黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

99話 揺れ動く感情

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(エドガー視点)
ギルドでの初仕事となる今日。
始めて解体場にきた俺の感情は何度も大きく揺さぶられまくった。
悪い方ではなく良い方に。

バートというおっさんはとても気の良い人で、この解体場の空気をよくしてくれているようだった。

今までいつ怒鳴られるのかとヒヤヒヤしながら仕事をした俺にとっては解体場の居心地の良さにびっくりした。

たくさんの人が仕事をするのだから、それなりに出来不向きがあるのだが、ここは皆おおらかで出来ないことはカバーし合っているのはこのバートという男の力なのだろう。

そしていつも通りタイガの規格外な技量にもびっくりした。
タイガの倍以上もある魔物をものともせずに迷いなく解体していく様子はバートと同じ感想で気分が良かった。

これで解体への抵抗が消えたように思う。
最初はやっぱり抵抗があったし大量のコボルトの死体には狼の獣人として思うところもあった。
でも、更に見たタイガのコボルト解体で吹っ切れたと思う。
生き物と思うまもなくバラされてしまったからだ。
流石に血飛沫浴びながら作業するタイガはどうかと思ったが。

タイガは一見怖そうに見えるが、なんだかんだ優しいし凄く面倒見がいい。
俺以外のやつにもそうだ。
そんなタイガを見て、俺もそうなりたいと思った。

タイガは教えるのも上手く、俺自身驚くほど1日で解体が上手くこなせるようになった。
コボルトだけだが。

1匹目を1人でなんとか解体し、2匹目を余裕で解体し終えるととても自信がついた気がした。
ここで仕事をしていける資格を得られた気がして嬉しかった。

極め付けは風呂だった。
この時にはタイガのテンションはおかしくなっていた。
だけど初めての俺にはちゃんと説明してくれた。

人前で裸になるのは慣れていない。
だけど一度はタイガの前で裸になっていたし、大きいと言われたことは俺の中でとても自信になっていた。
それでも布越しに見てただけでもタイガの方がデカいのだが、タイガに対しては劣等感はない。
タイガが堂々としているのに自分は恥ずかしがる姿を誰かに見せるのが嫌だったので覚悟を決めた。

初めて見たタイガの全裸は素直にカッコいいなと感心した。
そして自然と目が吸い寄せられてしまう存在にとてもドキドキした。

自分のとはまるで違う。さらに大きなそれは
タイガという人を物語るように堂々として男らしかった。
タマもずっしりと重そうに垂れ下がり強烈な迫力ががあった。それもまたかっこいいと思った。

他の者たちのも見た。
やはりどうしても気になって見てしまうものなのだなと思った。
大小人それぞれで多少違いがあるそれを見るのは少し楽しかったと思う。
だけどやはりどれもタイガの前では霞んでしまう。
自分のと比べてもやはり見劣りするものばかりだった。
タイガが俺に対してデカいデカい言ってくるのがわかった。
凄く嬉しくて更に自信が持てた。

初めて湯船に浸かると思考が吹っ飛んだ。
目まぐるしく変化していた気持ちが全て心地よさで埋め尽くされた。
動きたくなかった。
タイガがしつこく熱弁していたのがよくわかる。
この心地よさも見える景色もエドガーをすっかり魅了した。
タイガがこの街に作ると語った銭湯はひっそりとエドガーの目標にもなった。

湯船に後ろ髪を引かれつつ風呂から上がった時にタイガに言われた事はドキッとしたが。
むしろ受け入れられた。
ほんというとむしろありがたいのだがまだ気恥ずかしさが勝った。
でも見ていいといわれたならしっかりと見てみたいと思った。
タイガに見られているのも少し恥ずかしさはあるけれどタイガならいいと思った。
タイガはお互い気兼ねなく付き合える仲間になろうとしてくれている。
それが嬉しかった。

ギルドへ戻る帰り道。
ふわっふわに仕上がった体毛に受ける風が心地よかった。
タイガが魔法で綺麗に乾かしてくれたのだ。
自分でも触りたくなるほどの仕上がりだ。

今日のことを振り返ると充実感が胸を満たした。
だけど心に残った少しの疑問がこの状況だからこそ存在感を増した。
多分悪い答えにはならないだろう。
確信があった。
だから気楽に質問を口にした。

「タイガはなんで俺にこんなよくしてくれるんだ?」

タイガは少しだけ考える。
「・・・エドガーと一緒にいると楽しいんだ」
いつも自信に満ちていたタイガの表情は少しだけ照れくさそうだった。

「俺も、タイガといるの楽しいぜ」
めちゃくちゃ照れ臭いがちゃんと伝えとこうと思った。
「へへ、照れ臭えや・・」
タイガも同じ気持ちなようだった。
なかなか見れないタイガの一面を見た気がした。
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