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ふたたび王都へ

63.

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「ふぁぁ、よく寝た?あれ?」
「おはようございます。ククル様。よく眠られてましたね。もう、お昼前ですよ」
「あれ、ハナ?おはよう?」
訳がわからない。
「昨日はお疲れだったのでしょう。アイザック様が抱っこしておかえりになられてましたよ。お忘れですか?」
そうだ。門まで来てあまりの列にすっかり疲れて抱っこしてもらった様に思う。
「お腹空いた」
ふとお腹が鳴る。
「リビングへどうぞ。アイザック様は先程マーサス様のところに行かれましたよ。お一人ですがよろしいですか」
「わかった。お腹空いたから一人で我慢する」
着替えてリビングに向かう。ハナがキッチンからサンドイッチとスープを運んでくれた。
「そうだ、ハナ従魔が増えたんだ。この子翠だよ」
腕を上げて見せると興味深々だ。
呼ばれた翠は鎌首をあげて挨拶する。
「珍しいですね。グリーンスネークは初めて見ましたわ。」
ハナが頭をツンツン突いている。クネクネと避けて頭を下げた。
「あら、可愛らしい」
どうやらハナは気に入った様だ。
私はサンドイッチを頬張りながら旅の報告をハナにする。
ニコニコ話を聞いてくれた。
半分位食べ終わった時、玄関騒がしい。
「あら、アイザック様とどなたかお客様ですね。少し失礼致しますね」
ハナがリビングから出て行った。
私も耳を澄ますとどうやらマーサスとマリアント様の声らしき物が聞こえた。
"バァン"
急に扉が空いてびっくりした。
「ククル、見せてくれ」
「ククルちゃん、見せてちょうだい」
うっ、怖い。思わず半べそになる。
「こら、二人共、ククルがびっくりしてるだろう。食べてるものでも詰めたらどうしてくれる」
そう言われて思わず口の中のものを飲み込んだら喉に詰まった。
「ゔー」
「ほら、みろ。ククル、大丈夫か」
アイザックが抱っこさして背中をトントンしてくれた。
「ククル様、はい飲み物です。お飲みください」
ハナからレモネードを受け取りコクコク飲んだ。なんとか落ち着き改めてふたりを見る。
罰の悪そうな表情でこっちの様子を見ていた。
「もう、大丈夫。ありがとう。下ろして」
アイザックにお礼を言ってとりあえず下ろしてもらう。
「あのね、今ご飯たべてるの」
ちょっと腹が立ったので威圧を飛ばして睨みつけた。
二人がビクッとする。
「応接室ででも待っててくださいな」
リビングから二人を追い出してハナをつけ、食事を再開する。
「すまんな、ククル。中央に行ったらたまたまマリアント様がいて今回の事を伝えたらこの様だ。マーサスはその手首のが目当てだわ」
よいしょと椅子に座り直しサンドイッチを食べる。
いつのまにかアイザックの分もテーブルに並んでいて一緒に食べた。

「あの二人、似たもの夫婦だね。しばらく待たしといたら良いよ。ホント迷惑。」
正直、起きてからさほど時間もたってないしまだテンションが上がってないから一気に機嫌が悪くなった。
「あー、ククルそんなに怒ってたら可愛らしい顔が台無しだぞ。ほら、スープが冷めるから食べてしまいなさい」
「はーい」
ぶうたれたまんま食事を終えて仕方がないから応接室に行った。
中に入るや否や二人がガバッと頭を下げた。
「「すいませんでした」」
息もピッタリだ。
「はいはい、わかりましたらか座ってください」
良い歳した大人が子供に頭を下げてる場合じゃない。
ハナがとても良い笑顔で控えているのでどうやら彼女のお説教を食らったようだ。
「で、マーサスはこの子が見たかったのでしょ。」
腕を差し出すと鎌首を上げた翠と目があったようで感動している。
「俺も欲しい」
今にも取り上げられそうなので思わず腕を引いた。
「自分で探してください」
ガックリ項垂れた。
「マリアント様は雫草をお土産に採取してきました。」
収納から束で取り出し差し出すと両手で受け取り大変美しい笑顔でお礼を言われた。
「ククルちゃん、ありがとう。嬉しいわ。こんな貴重な素材、お土産だなんて。」
そこでガルを通してクロイス、アイザックと妖精水を渡して良いか尋ねる。
暫くすると瓶の事はとりあえず内緒でとの事なのでちょっと待ってもらい一度調合室で容器を移し替えて応接室に戻る。
小瓶を二つマリアント様に差し出した。
「あの、コレもどおぞ?」
マリアント様は不思議そうに瓶を受け取り鑑定している。
ものすごい勢いで立ち上がった。
「貴女、これ。どおしたの」
詰め寄られて怖くなりアイザックの影に隠れる。
「マリアント落ち着いて。なんだその瓶は?」
「コレが落ち着いてられる訳ないでしょ。妖精水よ。物凄く手に入りにくく、一生に一度見れるかどうかよ?貴方にわかるかしら。この素晴らし素材が」
マーサスが肩を掴まれてガタガタ揺らされている。
「わかった、わかったから落ち着いて」
遠巻きに見守った。
暫くしてようやく落ち着いたマリアント様がこちらに向き直る。
私はアイザックに抱っこしてもらったまんまだ。
「ククルちゃん、コレは流石に頂けないわ。ちゃんと買い取らせて。」
真剣な趣に首を縦に振るしか出来なかった。
「コレはね、この1瓶で300000Gの価値があるのよ。」
あんな少量でそんな金額になるとは思わなかった。
その後、マリアント様に詳しく聞くのが怖いしやめとくわと言われお金は後程、届けるからそれまで小瓶を預かっておいてと言い残して二人は帰っていった。
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