黄昏一番星

更科二八

文字の大きさ
上 下
254 / 292
1章 呪いの女

253話 追手

しおりを挟む
聖女一行から離れる最中、広げた探知の中に違和感を感じる。
気配を隠して森へ入っているのに真っ直ぐに凄い勢いでこちらに向かってくる。
それも空から。
どう考えても補足されている動きだが、俺たちは更に身を隠すために透明化と消音の魔法を使い、追ってから逃げるように動く。
しかしそれでも意味はなく数分後には空から来たものが俺たちの前へと舞い降りた。
大きな剣の上に立ち空を駆けてきた者の正体は戦士兵団の団長サファイアだ。

「姿を現せ、隠れても無駄だ!」

だろうな、しっかりと俺たちの方向をむいてしゃべっている。
隠密体制を解いてサファイアに姿を見せる。

「なぜ分かる?」
「聖女様のお力で貴様の魔力を見えるようにして頂いたのだ。どこにいても場所を感じとれる!」

凄いだろうと言わんばかりのドヤ顔で胸を張っている。
サファイアにそんな事を出来るのだから俺は聖女にも場所を補足されてしまっている訳か。
俺は常に氣を纏っていて魔力が自然に漏れ出ない様にしているので普通ならば魔力感知にはかからないはずだ。
氣だって印象を操作していてほとんど気配を感じ取れないようにしている。
それなのにサファイアには俺の場所がしっかりと見えていたようだ。
面倒くさいなもう。

「団長様が離れてもいいのか?今日のゴーレムたちはこれまでよりも一味違うぞ」
「ピピス1人で問題ない」
「言ってくれるぜ・・・」

サファイアは俺たちへ向けた殺気を一層濃くして戦闘体制をとる。

「トレイ、あの浮いてる剣はスキルか?」
「そうっす、操剣ってスキルで自在に操れるらしいっす。5本を同時に操ってるのを見たことあるっす」
「トレイ!貴様も裏切り者で間違いないな」
「うっ!」

サファイアがトレイに対してピンポイントで殺気を送っている。
それでトレイが威圧されてしまった。
サファイアは少し氣の心得もあるようで薄らと氣を纏っているし身体強化もしている。

「仲間を威圧しないでもらいたいな。
裏切りと言えばアンタの方がよっぽどだ。
何故仲間を殺した」
「あの者達は愚かにも聖女様に歯向かう者の手に落ち、聖女様に立ちはだかったのだ。生きている価値などあるものか、聖女様の慈愛を受けられただけ感謝すべきだろう」

俺の背で再びトレイの身が震え出してしまった。
団長ならは、第一に優先すべきは兵士の命であってほしいが、サファイアの心は完全に聖女一色になってしまっている。

「だが元はと言えば貴様たちがあの者達を捕らえなければ裁くことはなかったのだ。
同胞を奪った罰を死を持って償うといい」

俺の行動が愚かだったのは間違いない。
兵士ならば同胞は助けて当然と思い込み時間稼ぎの盾に使ったのだ。
多少手酷く助け出されようと聖女がいれば傷は癒えて死ぬ事は無いと思っていた。
だが聖女は邪魔だと判断したら即切り捨てたのだ。
俺の見込みが完全に甘かった。
聖女は最早人に構う気などなく王都へ辿り着く事に手段は選ばないのだろう。

「トレイ、何度も言うがあれば俺の責任だ。トレイは止めてくれていた」
「いいや、俺も結局あれでいいと思ってたっす。だから俺も同罪っす。
でも、だから俺はあの人たちの為にも必ず任務はやり遂げるっす」
「そうだな、まずはコイツをなんとかしよう」

俺は誰にも負けない強い意志を込めた強い氣を体に素早く体に満たす。
背中のトレイにも同様に満たしてやる。

「トレイすまないが回避は自分で頼むぞ、死んでもなんとかしてやる」
「わかったっす!いざという時は頼むっすよ」

トレイを背から降ろすと、こちらもサファイアに対して身構える。

「覚悟は決まったようだな。ならば死ぬがいい」

完全に悪役のセリフを吐いたサファイアと俺たちのと戦いが始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~

白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。 日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。 ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。 目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ! 大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ! 箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。 【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】

処理中です...