む。伊坂が扉を閉めてくれる。
「お話できるといいですね」
「ええ。」
こうして雅也の明日の予定が決定した。
「お疲れ様です雅也さん、」
「はい」と、頷く雅也からカバンを受け取り代わりにペットボトルの水を手渡してやる。
「ありがとうございます」
「大丈夫でしたか、象山先生のお話は長いですからね」
「あはは~そうなんですよね。暖かくて少し眠くなっちゃいました」
「大変でしたね。寝て、ませんよね? 」
「ね、寝てません…」
ボトルのキャップをひねりながら雅也が目を反らす。
おやおやと、視線を追いかける伊坂。可哀想だが上尾の若君がうたた寝していたとなると途端に噂になるような世界なので釘を刺しておかねばならない。
「雅也さん、お疲れの所悪いんですが」
「うぅ、すみません。気をつけますから…」
暗に「小言はやめて」と上目遣いでうるうるされれば、言いかけた言葉も引っ込んでしまうというものだ。
「ごほんっ…今日は忙しかったし仕方ないですね。この後は、家に帰れますよ」
咳払いして後部座席のドアを開けてやる。
「わ~い、やった」
「明日の協会の会合ですが、どうします? 特に重要な案件はないので他の人間に行かせてもいいんですが」
「んー? 」
水を喉に流し込みながら雅也が伊坂を見上げる。
「佐久間さんが出席されるそうですよ」
「…あぁ、なるほど。」
佐久間さんね、と猫のように瞳を細める。
「いいですよ、行きましょう。」
はっきりした口調で告げると車に乗り込む。伊坂が扉を閉めてくれる。
「お話できるといいですね」
「ええ。」
こうして雅也の明日の予定が決定した。
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