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新たな挑戦へ

152.

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今日は朝から学園に向かう。
アイザックの実家がユミンに馬を用意してくれたので2匹で並んで走った。
ユミンは学校の馬屋に預けているそうで私は影にシルバーを入れ、別れて教室に向かった。
「ククルさん、久しぶりですね」
ソルトリア先生に声をかけられたので挨拶して席につく。
ホームルームの後に講堂で終業式が行われ、今日は終了だ。
冬期休暇が終わり直ぐに学年末の試験が始まる。
その後、入学式があり、飛び級の試験が始まるとか。
次は春頃で良さそうなので飛び級の試験申し込みの確認だけしてユミンと帰宅した。

「ハナ、ただいま」
「ただいま帰りました」
「2人共おかえりなさいませ」
バタバタと部屋で着替えてノイスのところにいく。
次に街まで行くための準備をしてくれているのでそれを手伝うのだ。
#この種、持っていくね。後はコレとコレと、、、#
言われるがままに収納に片付けていく。
次に行くときにはピアノも運ぶ予定だ。
ふとピアノを弾いてみたくなり、部屋に入った。
♫♫♫
好きだった曲、ショパンの幻想即興曲を弾きながら前世の事を考えていた。
この曲は上手く指が動かせ無くてマスターするまで何度も練習したなぁ。
この世界に来てからまさかピアノが弾けるなんて考えてなかった。
おばあちゃんに初めてオーケストラの演奏会に連れて行ってもらった時、ソロでこの曲を弾いたピアニストに憧れて沢山弾いたなぁ。
あの頃はピアニストになるのが夢だった。
病院のベットでもうすぐ死んだらみんなのところに行けると思ってたのに。
何で私だけ、、、
ポタポタ涙が流れてきて手元が見えない。
弾いてた手を止めてボーっと鍵盤を眺めていた。


ギルドでマーサスとの打ち合わせを終わらせて帰宅するとピアノの音がする。
多分、ククルの演奏だろうと一度部屋に戻って着替えてからそちらに向かった。
扉の前にハナとユミンが立っている。
「そんなところで2人揃って何してるんだ」
疑問に思い声を掛けるとピアノの音が止んだ。
「アイザック様、おかえりなさいませ。実はククル様に声を掛けようかと思ったのですがなんだか様子がおかしい様で躊躇してしまいまして」
扉の隙間から中を覗くと俯いたまま固まっている。
「あぁ、こっちは任せてくれたら大丈夫だ」
2人には仕事に戻る様言って部屋に入った。
俺が入ってきた事にも気づいて無い様で振り向く事もない。
よくよく見ると肩が震えているのでまた声も出さずに泣いているようだ。
「ククル、どうした」
頭をポンポン撫でてやるとゆっくり振り向いた。
首を振り何でも無いと言いたい様だが声は出てない。
とりあえず抱き上げてピアノを片付け、部屋に連れ帰った。

ソファに座らせて顔を覗き込むと涙は止まった様だが浮かない顔をしている。
恐らく疲れているのもあって情緒不安定なのだと思うけど気晴らしになる事をさせた方が良いのだろうか。
「んー、どうして欲しい?」
「、、、」
聞いてはみたが返事はない。
「明日でも伝書鳥を見に行くか?」
「、、、行く」
どうやら正解だったみたいだ。
ちょっと予定が立て込んでたがまあ何とかなるだろう。
「鳥籠をとりあえず持っていくから買いに行くかい」
「作る」
どうにかククルが動き出した。




「はぁ、またやってしまった」
調合室に鳥籠の材料を取りに来て、またしても自分の世界に潜り込んでしまった事を後悔する。
考えても仕方がないと言うか一度終わった人生振り返っても何にもならない。
アイザックが気を遣ってくれたのは嬉しいけどほんと気をつけないといけないな。
反省しながら材料をかき集めて鳥籠を生成した。

「アイザック、出来たよ」
「早いな」
籠を見せて確認してもらう。
「これなら大丈夫だろう。テイム出来なかったら捕まえて連れて帰ってくるか」
生成したら気持ちも落ちたのでアイザックにはお礼だけ言ってさっきの事は無かったことにした。

夕食時、明日の予定をハナとユミンに伝えたらアイザックが折角だから4人で行こうと言う事になり思わずはしゃいでしまった。
ユミンの馬は普通の子なので今回はアイザックと2人乗りする事になり、2泊の予定で出掛ける。

ユミンも久しぶりのお出かけで嬉しそうなのでさっさと片付けて準備に取り掛かる事にした。
翌朝、4人揃って出発し、先ずは第三領の出口に向かう。
門から出たら一気に馬を走らせた。
お昼前には伝書鳥が居ると言う森の入口に到着したので一旦休憩する。
ここからは歩いて鳥を探すのだ。
両掌に乗るくらいの大きさで黄色と緑色の二色が混ざっているらしく尾尻の赤いのが雌らしい。
ガル達の姿を見せると怖がって出てこないので影に入ってもらい森の中を進んだ。
アイザックが教えてくれたのだが木の枝に止まっている事が多くて姿は良く見せるが高いところなので捕まえるのが難しいらしい。
一匹従魔に出来たら仲間を呼んで貰えるかもしれないのでとりあえず探すことにした。
1時間程歩き回っていたらユミンが伝書鳥を見つけた。
少し低めの枝に止まっているので一旦近づくのをやめて4人で作戦会議をする。
コソコソ話し合っていたらいつのまにか翠が捕まえてつれてきてくれた。
#ククル、この子どうする?#
「えー、もうせっかく作戦会議してたのに」
「あーまたか」
「「えっ?」」
アイザックは相変わらずな反応、ハナとユミンはビックリしてこっちを凝視していたのだ。
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