黄昏一番星

更科二八

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2章 終末を呼ぶ狼

271話 ガグの逢瀬

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どんどん!
宿屋の部屋にデカいノックの音が響く。
扉の鍵は開いたままだが扉まで行き開けてやる。

「おかえり」
「ああ、ただいま!」

娼館に行き帰ってきたガグはどこか浮ついた表情をしている。
結果はよかったようだな。
部屋に入るとガグはそのままベッドに倒れ込んだ。

「満たされた」
「ははは!良かったな!」

このまま下の酒場で酒でも飲みながら話したいがまだ人の多い時間帯。
ガグは夕方から2時間カイルを買って帰ってきた。
カイルのいる鳩山という娼館はかなり高級な店で、俺とタイガは最初は一晩1万と少しで楽しめたが、それは初回料金で本来は一晩2万以上するらしい。
俺の配達屋の時の給料だと3ヶ月分ぐらいだ。
それは最低賃金以下の話だが、一般的な給料でも1月分以上はある。
いくらガグがランクの高い傭兵でもそんなに簡単に出せる金額でないので一晩ではなく2時間だけだ。
それでも7千ロングもするらしい。高い!

「やっぱり時々会いに行くべきだな、稼がなくては!」

今回ガグは4ヶ月ぶりにカイルに会ったらしい。
春先から夏前は本当に稼げないそうなので仕方がないようだ。
それならなんでオークションで旅人の輪を買っていたのかというとカイルに渡したかったのだそうだ。
ちんこにはめる用の旅人の輪もガグには全くサイズ合わないがカイルならちょうど良さそうだ。
それ以外にも指用にも買っていたようで、しかも新品のものだという。

「プレゼントは渡せたか?」
「ああ、喜んでくれてたぞ。ちょうど今指にはめてるやつがキツくなってきて替えたかったらしくてな。俺が送ったやつはちょうどよかった。どっちも」

カイルの年は19歳で獣人的には1番の成長期だからまだまだ大きくなるだろう。

「身請けしたい事は話した?」
「それも話した。店次第だけど俺なら良いと言ってくれた。でも既に店に交渉してる奴もいるんだと。店はカイルを手放したくないらしいけどな」
「そっかー嫌われてないのなら良かったな」
「ああ、もうめちゃくちゃ嬉しすぎるな。でも急いで金稼がないとな」
「身請けってどれぐらい必要なんだ?」
「噂ではあの店の最低が200万ぐらい。カイルは人気だからもっとだろうな」
「たっけー!ガグいまどのぐらい持ってんだ?」
「15万・・・」
「よくそれで身請けしたいと思えたな・・」
「しょうがないだろ!惚れたんだ!
それに収納空間スキル持ちの調達部門の奴と組めれば無理では無いと思う」

収納空間スキルって前にバートから聞いたな。
馬鹿でかい魚の魔物を解体場に持ち込んだ奴が持ってたスキルだったか。
確かにガグは強いから高ランクの魔物を借りまくって素材売りまくれれば可能性もあるわけだ。

「その収納空間スキル持ってるやつの当てがないんだな・・・」
「俺と組んでくれるやつも殆どいない・・・」
「悲しい事いうなよー、俺はガグとはこの先も組みたいと思うぞ。俺が役に立つかは別として」
「エドガーは優しいな。大丈夫エドガーはもう随分とよくなってきてるし役に立つぞ。
チーム組めるなら願ってもないことだ。
でもやっぱり荷物運べるやつは欲しいな」
「収納空間はなくてもタイガが帰ってくればなー。魔法で色々運べる手段もあるだろうし」
「実のところは少し当てにしてるところはあるな」
「タイガは金稼ぐの上手いからな期待しとこうぜ」
「ははは!そうだな!」

タイガはなんなら既に莫大な金を受け取る権利をいくつか持っている。
それにあやかる気はないが、一緒に仕事をしているだけでも俺たちにも稼ぐチャンスは巡ってきそうだ。
早く帰れと魂にあるタイガとの眷属の繋がりに呼びかける。
本当に待ち遠しい。
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