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1章

25.

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今日は孤児院に行く日。
トーマスとアルトそして叔父の4人で向かう。
教会に隣接する建物に到着。シスターが出迎えてくれた。
雑談室に通されて先ずはマイクの事から話をする。孤児院の責任者で神官の男性にこちらの考えを伝える。子供の幸せを願う方で大変喜んで頂いた。次に本人を呼んでもらう。
緊張した趣きで部屋に入ってきた。
「久しぶりね、マイク」
本人、覚えてくれていた様でにっこり挨拶してくれる。
叔父がトーマスの養子にならないか尋ねてみた。
「本当に僕の家族になってくれるの?」
嬉しそうにトーマスに尋ねている。
双方問題無さそうなのでこのまま手続きをし、今日は一緒に屋敷に帰ることになった。明日出発でこれからマースで暮らすことになるのを伝えるとやっぱり嬉しい様で少しはしゃいでる。トーマスならしっかりと教育してくれるだろうから将来が楽しみだ。
マイクは自分の荷物を片付ける為、一旦部屋から出て行った。
次はアリスの話だ。こちらの事は神官の判断に任せる事にして、書類等が必要な場合は領主館のセスタスに申し出てもらう様伝える。
最後にリリアの件だ。私はここまで黙って話の成り行きを伺っていたのだがリリアの事については口を挟んだ。
「奨学生制度を利用させてあげて欲しいの。ただ、そのためには保護か貢献が必要でしたよね。叔父さん、誰か紹介頂く事は出来ませんか?」
叔父が少し悩んでる。
「ヤックルにお願いしてみるか」
その人選は賛成だ。多分引き受けてくれるだろうとの事なので早速リリアを呼んでもらった。
「こんにちわ。元気にしてた?」
何故呼ばれたかも分からずに遠慮しながらリリアが入ってきたので声を掛けた。リリアが椅子に座ったところで叔父が説明する。
「本当に私なんかが奨学生制度を利用してもいいのですか」
リリアは真剣に此方に尋ねる。大丈夫だよと念押しすると、目を潤ませながらお礼を言った。詳しい事はまた、神官より説明を受けてもらう事になった。
「本当に、ありがとうございます。頑張って勉強します」
「よかったねリリア。これで一緒に学園に行けるね。その時はよろしくね」
「ミーナ、今日は会いに来てくれてありがとう。また、入学の時はよろしくね」
私達は笑顔で別れた。
トーマスはマイクの準備が出来るまで待って一緒に帰ってくるとの事で、私達三人は先に屋敷に戻った。叔父はヤックルに先程の話をしてくるとの事でヤックルの部屋に行った。私は今日、マイクの歓迎会とトーマス、ヤックルのお祝い、収穫祭のお疲れ様会をまとめてするので厨房を覗きに行く事にした。アルトは部屋にもどるみたい。
厨房で料理人達とあーだこーだ騒いでいたらセスタスが呼びにきた。叔父が応接室に来て欲しいそうだ。
ノックして入室する。ヤックルもそこにいた。
「ヤックルにリリアの事をお願いしたら、自分の息子達も大きくなって奥さんと二人では寂しいからリリアを養女に迎えたいと言ってくれてな。どうだろうか」
私の意見が聞きたかった様だ。
「本人さえ納得するならそれが良いと思いますよ。何なら今から会いに行きますか」
ヤックルに聞いてみたら是非にとの事で一緒に孤児院に行った
リリアはさっき別れたばかりだったので何事かと不思議そうな顔をするが話を聞いてびっくりして泣き出した。
結局、養女の話を受ける様でヤックルがオーロラに戻る時に一緒に出発するとの事。今日の夕食は屋敷に来てくれる事になった。あの団長さんならきっと歳の離れた妹を可愛がってくれるだろう。
今から入学までに貴族の嗜みをマスターするのも大変だと思うので平民枠での入学を進めておく。本人もその方が良いとの事で追々、貴族令嬢としての教育は受けてもらう事になった。
夕食時、みんなが揃う。叔父の音頭で食事が始まった。マイクもリリアも新しく家族が出来て嬉しそうだ。ちょっと羨ましいけどよかったと思う。私は自分らしくやっていこうと思った。
子供達は程々で寝る事にした。
今日は3人で客室を利用する。
ふかふかの大きなベッドにマイクもリリアも大はしゃぎ。しばらく三人で遊んでいたが、気がついたらみんな寝落ちていた。
翌日、トーマス達と【紫】メンバー派遣の騎士でマースに向かって旅立った。
リリアが見送りに来てくれたので挨拶し、アルトの馬に乗せて貰う。
叔父は数日後王都に向けて出発するとの事。また、向こうで報告する事になった。
ゆっくりとした行程でマースに到着。
門で叔父から預かった書状を見せて街に入る。そのまま領主館に向かった。
屋敷には連絡を入れて置いたので特に問題なく到着する。とりあえず騎士やアルト達は引っ越しの荷物を運んでもらう事にし、私とトーマスは執務室へと向かった。
現在の使用人の状況はメイドや庭師といった下働きはいるのだが執事と兵士が殆ど前領主に加担していて捕まった為、不在だ。
「ミーナ様、とりあえず執事はしっかり人選をしたいので暫く不在で頑張ろうかと思います。街の騎士も数名捕まった様で此方まで手を回して貰うには気が引けますが如何いたしましょうか」
何が起こるかわからない以上身の安全は確保してあげたい。
「今回、派遣してもらった騎士をマース滞在に異動しましょうか。ミック団長の弟イリスが来ているのですが、彼を騎士団長に出来ないかしら」
イリスを呼んで話をしてみた。
どうやらミック団長は此方に滞在になる事も考えて独身の身軽な者を選りすぐってくれていた様で問題ないとの事。
「私で務まるか不安も有りますがどうぞよろしくお願いします」
話を受けてくれた。不足の人員については街で募集を募り補充する事になり、なんとかなりそうだ。
「執事候補は叔父にも相談してみます」
トーマスに伝え、今の街の状況や今後の事について三人で話をしているとアルトが現れた。
「一応、荷物は全て指定の場所に運び終わりました。他のメンバーには今、休憩してもらってます」
作業が終了した様で報告に来てくれた。そうだ、アルトに執事の件聞いてみよう
「アルトさん、実は今、この屋敷の執事がいないの。誰か信用できる方で紹介してもらえそうな人知らないかな」
アルトの実家もかなりの規模だ。1人くらい居ないかな。
「俺の同期で執事課程を卒業して家で見習いをしている奴が何人か居てるはずだ。確かマース出身の者もいた様に思う。親父に聞いてみないと分からないが皆が家で執事に慣れる程、席がある訳でもないし。ミーナが親父に頼んだらホイホイ差し出してくれるんじゃないか。帰ったら一度聞いてみたらどうだ」
この話はかなり良さそうだ。トーマスにアルトの実家の事を教えて意見を聞く。是非にとの事なので王都に帰ったら手配する事になった。
それから屋敷の中を見学した。
一応、私の部屋をとトーマスが聞かないので一番小さい部屋にした。王都からも近いので泊まりでくる事も少ないだろうし、何より気を使わず使って欲しい。
屋敷内をウロウロしていると同じ様にウロウロしているマイクと会った。
「マイク、新しい家はどぉ?気にいった?」
「こんなに広い家に住めるなんて夢みたい」
気に入ってくれてる様で良かった。
「明日には私達は王都に帰るからこれから頑張るんだよ」
この子は私の事は詳しく知らない。何処話す事になるだろうけど今はまだ必要ないと思う。
「わかった。ミーナもまた、遊びに来てね」
可愛い事を言ってくれる。嬉しい限りだ。
翌日、トーマスと挨拶を済まし、イリスに今後の事をお願いし、王都へと帰る事にした。
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