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最終章 奈落ノ深淵編
最終話 ダンジョン攻略始めたら……
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青く轟々と輝くとその身体は蒼い炎から生まれ出でた様な外見をしていた。目のある場所には赤く染まった光の球体が埋め込まれているようである。体の奥には夜空にキラキラと輝く星のような煌めきを発している。まるで身体の内側に宇宙そのものが広がっている様なその幻獣は凛とした面持ちでこの場所に現れた。
「貴様はこの世界にいてはならない存在な筈だぞ八岐大蛇よ」
「おのれ麒麟、貴様は封印されていた筈では!!」
「その通り、じゃが我の離れし魂が封印を解いてくれた」
「離れし魂だと?」
「長話は終わりだ、貴様は地上に出る前に滅ぶのだ」
「ふざけるな!! 我は外へ出る!! 貴様を倒して、俺が世界を手に入れる!!」
「愚かだ」
麒麟の周囲に魔法陣が生まれる。青い魔法陣の上には水蒸気が集まり、巨大な氷塊が現れた。そして、赤い魔法陣の上には大きな火球が現れる。
「"炎冷豪轟弾"!」
麒麟が上体を勢いよく上げると、氷塊と火球が竜魔神へ飛んで行く。竜魔神は身体を守ろうと一つの首を前に出す。
「そんなもの我には効かぬ!!」
余裕な表情を見せた竜魔神だが、氷塊が衝突した途端に首が一気に凍りつく。
「な、何!?」
そして、凍り付いた首に向けて火球が畳み掛ける。
火球が命中すると、首はどろどろに溶けて消失した。
「ぎやぁああああああ!!!! い、痛い!! 再生しないだと!?」
「愚かと言ったのはそういうことだ。貴様は【森羅万象】によって能力を削除されたのだ。お前もう我が麒麟に勝てない」
「お、おのれぇええええ!!!!!!」
「終わりにしよう。はぁああああああ……」
麒麟が声を上げながら力を溜める。部屋中が麒麟の奮い立つ心情の様に震え始める。
すると、麒麟の周りに新たに4つの魔法陣が生まれた。
それは赤、青、緑、白色の魔法陣が生まれる。
赤い魔法陣からは大きく羽ばたきながらその魔法陣から飛び出てきたのは"炎神"朱雀、緑色の魔法陣からは2つの竜の顔を出しながら亀の甲羅が付いた身体で這い上がってくる"知神"玄武、白色の魔法陣からは大きく飛び上がって現れた、白い虎"幻神"白虎、そして最後に現れたのは青い魔法陣から長く伸びてくる巨大な胴体から鋭く厳つい顔をした龍、白い髭を伸ばし、一吠えすれば大地が揺れ、水が噴き出す"水神"青龍が姿を現した。
気がつけば、麒麟の周りには全ての四神が揃い、召喚された。
「全ての、四神が揃った?」
セシリアはゆっくりと立ち上がり、麒麟の元へと歩み寄る。
「獣人よ、事情は知っている。其方、父と母の仇を討ちたいか?」
麒麟はセシリアに問いかける。セシリアは麒麟が現れたことに驚き、目の前で起こっていることが一体なんなのか情報を処理しきれずにいた。しかし、その問いかけには迷うことなく答える事ができた。
「う、討ちたい!! 私のお父さんとお母さん、そしてみんなの大切な記憶を奪ったあの男を倒したい!!」
「ならば手を貸せ」
「手を貸せ?」
「我が背中に乗れ」
セシリアは首を縦に振り、麒麟の背中へと飛び乗る。
麒麟の背中はどこか暖かく、何処か懐かしい感触と匂いがした。
「剣を抜け」
セシリアは麒麟に言われるがままに大太刀を抜く。
「我が四神達よ、この者に邪を打ち砕く力を与えよ!!」
麒麟の一声を聞いた四神達は大きく口を開く。それぞれれの口からそれぞれの色のエネルギーがセシリアの大太刀に流れてくる。
すると、セシリアの大太刀の刃が虹色に輝き始める。
「凄い……」
セシリアは剣を見つめる。キラキラと輝く刃は周りに生えている魔結晶の何倍もの輝きを見せていた。
「その剣に全属性のエネルギーを纏わせた。その剣で奴を……切れ!」
「……うん!!」
セシリアは剣を構えた。今まさにこの力があれば奴を倒せる、そう思うだけでセシリアの胸の鼓動が高まり、流れていく血の速度が速くなるのを感じた。
麒麟が走り出す。
「や、やめろぉおおおおお!!!!!!」
走り出すのを見た竜魔神は恐れるも、最後の足掻きを見せ、セシリア達へ向けて炎の息吹を吐いた。
麒麟はその炎の中を走り、セシリアが炎を切る。炎の中から飛び出した麒麟とセシリア、竜魔神と目と目が合う。
「みんなの想いをこの一太刀にかける!!」
竜魔神が死を悟ったその時、セシリアの一太刀が残り7つの首を一気に切り落とした。
「お、おのれぇええええええええ!!!!!!」
竜魔神の断末魔と共に切り落とされた首がぐちゃぐちゃと音を立てて落ちる。
そして、胴体も首もだんだんと腐っていき、大地へと帰っていく。生命の終わりを告げた身体は世界の一部となったのだ。
「よくぞやった」
セシリアは麒麟から降りて剣を鞘へと戻す。
「フールは!? フールの姿が見当たらないのだけどフールはどこへ行ったの!?」
セシリアは思い出したように、慌てて麒麟へ問う。
「フール……そうか、我が魂はその名の通り呼ばれていたというわけか。其方はセシリアと入ったな。其方が言っていたフールという名の人間は我が魂の半身だった」
「魂の半身?」
「我は数千年の前、四神を統べてからこの世界の中で封印されていた。しかし、ある時、この世界の均衡を保つ者……この世界でいう四神を祀る神殿に押入り、世界の秩序を乱そうとした者が現れた」
「それが、バルバドス?」
「さよう。邪悪なる者の出現により私は考えた。それは、我が魂の半魂に世界的特異能力を付与させる事だった。世界的特異能力を得たものは生命であれば大きな恩恵を受ける。例えば知能の無い魔物などが大幅に知力が向上し、強力な個体に変化したりすることがある。魔人などがそうだ。我はこれを利用した。知能のない半魂に能力を付与させ、人化させる。それが其方の言うフールと言う人間の完成だ」
「そんな……てことはフールは人間ではなかったってこと?」
「この世界の言葉で言うなら“麒麟”の魔人とでも言えよう。そして、我が半魂は冒険の中で其方たちによって成長し、【森羅万象】を手にし、世界を操る力を手に入れた。そして、我は世界から呼び出されたと言うわけだ」
フールは魔人だった。セシリアはその事実に驚くのは当たり前だが、一つだけ疑問があった。
「フールは、戻ってくるの!?」
「残念だが彼は我の一部なのだ。我ももう時期、この四神達と消え、封印されよう」
「そ、そんな」
セシリアは膝から崩れ落ちる。眼からボロボロと涙がこぼれ落ちてくる。どんなに堰き止めようとしても流れる涙は止まらない。
「い、いやだ! 私、フールと出会えたから……ここまで来れた。それに初めての初恋の人だったのに……また私は一人ぼっちになるの? まだ、感謝も告白もまだなのに……いやだ! いやだいやだ!! いやだいやだいやだ!!!!」
怒りと悲しみの感情がぐちゃぐちゃに混ざり合い、セシリアは悲しみにくれた。セシリアは麒麟にしがみつき、抵抗した。
「お願い! フールを! 返して!!!!!!」
その時、セシリアの身体が大きく光だす。セシリアの中で何かが弾けた感覚があった。
「何?」
セシリアに触れられていた麒麟の身体に異変が起こる。ノイズが走ったかの様に身体がぶれるとセシリアの身体の光が麒麟の体の中に流れ入って行く。
「これはまさか!!」
麒麟は驚いた様子だったが、セシリアは何が起こっているのか分からなかった。そのままされるがままに見ていると麒麟の身体から光塊が出てくる。
光の塊は地面に降り立つと、人の形に変わっていく。その姿は今まで見たことあのあるあの姿だった。
「あれ? 俺は一体……」
「フール……フール!!!!!」
突然セシリアが泣きながら俺に抱きついてきた。俺は訳がわからぬまま、セシリアを抱きしめ頭を撫でてやった。
「馬鹿ぁ! フールのバカァ!!」
「セシリアどうしたんだよ! それより奴は!?」
「もう倒したよぉ!! バカばか馬鹿!!」
泣きじゃくるセシリアを宥めつつ、俺の近くに寄ってきた蒼い怪物が口を開いた。
「“宇宙”、何と言うことだ。まさか彼女に発現するとは……面白い」
怪物が少しだけ笑ったような気がした。そして、怪物は徐々に消えてゆく。
俺と怪物は目と目があった。その子を泣かせるんじゃ無いよと言っているかの様だった。
そして、その化け物と四神は完全に消えてしまった。
一方でセシリアは全然泣き止んでくれない。
「セシリア、悪かった心配かけ……」
その時、セシリアの顔が近づき、俺の唇とセシリアの唇が重なった。少しの間、口付けをかわしたのち、セシリアが顔を離す。
セシリアは涙流しながらも顔を赤くして甘えたような顔になっていた。
「セ、セシリア?」
「今のうちにしておかないと、また消えるんじゃ無いかと思って……私、ずっと恥ずかしくて言えなかったけどフールの事が好き。大好き。だから、もう私を1人にしないで下さい。私たちの前から消えないで下さい」
セシリアは俺にまっすぐな視線で言った。人とキスをするのが初めてだった俺だが何故か焦ることはなかった。
俺は首を縦にふり、再びセシリアを抱きしめた。
「「ヒューーヒューー」」
突然の外野からの声に思わず身体を離す。横を見るとパトラとルミナが横になって俺たちを見ていた。
「ちょ、ちょっとルミナ!?」
「オイラが起こしておいたんだぞ!! いいところだったからな!!」
「やっと言えたわね! おめでとうセシリア!!」
「もう!!」
茶化すセシリアの一方でソレーヌは後ろを向いていた。
「おめでとうございますフールさん」
「え、あ、うん」
小恥ずかしくなって変な返事になってしまった。
後ろ向いていたソレーヌの身体が少しだけ小刻みに震えているのが見え、声をかけようと思ったが周りに手を引かれてしまった。
「さぁ! 帰りましょ!! みんなが待ってるから!!」
「行きましょ! ソレーヌも!」
「う、うん!」
ソレーヌは手で涙を拭うと、遅れてみんなの後を追うように帰路を歩いた。
☆☆☆☆☆
ーー数ヶ月後
フール達の帰還とバルバドス討伐によってバルバドス軍とソローモ同盟軍による防衛戦争は終わりを告げた。
あれから、バルバドス軍の騎士や冒険者達は降伏し、元バルバドスの国の兵士となる者や、新たな聖騎士協会の騎士団になる者達もいた。隠された安息所にいた人々も聖騎士協会に保護され、地上へと復帰し、教会でまた迷いを抱える者達を導く手伝いを行う様になった。
同盟軍を指揮したウォルター達は新たな聖騎士協会の会長になり、クラリスやアイギス、そしてパウロはウォルターの側近として新たなる騎士団を結成した。
カタリナはウォルターに推薦され、ギルドの会長へと任命され、新たなるギルド創生を行いつつ、自身もグリフォンのメンバーとして活動することになる。
☆☆☆☆☆
「お待ちください!! セシリア様!!」
場所は変わってバルバドス城、いやセシリア国のセシリア城内では一騒ぎ起きていた。
「待たないよーーだ!!」
セシリアは正装であるドレスを脱ぎ捨て、いつもの服を着て場内を逃げ回っていた。城の外へと出るとフールとルミナとソレーヌ、そしてアルとイルが馬車の中で待っていた。
「あ! セシリー!! こっちこっち!!」
「お待たせ!!」
セシリアは馬車に飛び乗る姿を見て俺は相変わらずだなとため息を吐いた。
1人兵士が近づいてくる。
「フール王もいけませんよ!! これから他国の王と顔合わせがあるのですから!!」
「あはは、実はウォルターから新しいダンジョンの調査をお願いされたんだ。だから、約束の時間までには必ず戻るから行ってくるよ」
俺は馬を操り、城の城門を通って城下町へと歩む。
「まったくもう……こほん! フール王とセシリア女王のおでかけです!! みなさまお気をつけて!!」
城下町を通ると中央には俺の像が立っていた。像にはこう書かれている。
『伝説の冒険者フール』
どうやら、俺は伝説になってしまったらしい。
だけど、俺たちはまた新たなるダンジョンを目指して変わらず冒険している。ここから、また新たなる伝説が始まるのだ。
☆☆☆☆☆
一方、セシリア国の城下町でとある商店が賑わいを見せていた。
「さぁ! よってらっしゃい見てらっしゃい!! 伝説の冒険者パーティの1人、おいらがパトラ様のお店がついに開いたんだぞ!!」
パトラはついにお店を見つけ、自分の店を持つ事ができた。パトラは開店記念にとあるノートを台本に紙芝居を始める。
「今日は開店記念だからな、ここでしか聞けないおいら達の冒険のお話を聞かせてやるぞ!!題して……『雑用係の回復術士、ダンジョン攻略始めたら伝説になった』なんだぞ!!」
お客達は食い入るようにパトラの紙芝居をみる。その中で後ろの方で、黒髪の女性が遠くで見ているのが見えた。大きな帽子の下でどこかくすくすと笑っている様な気がした。
「現在王となったフール王とセシリア女王、そしておいら率いる仲間達の涙なしでは見られない感動の冒険譚をとくとご覧あれ!!」
そして、パトラは俺たちが伝説になるまでを描いた紙芝居の1ページ目をめくる。
皆の中で俺たちの伝説は語り継がれて行くのであった。
「貴様はこの世界にいてはならない存在な筈だぞ八岐大蛇よ」
「おのれ麒麟、貴様は封印されていた筈では!!」
「その通り、じゃが我の離れし魂が封印を解いてくれた」
「離れし魂だと?」
「長話は終わりだ、貴様は地上に出る前に滅ぶのだ」
「ふざけるな!! 我は外へ出る!! 貴様を倒して、俺が世界を手に入れる!!」
「愚かだ」
麒麟の周囲に魔法陣が生まれる。青い魔法陣の上には水蒸気が集まり、巨大な氷塊が現れた。そして、赤い魔法陣の上には大きな火球が現れる。
「"炎冷豪轟弾"!」
麒麟が上体を勢いよく上げると、氷塊と火球が竜魔神へ飛んで行く。竜魔神は身体を守ろうと一つの首を前に出す。
「そんなもの我には効かぬ!!」
余裕な表情を見せた竜魔神だが、氷塊が衝突した途端に首が一気に凍りつく。
「な、何!?」
そして、凍り付いた首に向けて火球が畳み掛ける。
火球が命中すると、首はどろどろに溶けて消失した。
「ぎやぁああああああ!!!! い、痛い!! 再生しないだと!?」
「愚かと言ったのはそういうことだ。貴様は【森羅万象】によって能力を削除されたのだ。お前もう我が麒麟に勝てない」
「お、おのれぇええええ!!!!!!」
「終わりにしよう。はぁああああああ……」
麒麟が声を上げながら力を溜める。部屋中が麒麟の奮い立つ心情の様に震え始める。
すると、麒麟の周りに新たに4つの魔法陣が生まれた。
それは赤、青、緑、白色の魔法陣が生まれる。
赤い魔法陣からは大きく羽ばたきながらその魔法陣から飛び出てきたのは"炎神"朱雀、緑色の魔法陣からは2つの竜の顔を出しながら亀の甲羅が付いた身体で這い上がってくる"知神"玄武、白色の魔法陣からは大きく飛び上がって現れた、白い虎"幻神"白虎、そして最後に現れたのは青い魔法陣から長く伸びてくる巨大な胴体から鋭く厳つい顔をした龍、白い髭を伸ばし、一吠えすれば大地が揺れ、水が噴き出す"水神"青龍が姿を現した。
気がつけば、麒麟の周りには全ての四神が揃い、召喚された。
「全ての、四神が揃った?」
セシリアはゆっくりと立ち上がり、麒麟の元へと歩み寄る。
「獣人よ、事情は知っている。其方、父と母の仇を討ちたいか?」
麒麟はセシリアに問いかける。セシリアは麒麟が現れたことに驚き、目の前で起こっていることが一体なんなのか情報を処理しきれずにいた。しかし、その問いかけには迷うことなく答える事ができた。
「う、討ちたい!! 私のお父さんとお母さん、そしてみんなの大切な記憶を奪ったあの男を倒したい!!」
「ならば手を貸せ」
「手を貸せ?」
「我が背中に乗れ」
セシリアは首を縦に振り、麒麟の背中へと飛び乗る。
麒麟の背中はどこか暖かく、何処か懐かしい感触と匂いがした。
「剣を抜け」
セシリアは麒麟に言われるがままに大太刀を抜く。
「我が四神達よ、この者に邪を打ち砕く力を与えよ!!」
麒麟の一声を聞いた四神達は大きく口を開く。それぞれれの口からそれぞれの色のエネルギーがセシリアの大太刀に流れてくる。
すると、セシリアの大太刀の刃が虹色に輝き始める。
「凄い……」
セシリアは剣を見つめる。キラキラと輝く刃は周りに生えている魔結晶の何倍もの輝きを見せていた。
「その剣に全属性のエネルギーを纏わせた。その剣で奴を……切れ!」
「……うん!!」
セシリアは剣を構えた。今まさにこの力があれば奴を倒せる、そう思うだけでセシリアの胸の鼓動が高まり、流れていく血の速度が速くなるのを感じた。
麒麟が走り出す。
「や、やめろぉおおおおお!!!!!!」
走り出すのを見た竜魔神は恐れるも、最後の足掻きを見せ、セシリア達へ向けて炎の息吹を吐いた。
麒麟はその炎の中を走り、セシリアが炎を切る。炎の中から飛び出した麒麟とセシリア、竜魔神と目と目が合う。
「みんなの想いをこの一太刀にかける!!」
竜魔神が死を悟ったその時、セシリアの一太刀が残り7つの首を一気に切り落とした。
「お、おのれぇええええええええ!!!!!!」
竜魔神の断末魔と共に切り落とされた首がぐちゃぐちゃと音を立てて落ちる。
そして、胴体も首もだんだんと腐っていき、大地へと帰っていく。生命の終わりを告げた身体は世界の一部となったのだ。
「よくぞやった」
セシリアは麒麟から降りて剣を鞘へと戻す。
「フールは!? フールの姿が見当たらないのだけどフールはどこへ行ったの!?」
セシリアは思い出したように、慌てて麒麟へ問う。
「フール……そうか、我が魂はその名の通り呼ばれていたというわけか。其方はセシリアと入ったな。其方が言っていたフールという名の人間は我が魂の半身だった」
「魂の半身?」
「我は数千年の前、四神を統べてからこの世界の中で封印されていた。しかし、ある時、この世界の均衡を保つ者……この世界でいう四神を祀る神殿に押入り、世界の秩序を乱そうとした者が現れた」
「それが、バルバドス?」
「さよう。邪悪なる者の出現により私は考えた。それは、我が魂の半魂に世界的特異能力を付与させる事だった。世界的特異能力を得たものは生命であれば大きな恩恵を受ける。例えば知能の無い魔物などが大幅に知力が向上し、強力な個体に変化したりすることがある。魔人などがそうだ。我はこれを利用した。知能のない半魂に能力を付与させ、人化させる。それが其方の言うフールと言う人間の完成だ」
「そんな……てことはフールは人間ではなかったってこと?」
「この世界の言葉で言うなら“麒麟”の魔人とでも言えよう。そして、我が半魂は冒険の中で其方たちによって成長し、【森羅万象】を手にし、世界を操る力を手に入れた。そして、我は世界から呼び出されたと言うわけだ」
フールは魔人だった。セシリアはその事実に驚くのは当たり前だが、一つだけ疑問があった。
「フールは、戻ってくるの!?」
「残念だが彼は我の一部なのだ。我ももう時期、この四神達と消え、封印されよう」
「そ、そんな」
セシリアは膝から崩れ落ちる。眼からボロボロと涙がこぼれ落ちてくる。どんなに堰き止めようとしても流れる涙は止まらない。
「い、いやだ! 私、フールと出会えたから……ここまで来れた。それに初めての初恋の人だったのに……また私は一人ぼっちになるの? まだ、感謝も告白もまだなのに……いやだ! いやだいやだ!! いやだいやだいやだ!!!!」
怒りと悲しみの感情がぐちゃぐちゃに混ざり合い、セシリアは悲しみにくれた。セシリアは麒麟にしがみつき、抵抗した。
「お願い! フールを! 返して!!!!!!」
その時、セシリアの身体が大きく光だす。セシリアの中で何かが弾けた感覚があった。
「何?」
セシリアに触れられていた麒麟の身体に異変が起こる。ノイズが走ったかの様に身体がぶれるとセシリアの身体の光が麒麟の体の中に流れ入って行く。
「これはまさか!!」
麒麟は驚いた様子だったが、セシリアは何が起こっているのか分からなかった。そのままされるがままに見ていると麒麟の身体から光塊が出てくる。
光の塊は地面に降り立つと、人の形に変わっていく。その姿は今まで見たことあのあるあの姿だった。
「あれ? 俺は一体……」
「フール……フール!!!!!」
突然セシリアが泣きながら俺に抱きついてきた。俺は訳がわからぬまま、セシリアを抱きしめ頭を撫でてやった。
「馬鹿ぁ! フールのバカァ!!」
「セシリアどうしたんだよ! それより奴は!?」
「もう倒したよぉ!! バカばか馬鹿!!」
泣きじゃくるセシリアを宥めつつ、俺の近くに寄ってきた蒼い怪物が口を開いた。
「“宇宙”、何と言うことだ。まさか彼女に発現するとは……面白い」
怪物が少しだけ笑ったような気がした。そして、怪物は徐々に消えてゆく。
俺と怪物は目と目があった。その子を泣かせるんじゃ無いよと言っているかの様だった。
そして、その化け物と四神は完全に消えてしまった。
一方でセシリアは全然泣き止んでくれない。
「セシリア、悪かった心配かけ……」
その時、セシリアの顔が近づき、俺の唇とセシリアの唇が重なった。少しの間、口付けをかわしたのち、セシリアが顔を離す。
セシリアは涙流しながらも顔を赤くして甘えたような顔になっていた。
「セ、セシリア?」
「今のうちにしておかないと、また消えるんじゃ無いかと思って……私、ずっと恥ずかしくて言えなかったけどフールの事が好き。大好き。だから、もう私を1人にしないで下さい。私たちの前から消えないで下さい」
セシリアは俺にまっすぐな視線で言った。人とキスをするのが初めてだった俺だが何故か焦ることはなかった。
俺は首を縦にふり、再びセシリアを抱きしめた。
「「ヒューーヒューー」」
突然の外野からの声に思わず身体を離す。横を見るとパトラとルミナが横になって俺たちを見ていた。
「ちょ、ちょっとルミナ!?」
「オイラが起こしておいたんだぞ!! いいところだったからな!!」
「やっと言えたわね! おめでとうセシリア!!」
「もう!!」
茶化すセシリアの一方でソレーヌは後ろを向いていた。
「おめでとうございますフールさん」
「え、あ、うん」
小恥ずかしくなって変な返事になってしまった。
後ろ向いていたソレーヌの身体が少しだけ小刻みに震えているのが見え、声をかけようと思ったが周りに手を引かれてしまった。
「さぁ! 帰りましょ!! みんなが待ってるから!!」
「行きましょ! ソレーヌも!」
「う、うん!」
ソレーヌは手で涙を拭うと、遅れてみんなの後を追うように帰路を歩いた。
☆☆☆☆☆
ーー数ヶ月後
フール達の帰還とバルバドス討伐によってバルバドス軍とソローモ同盟軍による防衛戦争は終わりを告げた。
あれから、バルバドス軍の騎士や冒険者達は降伏し、元バルバドスの国の兵士となる者や、新たな聖騎士協会の騎士団になる者達もいた。隠された安息所にいた人々も聖騎士協会に保護され、地上へと復帰し、教会でまた迷いを抱える者達を導く手伝いを行う様になった。
同盟軍を指揮したウォルター達は新たな聖騎士協会の会長になり、クラリスやアイギス、そしてパウロはウォルターの側近として新たなる騎士団を結成した。
カタリナはウォルターに推薦され、ギルドの会長へと任命され、新たなるギルド創生を行いつつ、自身もグリフォンのメンバーとして活動することになる。
☆☆☆☆☆
「お待ちください!! セシリア様!!」
場所は変わってバルバドス城、いやセシリア国のセシリア城内では一騒ぎ起きていた。
「待たないよーーだ!!」
セシリアは正装であるドレスを脱ぎ捨て、いつもの服を着て場内を逃げ回っていた。城の外へと出るとフールとルミナとソレーヌ、そしてアルとイルが馬車の中で待っていた。
「あ! セシリー!! こっちこっち!!」
「お待たせ!!」
セシリアは馬車に飛び乗る姿を見て俺は相変わらずだなとため息を吐いた。
1人兵士が近づいてくる。
「フール王もいけませんよ!! これから他国の王と顔合わせがあるのですから!!」
「あはは、実はウォルターから新しいダンジョンの調査をお願いされたんだ。だから、約束の時間までには必ず戻るから行ってくるよ」
俺は馬を操り、城の城門を通って城下町へと歩む。
「まったくもう……こほん! フール王とセシリア女王のおでかけです!! みなさまお気をつけて!!」
城下町を通ると中央には俺の像が立っていた。像にはこう書かれている。
『伝説の冒険者フール』
どうやら、俺は伝説になってしまったらしい。
だけど、俺たちはまた新たなるダンジョンを目指して変わらず冒険している。ここから、また新たなる伝説が始まるのだ。
☆☆☆☆☆
一方、セシリア国の城下町でとある商店が賑わいを見せていた。
「さぁ! よってらっしゃい見てらっしゃい!! 伝説の冒険者パーティの1人、おいらがパトラ様のお店がついに開いたんだぞ!!」
パトラはついにお店を見つけ、自分の店を持つ事ができた。パトラは開店記念にとあるノートを台本に紙芝居を始める。
「今日は開店記念だからな、ここでしか聞けないおいら達の冒険のお話を聞かせてやるぞ!!題して……『雑用係の回復術士、ダンジョン攻略始めたら伝説になった』なんだぞ!!」
お客達は食い入るようにパトラの紙芝居をみる。その中で後ろの方で、黒髪の女性が遠くで見ているのが見えた。大きな帽子の下でどこかくすくすと笑っている様な気がした。
「現在王となったフール王とセシリア女王、そしておいら率いる仲間達の涙なしでは見られない感動の冒険譚をとくとご覧あれ!!」
そして、パトラは俺たちが伝説になるまでを描いた紙芝居の1ページ目をめくる。
皆の中で俺たちの伝説は語り継がれて行くのであった。
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高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
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しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
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その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
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実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
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※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
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◇なろうにも上げています。
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SOSではなくて助けとかの方がよい気がします
「お前が戦い終わるまで治癒を持続詠唱し続ける」の下りで笑いました。
ありがとうございます。