1 / 76
序章 プロローグ
1話 殺し屋のレッド①
しおりを挟む
静かな夜。
青年は黙々と読書に耽っていた。胸には紅い宝石の付いたネックレスが、灯りに照らされて鈍く光っている。
コンコン
ドアがノックされ、返事もしない内に女が入ってきた。
女「邪魔するわよ。」
青年「もうしてるじゃないか。」
もう時間か。読み飽きた本でも、それなりに時間は潰せた様だ。
青年「ちょっと早くないか。もうそんな時間?」
女「余裕ね?生憎、もうそんな時間よ。」
青年「ふーん。」
女は静かに椅子に座る。
女「レッド、何?やる気無い訳?」
青年「殺る気はあるよ。」
レッドってのは俺の通り名、って言うかコードネームだ。最初の頃に仕事した時に、返り血を全身に浴びてしまったせいで呼ばれる様になってしまった。
因みにコイツはブルー、俺の相棒だ。興味が無いから聞いた事は無いけど、冷酷な女って事なんだろうか。
ブルー「ちゃんと今日の仕事内容、覚えてるの?」
レッド「ターゲットはハンター支部の副部長、スウァム・トルレスだろ。」
ブルー「時間は?」
レッド「20:00。後30分位だ。」
ブルー「ロックする場所は?」
レッド「候補は二ヶ所。北のスラム街か南のハンター本部。」
ブルー「貴方の担当は?」
レッド「俺がスラム街、ブルーがハンター本部で待ち受ける。」
ブルー「今回の依頼者は?」
レッド「そんなん知らん。仮に知っててもお互いに何も言わないもんだろ。」
ブルー「まあちゃんと分かってるなら良いわ。」
レッド「今更、確認する事かよ。」
ブルー「そうね。貴方が無愛想なのは今更だったわね。」
そう憎まれ口を叩きながら、ブルーは静かに立ち上がった。
ブルー「じゃあ私は行くわ。今回の依頼は外せない。確実にロックしないとね。」
レッド「そうだな。まあスラム街は近いから。」
ブルー「だからそっちを選んだんでしょ?」
レッド「こっちの方がターゲットの来る確率が高いからだろ。」
ブルー「数%だけでしょ。これで取り分は一緒なんて。」
レッド「俺が倒しても、だろ。」
ブルー「はいはい、じゃあね。」
ブルーは去って行った。
さて、ロック…つまり、ターゲットを殺す事だが。ロックまでまだ時間はあるが、そろそろ出掛けようか。
建物の屋根に登り、見渡しの良い場所で待機する。
腰に携えたダガーを確認する。アサシン本部から支給されているアサシンダガーってやつだ。昔は狩りで短剣ばかり使っていたし、アサシンになったばかりの頃も長剣は重くて使い難かった。あれ以来ソードは触っていないが、結局はダガーが使いやすくて良い。
アサシンの仕事は何もハンター相手ばかりでは無い。寧ろ今回みたいなハンターの役職、って方が珍しい位だ。依頼金からして、そこらの野良依頼では無いだろう。面倒な事にだけは巻き込まれたくないもんだ。
レッド「そんなこんなで、ターゲットのスウァムもブルーの方へ行ってくれるのが一番良いんだがな。」
そう呟きながら、道を歩くターゲットを発見してしまう。この辺りはこの時間でも人気が無い。残念ながら見失う事が困難だ。
レッド「はあ…面倒だな。」
音をたてずに屋根を飛び移り、一気にスウァムの前方へ降りた。
さて、ロック開始だ。
レッド「スウァム・トルレスだな。」
スウァム「そうだが、お前は誰だ?」
レッド「答える必要は無い。死んで貰おう。」
俺はダガーを構える。
スウァム「なるほど、アサシンだな。」
レッド「……」
スウァム「アサシンはアサシンらしく、後ろから狙って来れば良かったものを。」
レッド「行くぞ。」
走り出し、一気に間合いを詰めて斬り掛かる。
スウァム「甘いな。」
ダガーを受け止めて、そのまま力で押し返す。見た目より力があるな。
スウァム「正々堂々と正面から来た事は誉めてやろう。その事を後悔しながら死んでいけ。」
スウァムは振りかぶり斬り掛かってきた。
レッド「悪いが、時間を掛けるつもりはない。パワーホールド!」
パワーを上げる魔法を掛ける。一般的に知られている攻撃力増加の魔法より強力な魔法。俺の一番得意なやつだ。
スウァムの攻撃を回避して一気に斬り付けた。そして直ぐに動きの止まったスウァムの身体の向きを変え、後ろから首を切る。
これが返り血を浴びないコツだ。俺だって学んでいる。
いつも通りの手応えがある。ダガーのせいなのか直で感じてしまう。
ふう、と息を吐いた頃にはスウァムは地面に倒れていた。虚ろな目をし、ただ呼吸だけをしている。いや、実際は呼吸さえ出来ていないだろう。
そう考えている間にスウァムは動きを完全に止めた。
レッド「さて、冥福を祈るか。」
スウァムだったモノに手を合わせる。俺のいつもの儀式だ。
青年は黙々と読書に耽っていた。胸には紅い宝石の付いたネックレスが、灯りに照らされて鈍く光っている。
コンコン
ドアがノックされ、返事もしない内に女が入ってきた。
女「邪魔するわよ。」
青年「もうしてるじゃないか。」
もう時間か。読み飽きた本でも、それなりに時間は潰せた様だ。
青年「ちょっと早くないか。もうそんな時間?」
女「余裕ね?生憎、もうそんな時間よ。」
青年「ふーん。」
女は静かに椅子に座る。
女「レッド、何?やる気無い訳?」
青年「殺る気はあるよ。」
レッドってのは俺の通り名、って言うかコードネームだ。最初の頃に仕事した時に、返り血を全身に浴びてしまったせいで呼ばれる様になってしまった。
因みにコイツはブルー、俺の相棒だ。興味が無いから聞いた事は無いけど、冷酷な女って事なんだろうか。
ブルー「ちゃんと今日の仕事内容、覚えてるの?」
レッド「ターゲットはハンター支部の副部長、スウァム・トルレスだろ。」
ブルー「時間は?」
レッド「20:00。後30分位だ。」
ブルー「ロックする場所は?」
レッド「候補は二ヶ所。北のスラム街か南のハンター本部。」
ブルー「貴方の担当は?」
レッド「俺がスラム街、ブルーがハンター本部で待ち受ける。」
ブルー「今回の依頼者は?」
レッド「そんなん知らん。仮に知っててもお互いに何も言わないもんだろ。」
ブルー「まあちゃんと分かってるなら良いわ。」
レッド「今更、確認する事かよ。」
ブルー「そうね。貴方が無愛想なのは今更だったわね。」
そう憎まれ口を叩きながら、ブルーは静かに立ち上がった。
ブルー「じゃあ私は行くわ。今回の依頼は外せない。確実にロックしないとね。」
レッド「そうだな。まあスラム街は近いから。」
ブルー「だからそっちを選んだんでしょ?」
レッド「こっちの方がターゲットの来る確率が高いからだろ。」
ブルー「数%だけでしょ。これで取り分は一緒なんて。」
レッド「俺が倒しても、だろ。」
ブルー「はいはい、じゃあね。」
ブルーは去って行った。
さて、ロック…つまり、ターゲットを殺す事だが。ロックまでまだ時間はあるが、そろそろ出掛けようか。
建物の屋根に登り、見渡しの良い場所で待機する。
腰に携えたダガーを確認する。アサシン本部から支給されているアサシンダガーってやつだ。昔は狩りで短剣ばかり使っていたし、アサシンになったばかりの頃も長剣は重くて使い難かった。あれ以来ソードは触っていないが、結局はダガーが使いやすくて良い。
アサシンの仕事は何もハンター相手ばかりでは無い。寧ろ今回みたいなハンターの役職、って方が珍しい位だ。依頼金からして、そこらの野良依頼では無いだろう。面倒な事にだけは巻き込まれたくないもんだ。
レッド「そんなこんなで、ターゲットのスウァムもブルーの方へ行ってくれるのが一番良いんだがな。」
そう呟きながら、道を歩くターゲットを発見してしまう。この辺りはこの時間でも人気が無い。残念ながら見失う事が困難だ。
レッド「はあ…面倒だな。」
音をたてずに屋根を飛び移り、一気にスウァムの前方へ降りた。
さて、ロック開始だ。
レッド「スウァム・トルレスだな。」
スウァム「そうだが、お前は誰だ?」
レッド「答える必要は無い。死んで貰おう。」
俺はダガーを構える。
スウァム「なるほど、アサシンだな。」
レッド「……」
スウァム「アサシンはアサシンらしく、後ろから狙って来れば良かったものを。」
レッド「行くぞ。」
走り出し、一気に間合いを詰めて斬り掛かる。
スウァム「甘いな。」
ダガーを受け止めて、そのまま力で押し返す。見た目より力があるな。
スウァム「正々堂々と正面から来た事は誉めてやろう。その事を後悔しながら死んでいけ。」
スウァムは振りかぶり斬り掛かってきた。
レッド「悪いが、時間を掛けるつもりはない。パワーホールド!」
パワーを上げる魔法を掛ける。一般的に知られている攻撃力増加の魔法より強力な魔法。俺の一番得意なやつだ。
スウァムの攻撃を回避して一気に斬り付けた。そして直ぐに動きの止まったスウァムの身体の向きを変え、後ろから首を切る。
これが返り血を浴びないコツだ。俺だって学んでいる。
いつも通りの手応えがある。ダガーのせいなのか直で感じてしまう。
ふう、と息を吐いた頃にはスウァムは地面に倒れていた。虚ろな目をし、ただ呼吸だけをしている。いや、実際は呼吸さえ出来ていないだろう。
そう考えている間にスウァムは動きを完全に止めた。
レッド「さて、冥福を祈るか。」
スウァムだったモノに手を合わせる。俺のいつもの儀式だ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます
藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました!
2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です
2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました
2024年8月中旬第三巻刊行予定です
ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。
高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。
しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。
だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。
そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。
幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。
幼い二人で来たる追い出される日に備えます。
基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています
2023/08/30
題名を以下に変更しました
「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」
書籍化が決定しました
2023/09/01
アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります
2023/09/06
アルファポリス様より、9月19日に出荷されます
呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております
2024/3/21
アルファポリス様より第二巻が発売されました
2024/4/24
コミカライズスタートしました
2024/8/12
アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です
二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】
小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」
ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。
きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。
いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ゴブリンに棍棒で頭を殴られた蛇モンスターは前世の記憶を取り戻す。すぐ死ぬのも癪なので頑張ってたら何か大変な事になったっぽい
竹井ゴールド
ファンタジー
ゴブリンに攻撃された哀れな蛇モンスターのこのオレは、ダメージのショックで蛇生辰巳だった時の前世の記憶を取り戻す。
あれ、オレ、いつ死んだんだ?
別にトラックにひかれてないんだけど?
普通に眠っただけだよな?
ってか、モンスターに転生って?
それも蛇って。
オレ、前世で何にも悪い事してないでしょ。
そもそも高校生だったんだから。
断固やり直しを要求するっ!
モンスターに転生するにしても、せめて悪魔とか魔神といった人型にしてくれよな〜。
蛇って。
あ〜あ、テンションがダダ下がりなんだけど〜。
ってか、さっきからこのゴブリン、攻撃しやがって。
オレは何もしてないだろうが。
とりあえずおまえは倒すぞ。
ってな感じで、すぐに死ぬのも癪だから頑張ったら、どんどん大変な事になっていき・・・
転生令嬢は庶民の味に飢えている
柚木原みやこ(みやこ)
ファンタジー
ある日、自分が異世界に転生した元日本人だと気付いた公爵令嬢のクリステア・エリスフィード。転生…?公爵令嬢…?魔法のある世界…?ラノベか!?!?混乱しつつも現実を受け入れた私。けれど…これには不満です!どこか物足りないゴッテゴテのフルコース!甘いだけのスイーツ!!
もう飽き飽きですわ!!庶民の味、プリーズ!
ファンタジーな異世界に転生した、前世は元OLの公爵令嬢が、周りを巻き込んで庶民の味を楽しむお話。
まったりのんびり、行き当たりばったり更新の予定です。ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる