黄昏一番星

更科二八

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序章 新天地と仲間との出会い

8話 神多羅木 大鎧

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街へ入るための許可証を発行する受付のある建物の中は狭くとても簡素な作りだった。
受付に紋章付の入った服を着た中年の男がひとり、少し奥には色違いで別の紋章の服の若い男が1人書類を漁っている。

「おう、お前か?盗賊退治したオーガみたいな奴ってのは?確かにデケェな!」
「ああ、そうだ街に入る許可証をもらいたいのだが。」
「あいよ、それじゃこの書類の書けるところだけでいいから内容埋めてくれ、字は書けるよな?」
「ああ、問題ない。」
「そいつは良かった、書けないやつもまあまあいるからな。」

渡された書類に目を通して項目を埋めていく。
名前、神多羅木 大鎧カタラギ タイガ
年齢、27
性別、男
出身、珠夏シュカ
来街理由、移住
書類を書き終え受付の男に渡す。

「そんじゃ次これに手を置いてくれ。」
そう言って受付に置いてあったガラスの箱のようなものを指すので促されるまま手を添える。
するとガラスの箱はうっすらと深い藍色の光を発する。

「ほー鬼族ね、オーガっぽいていうから何かと思っとったが変身魔法か?」
「いや、何もしてないぞ、姿形がかなり近いんだ、これは種族がわかるものなのか?」
「そうだ、変身魔法使って誤魔化すやつもいるからな、種族はこいつで調べる事になってるのさ。」
なるほど、この国に入ってから度々思うがこれまで旅してきた国と比べてもこのシャンデール王国は普人族の割合が高い。

普人族というのは、なんというか普通の人だ。
平均身長170センチ程で、これと言った外見的特徴もないし能力もあまりパッとしないが魔力の高いものが生まれやすい特徴はある。
あと人族の中では非常に数が多い、世界にいる半分は普人族だと言われるほどだ。

俺のような鬼族やオーガ族、ドワーフ族や獣人族などなど、この世界に住む多様な人種はこの普人族から派生した種族なのだと言われている。

普人族の数が多い場所だと他種族に対しての扱いが酷いことが時々見られる。
この傾向は大陸の西に行くほど顕著なのだと元いた場所で聞いた。
なんでも西側諸国と呼ばれる国々は大昔、他種族への迫害から大きな戦争まで発展した歴史があるそうで、未だに普人族至上主義が残っているのだとか。

俺のいるシャンデール王国は西側諸国と中央諸国の間にある。
きっと他種族への偏見を持つものはそこそこいるのだろう。
そんな場所では普人族以外の人種にとっては変身魔法の重要性も高くなるのだろうな。

「ほれ許可証できたぜ、これが身分証代りになるから失くすなよ。有効期限は1週間。移住希望ならこの間にギルドに行って正規の身分証作ってくれ。」
考えているうちに許可証を作ってくれていたようだ
小さな木のカードを受け取ると俺の名前や種族などが刻印されている。

「次は報奨金。」
そう言って受付の男は小さな麻袋を二つ受付の下から取り出した。
「金額は22500ロング、これはここの手続きと税金引いてるからな。
それと奴らの持ってた旅人の輪だな、これはお前が好きなようにしてくれ、換金するには時間が足らなくてそのままだそうだ、他の荷物は金になりそうになかったんでこっちで処分するってよ。」
そう説明して渡してくれた。

旅人の輪の入った麻袋をみて、これを外す時のことを想像していた盗賊達の顔が思い浮かぶ。
強く生きろよ、平凡盗賊団。

「あいつらはこの後どうなるんだ?」
「だいたい罰金奴隷だなー余罪次第では終身奴隷だ、盗賊の罰金は重いから長いぞー」
「そうか、そんなもんか。」
俺の旅してきた国の中には盗賊は死刑という国もあったので生きれるだけ得だな。
賑やかな奴らだったが野放しにするには危険だったしこれでいいだろう。
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