黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

183話 実験準備

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ギルドの制作部門の工房、その隅にある作業台を借りた俺はいくつかの材料を並べて考えていた。

金策として作るものは考えてある。
それに使う魔法陣の構築も朧げに考えてある。
今考えているのはそれではない、聖女対策の一つとして実験的に作ろうと思っている魔道具だ。

俺は聖女の魂を歪ませる呪いに対処しなければならない。
現状俺が知る呪いを防ぐ魔法はあるが、実は聖女どころか娼館の女王にも通用していない。
ダメだろうとは思っていたがダメ元で試しはしていたのだ。

何故ダメなのかというと、呪いの効果は多岐に渡るが、呪いを防ぐ魔法は限定的なものしか防げない。
応用が効かないのだ。
一応魔法の理論は参考になるが、聖女の呪いは通常の呪いを遥かに凌ぐの一般的な理論ではダメだろう。
あの魂を歪められる理屈が分からなければ魔法での対処はできない。

だから必然的に氣で対処する事になる。
体全体を聖女の呪いを弾く意識を持たせた氣を纏う。
つまり気合だ。
氣は魔力を通さない。
そんな性質があるが簡単な話ではない。
氣の質次第ではあっさりと剥がされてしまう。
防げるだけの質があったとしても、氣に持たせた意識が揺らぐと一気に質が落ちる。
聖女の魅了を受ける中で維持するのは至難の業だ。

そこは女王で訓練するとして、一応体に纏う氣以上に更に保険として魂にも氣を纏えないか試したい。
でもそれをするには懸念があった。

魂は外からのマナを取り込み魔力や氣を生み出している。
生み出された魔力は体の中で流れを作り、魂はそれに絡みつくように存在している。
そんな魂を覆ってしまうと、魔力の流れから切り離されてしまうだろう。

まだ想像でしかないが、魔力の流れと魂が切り離されると魔力の流れは止まり崩壊を始める。
その状態が続くと死ぬ。
エドガーを蘇生した経験から魂と魔力の関係とはしっかり絡み合った正常な状態でなければ生きられない事を知っている。

でもそれは最悪な可能性でありやってみれば案外何ともなく魂にも氣を纏うことは出来るかもしれない。
最悪な可能性がある以上これまで試してはいなかったのだが、一応後学の為に試しておきたい。

前置きが長くなってしまったが、今考えているこれから作ろうとしているものは、俺が最悪な状態に陥っても復帰できる手段だ。
俺の魔力の流れと魂の位置をエドガーと同期させる魔道具を作る。
俺とエドガーは魔力の流れも魂の位置も同じなのでもし俺が死にかけてもエドガーを元にして復活できるだろう。

俺がエドガーを蘇生させた時と逆の状態だ。
10割上手くいくという保証はないが、理屈では多分大丈夫だろう。
徹底的に丁寧に作ろう。

エドガーの蘇生の時にやっていた事を魔法で再現するだけだ。
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