上 下
29 / 61
1章

29.

しおりを挟む
今、船で移動している。魔物が襲ってくるポイントがあるらしい。恐らく住処が近くにあるのだろう。
二隻で移動しているが私達の乗っている方に組合長がいる。
「もうすぐ、ポイントに到着する」
アルトと私は戦闘準備に入った。
急に波が荒くなったと思ったら魔物が現れた。大型のクラーゲンだ。こいつは表面の弾力性が強くてなかなか剣が刺さらない。納得だ。
「ミーナ、とりあえず魔法で攻撃してくれ。」
言われた通り魔法を放つ。
「アイスショットLv7」
クラーゲンの頭が一気に凍った。
そこにアルトが剣で攻撃する。私も、双刀剣をもち、攻撃に加担する。
クラーゲンの頭が割れた。
船乗り達は呆気なく終わった戦いを呆然と眺めていた。
突然、船乗り達が騒ぐ。
「また、きたぞ」
どうやらクラーゲンは一体では無かったようだ。立て続けに海から三体姿を現せる。
私とアルトは一体づつ順番に仕留めていく。
三体目の討伐が終了した。
はぁ、やっと終わった。流石に4体は体力的にきつい。
討伐したクラーゲンは街に持ち帰って食用に解体するみたい。
私達は港へと戻った。
組合長の執務室に招かれる。今回の討伐に対する報酬の件だ。
「正直、4体も居るとは思わなかった。依頼は1体のつもりで出していたから上乗せしたいと思う。ただ、4倍となると、直ぐに支払うというが財政的に正直厳しい。どうしたものか」
予測以上の事で組合長が嘆いている。私はアルトにこっそり定期便の運用を報酬にしても良いか聞いてみた。好きにしたら良いとの事なので早速組合長に交渉する。
「報酬の件で一つ提案と言うかお願いがあるのですが」
組合長ラースにオーロラへの定期便について話をする。
「確かに、貴女の言う様にこちらにも利益のある話だとは思うがあそこの港は領主が変わったところで許可がとれるかどうか。ナタリアの領主にも一度お伺いを立ててみないと話を進める訳にいかないし」
そっか、私自身の事を伝えて無かった。改めて、アズベリーの領主である事、アルトがナタリア領主の身内であり、許可はこちらで取ることなど説明した。
ラースはびっくりしていたがそれならと討伐の報酬替わりにこの話を受けてくれるらしい。
ナタリア領主の許可が取れ次第、再度こちらに訪れるのでその時に運用方法を取り決めする段取りで話がついた。
私達は依頼の完了報告をしにギルドに寄って宿に帰る事にした。
明日にはこの街を出発して、アルトのお兄様がいるクルナを目指すことになった。
翌日、屋台で昼食と魚の干物を購入し、黒白に乗って街を出発。
アルトの後をついて行く。途中、休憩を挟み今日の野営地に到着した。
「今日はここの野営地までにしよう」
ナタリア領は整備が行き届いてるので屋根のあるところで休む事ができる。
無料で幾つが使えるロッジがあるのでその一つに入った。
「今日は時間も少し早いので夕食作るね」
ちょっと気分転換に料理でもしようとアルトに声を掛け、台所へと向かった。
夕食に肉の塩煮込みを作る。
アルトは薪を拾いに出て行った。どうやらジンがついていくみたいだ。他の子達は台所の近くで寛いでいる。
塩煮込みを作りながら、収納に入れておく作り置きの料理も仕込んだ。
いつの間にかアルトも帰ってきて暖炉に火を入れてくれている。ナタリアは比較的暖かいのだが夜になると少し冷える。
私は出来上がった料理をテーブルに並べた。
席に着いて食べる頃には日も暮れてほかのロッジにも人の気配がする。
食後、リビングで寛いでいると外で物音がする。アルトとカーテンを少し空けて覗いてみた。
冒険者同士の喧嘩の様だ。関わるのも面倒なのでそのままそっとカーテンを閉める。何処にでもいるものだ。馬鹿な奴は。そうこうしているうちに眠たくなったので就寝した。
翌朝、朝食の用意をしているとドアをノックする音がした。
「ほっとこう。面倒事はごめんだ」
私もそう思う。しばらくすると音も止んだので気にせず朝食にした。
さて、そろそろ出発だ。
ロッジ内に忘れ物もない。今日中にはクルナに着くらしいので気合いを入れて出発した。
順調に進んではいるもののロッジを出た時から誰かにつけられている。当然アルトも気付いている様で馬を寄せてきた。
「ミーナ、アイツらどうする、ずっと後を付けてきているが撒くか」
「どうする?相手の目的がわからないし、付かず離れず街の側まで連れて行ってから処理する?」
狙いが分からないから手の出しようが無い。仕方がないのでそのまま街の側まで行く事にした。
街が見えて来たので後を揺さぶる。すると引っかかってきた。
「なにか用か」
アルトが牽制しながら問いかけると1人が前に出てきた
「お前らを王都に近づけるなととある方から頼まれた。ここで一生止まって貰おう」
どうやら、雇われの始末屋のようだ。
アルトと2人呆れ顔で見合わせる。
生捕にして、騎士団に突き出すのが良さそうだ。
相手は5人、一気に蹴りを付けてやった。全く骨の無い相手だ。そのままロープで拘束し、街の入口まで連れて行き、騎士団に渡した。アルトが事情を説明すると快く引き受けてくれた。
私達はそのまま街にはいり、お兄様の屋敷に向かう。
到着すると丁寧に出迎えてくれた。私は客室にアルトは自分の部屋があるようでそちらに案内して貰った。お兄様が留守にしている様で夕食時には帰宅するとの事。それまではゆっくりする事になった。メイドがお茶とお菓子を用意してくれたので暫く部屋で寛いで待っているとどうやら寝てしまっていたようで夕食の時間にメイドに起こされた。
私は準備をし、リビングに向かう。
部屋に入るとアルトとアルトによく似た男性が話をしていたが此方に気が付いて振り向いた。
「長旅お疲れ様です。私、ナタリア領、次期領主のスタード・ナタリアと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。はじめまして、アズベリー領主、ミーナ・リュー・アズベリーです。ミーナとお呼び下さい。今回は滞在中お世話になります。」
お兄様、まさかの領主でちょっとびっくりした様で一瞬固まった。しかし、すぐに復活。
「私の事もスタードとお呼び下さい。」
なかなか、落ち着いた対応をしてくださるので冒険者として普段は振舞っている旨伝えて気軽に接して欲しいとお願いした。
了解してもらえた様で笑顔を返される。とりあえず、夕食をいただいた。夕食後、サロンに移動してお茶をいただきながら話をする事になった。
私は兄弟が会話しているのを眺めている。話をするのが久しぶりみたいでお酒を交わしながらの構図が絵になる2人だ。
まずはスタードに説明する事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

転生少女は欲深い

白波ハクア
ファンタジー
 南條鏡は死んだ。母親には捨てられ、父親からは虐待を受け、誰の助けも受けられずに呆気なく死んだ。  ──欲しかった。幸せな家庭、元気な体、お金、食料、力、何もかもが欲しかった。  鏡は死ぬ直前にそれを望み、脳内に謎の声が響いた。 【異界渡りを開始します】  何の因果か二度目の人生を手に入れた鏡は、意外とすぐに順応してしまう。  次こそは己の幸せを掴むため、己のスキルを駆使して剣と魔法の異世界を放浪する。そんな少女の物語。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

処理中です...