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1章

36.

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屋敷での日々は忙しかった。
まずはトーマスの復習という名の勉強と貴族としてのアレコレは久々で辛い時間だった。夜会にはリリアとマイクも参加するとの事でマナーのお勉強の時は時々一緒になった。二人がいるとトーマスも優しく教えてくれるから楽ちんなんだけど私だけだと厳しのなんの。お陰ですっかり感覚が戻った。
今日は拠点に行く予定。アルトから近況報告だとか。試しに黒白で森を抜けてみた。
森は静かでとても走りやすい。ジンとウルも並走する。ガイヤはジンに乗って楽しそうだ。
あっと言う間に到着した。
拠点の中に入り様子を伺うとリビングに人の気配がする。其方に向かった。
「ただいま」
「ミーナ、おかえり。丁度ロトも帰ってきたところだ。早速話をしようか」
アルトに促され席に着いた。
話の内容はタントスについてだった。
彼の実力については問題はないらしい。ただ、私の事を完全に見下しているとか。現在も拠点に居ない事について文句を言っているとか。で、二人は見た目だけの判断で人を見下す態度が気に入らないとの事。
「お前の実力を示すのもありかと思ったがわざわざ教えてまでもな、どうせ何処かに不満を抱えたままだと良くない。アルトと相談してアイツはパーティには入れないことにした」
ロトが説明してくれた。年明けにタントスには話をして諦めて貰うらしい。なんとなく納得しない様な気がするがその辺は大人な二人に任す事にした。
「わかった。私は二人の決断に任すよ。叔父さんに報告行く時は教えてね」
今日はこのままこっちで過ごす予定だと告げて食事の準備を進めた。
マリアは部屋にいたらしく、夕食時にリビングに現れた。
「あら、ミーナちゃんのご飯も久しぶりね」
四人でテーブルを囲み楽しく食事をする。新年にはマリアの実家にロトと二人で行ってそのままマリアはこっちに戻らないとか。出産間際だと私達が長期で留守になってたりしたら不安だとか。早目に向こうに帰る事にしたとの事。ロトはギルドに報告へ行く頃には戻ってくると言っていた。アルトも新年は実家にいるそうで拠点は暫く無人となる。
たわいも無く話ていたがお決まりの如く眠たくなったので部屋に戻って就寝した。
翌朝、朝食を食べつつマリアに挨拶する。いつでも遊びにおいでとの事なのでまたロトに連れて行って貰う事にした。
アルトと夜会の事を少し話して私は屋敷に戻った。

新年の当主の役目。夜が明ける前にお清めの酒を屋敷の前で大地に振る舞う。今年一年の安泰を願って行うのが習わしとの事。
玄関前に叔父、トーマス、ヤックル、使用人達が揃う。私は前に出て大地に酒を振る舞う。
「今年も一年どうぞよろしくお願いします」
皆の方を向き挨拶をする
「こちらこそアズベリーに良き一年をお祝い申し上げます」
叔父が代表して返してくれた
その後は皆んなでホールに移動して祝いの宴を開いた。ここからは使用人も含めて皆でワイワイと団欒する。男共はこれからの事を酒の肴に楽しそうに呑んでいる。私はリリア、マイクと一緒に食事を楽しみながら騒いでいた。
宴はそのまま翌日の朝方まで続くのだがお子様な私には最後まで付き合うのは無理だった。気が付いたら子供3人で団子になって眠っていたらしくゴンドラが部屋まで連れて行ってくれた様だ。
翌日は屋敷もお休み。一応最低限の使用人はいてるが今日は特に仕事もしなくて良いと伝えているのでみんなゆっくりしてる。私も自室で従魔達とまったり戯れた。
そしてとうとう夜会の日がやってきた。
私は朝から使用人達にあれやこれやと準備される。久しぶりに髪も目も本来の色に戻しての出陣だ。アルトびっくりするだろうな。あっ、叔父さん以外は知らないのか。皆んなびっくりするかな。
昼に軽食がてら休憩を挟んで夕方まで準備は続いた。飽き飽きしてきてやっとの事で終了
「お疲れ様でございます」
姿見の前に立たされて鏡を覗き込むと光沢のある紺色のドレスにシルバーで刺繍の施された品の良い、子供らしさもあるデザインのドレス。髪はハーフアップで暖色系の花の髪飾り。自分で言うのもなんだけどどこぞの良いところのお嬢様だ。
「ミーナ様、大変可愛らしく品のあるお姿ですよ。公爵としても申し分の無いですわ」
準備をしてくれた使用人達も満足そうだ。
「ミーナ様、アルト様がお見えです」
部屋の前から声がする。自室を後にしてエントランス向かった。
アルトの姿が見える。此方に気が付いて目を見開いた。
「こんばんは。今日はよろしくお願いします」
「こんばんは。此方こそ。今日は随分と可愛らしくなって。両親が喜びそうだな」
やった。びっくりしてくれたみたいで嬉しくなった。
「では行きましょうか。アズベリー公爵様」
私は一瞬ビクッとしながらアルトに連れられ玄関を出る
「「「「いってらっしゃいませ」」」」
使用人達に見送られながら馬車に乗り込んだ。アルトと向かい合わせに座ると御者に声を掛けて動きだした。
「一瞬誰かわからなかったよ。その姿が本当の色かい」
アルトに聞かれて頷いた。
「私も、正装のアルトさん初めてでちょっとびっくりした。ちゃんと貴族子息に見えるんだもん」
アルトの方はシルバーをベースに紺色を差しに使用したデザインで私のエスコートとの事で色合いが対になっている。
「まぁ、一応大人ではあるからな。どうしてもの時位はちゃんとしてるぞ。しかし普段のミーナとは全く別人だな。子供と言ってもやっぱり女性だな。大きな夜会も公爵としては初めてだろ。よく化けていると思うぞ」
最後の方は何となく聞きづてならないがまぁ、良しとしよう。
「特に緊張とかはしてないよ。ただ公爵を演じるのか面倒なだけ。子供の間くらいは自由にしてたいしさ」
私の本音にアルトが苦笑いした。

城に到着し、会場に入る。
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