黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

129話 宿屋ふたたび

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俺とエドガーはトレイとモーガンの2人に見送られながら兵舎を後にした。
最後の別れは簡単なもので「飯誘う」とだけだった。
教皇の件さっさと片付いてくれ。

兵舎に来た時は馬車で通った事を思い出しながら元々泊まっていた宿を今度は徒歩で目指す。

「宿じゃなくて家が借りられたらなー金はそこそこあるのに」
「ギルドの仕事頑張って受けなきゃな。コボルト以外の解体もそろそろやりたいぜ」
「もう街も出ていいし傭兵の仕事も受けてみてもいいかもな」
「俺はまだ剣に自信ないぞ」
「エドガーの実力的にはまだ小さい魔物1、2匹がせいぜいだろうな。でもそれでもやらなきゃ自信はつかない。軽めな物をこつこつやってこうぜ」
「そうだな!」

実戦経験ってのはやはりどんな練習よりも得る物が多い
俺だって山の中に体一つで放り出され狩をさせられた経験があっての今があるのだ。
実戦経験にはならないが、下手な剣覚える前にエドガーを山に放り出してもいいかもな。それなりに体力と筋力があるし必死に逃げ回れば3日ぐらいは死なないだろう。
俺も見とくし。
うん、いいかもしれない。

時折エドガーと会話をしつつ、エドガー強化計画を練ったりしながらしばらく歩き目指していたグーグさんの宿兼酒場にたどり着いた。
久々である。やっぱり扉がでかい。
先代の嫁がオーク族だという事でこの店の扉やベッドは作りが大きい。
体の大きな俺やエドガーには助かる仕様だ。
建物の中に入ると受付にいたグーグさんと目が合う。

「久しぶりだな、また部屋を借りたいのだがいいか?」
「エドガーとタイガさんじゃねえか!無事だったか!
なんか殺人馬車に追われてるとか噂で聞いたが、もう大丈夫なのか?」

グーグさんには宿から兵舎に移る際に兵士団に匿われるとは言ってあったが詳細は伝えていない。
なにやら妙な話になって耳に入っているようだ。

「この前は迷惑をかけたな。エドガーもこの通り犬にはなってるが元通りだし、色々片付いてもう匿われる必要もなくなったんだ」
「そうか、よかったなエドガー。仕事辞めたって聞いたからまだ動けないままなのかと思ってたぜ」
「グーグさん心配かけてすまねえな。最近はタイガと一緒にギルドの解体場で仕事してんだぜ」
「そうかい、路頭に迷ってないみたいで安心したぞ。そんじゃあ2人で泊まるってことでいいだな」
「ああ、またしばらく頼む」
「なに、金払ってくれれば何泊でもいいさ。
ただ、今は2人部屋しか空いてないけどな、それでよければだが」
「俺はいいがエドガーは?」
「大丈夫!」

これまでも隣同士のベッドで寝起きしてたのだから今更である。
俺とエドガーはとりあえず2泊分の金をそれぞれ出し合いグーグさんに渡して部屋の鍵を受け取った。

「おめーら体デカいから少し窮屈かもしれないけど勘弁してくれ」
「2人分の寝床があれば充分さ」

2人部屋という事はベッドも2台あるのだろうし床じゃないだけましだ。
宿の2階にあがり廊下の真ん中あたりに俺たちの部屋があった。
扉を開けて中に入ると正面奥向かって右側に大型人種用のベッドが2台ぴったりと並べられて置いてある。
そして反対左奥にはベッドと少し隙間を開けて大きめのクローゼットが左壁を背に置かれて、クローゼットの横に小さなテーブルと2脚の椅子。
窓は入り口の正面、部屋奥の壁に出窓が付いている。
少し窮屈と聞いたがまあ家具が部屋のほとんどを占めて床の面積は少ない。
床で寝る方がきつそうだ。
すれ違うのに少し不便さはあるがそう大きく移動が必要な程の部屋でも無い。
ベッドがぴったりだが俺もエドガーも寝相悪くないからベッドからはみ出して蹴飛ばすとかも大丈夫だろう。
つまり何も問題なさそうだ。

「エドガーベッドどっちがいい?」
「どちらでもいいけど」
「そんじゃ俺は壁側」
そう言ってすぐに荷物を下ろし自分のベッドに飛び込んだ。
台の硬さを感じない良いマットだ。

「やっぱ兵舎よりこっちの方が良いベッドだな!」
ようやくだ、ようやくこのベットで一晩寝られるんだ。
前回は部屋借りてるのに床でしか寝てなかったからな。
体格にあった良いベッドで寝られるので楽しみだ。
でも今日は娼館行くけどな!
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