黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

139話 北東の森へ

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北東の森はギルダナの町の北門から歩いて1時間半程の場所だという。
俺たちは軽い運動も兼ねて走って向かうことにした。

エドガーの走るペースは速い。
なんか俺に張り合ってる感じもするが、俺は足の遅さには自信がある。
エドガーが本気で走れば、氣の身体強化無しなら余裕で負けそうだ。
伊達に町中を駆け回っていたわけではないようだ。

しばらく北方向への街道沿いを進み、広がる青々とした麦畑を抜けた頃に街道をそれて北東に進むとすぐに森が見える。
そこが目的地の北東の森だ。
30分かからず着いてしまった。
2人とも体力的にも何も問題なく息も上がっていない。

「エドガー走るの早いなー」
「へへへ、自信あるんだ。もう少し早くてもまだ何時間か走ってられるぜ!」
「エドガーと旅をするなら馬車より走りになりそうだな」

馬車移動というのは意外と速度は遅い。
状況で色々変わってくるが、一般的な駅馬車だと人の駆け足程度の速さだ。
馬を休ませる時間も必要になってくるので、人間が頑張って走り続けたほうが長距離を移動出来る。
まあ疲れるので時間を気にしなければやはり馬車のほうがいいが。

「俺馬車乗ったことないから乗ってみてえ」
「そのうち遠出の仕事も受けるだろうしそん時だな。さて、仕事するか」
「おう!」

エドガーの気合の入った声と共に森に少し入り込む。
俺は広く気配を探っているが小さな生き物の気配以外は近くにはいない。

もっと森の奥側には大きい気配はちらほらといる。
求めているジャイアントフォレストラットはもう少し外周を進むといそうだ。

「このまま森の外が見える位置を維持してもう少し進もう。ジャイアントフォレストラットがいそうだ」
「気配ってやつか?どうやったら分かるんだ?」
「意識を広く薄く広げて中にいる生き物の印象を探るんだ。
氣の練習で目を閉じて俺の場所を探しただろ。あれの応用」
「なるほど?」

エドガーは目を閉じて難しい表情をすると
あらぬ方向にちらちらと意識が飛んでいく。

「わかんねえや」
「ははは!まだエドガーには早かったな。
最初だとどうしても意識が1点に向いてしまう。目は開けてていいから正面から遠くに意識を向けて氣で感じる印象を点から面にしていけるように練習するんだよ。その面が広くなったら今度は空間、そしてその空間をどんどん広げられるように訓練する感じだな。
とりあえず今はひたすら目に着いたものの印象を氣感じ取ってみろ。それが自然とできるようになるまでがんばれ」
「わかった、やってみるぜ」
「足元気をつけろよ」

言ってる側から木の根に躓いていた。
「くそー歩きにくいし考えることが多い!」
「これも慣れだ、頑張れ」

あえて森の外周ではなく森の内側を歩いているのはエドガーに経験させるためだ。
無造作に生える木々や草を避けながら通れそうな道を選び、木の根や転がる石に気をつけて枯れ葉や苔で滑らないように体勢を保つ。
街の整った道を歩くのと違い森歩きはかなり気を使う。
ここは平坦で見通しもよいからまだ全然楽だが、森が深くなり見通しが悪かったり、山で傾斜がついたりするともっと難しくなる。
こう言うのは経験して慣れていかないといけない。

エドガーは一旦氣の練習よりも歩くことに専念したようだ。
俺たちはゆっくりと森を歩いてジャイアントフォレストラットの気配へと向かった。
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