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最終章 奈落ノ深淵編
第151話 鬼人 vs 悪魔
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起き上がったセシリアはここがどこなのかわからない様子だった。しかし、タイミング良く起きてくれた事が何よりも俺たちにとって喜ばしい事だった。
「ぐぬぅ……おのれぇ」
バルバドスの顔に熱波が直撃し、火傷の跡がしっかり刻まれていた。
「今ここで貴様を殺してやる!!」
バルバドスは右手をセシリアに向ける。
しかし、右手を向けられたセシリアの身体は何も異変など起こらないでいた。
「な、何だと!?」
「フール!!」
セシリアは台座から飛び降り、俺達の方へと走ってくる。
だが、セシリアの前にバルべリットが立ちはだかる。
「待て、ここでお前を易々引き渡すと思ってるのか?」
「な、何、誰よあんた」
「私の名は聖騎士協会四大天が一人、バルべリットだ」
「四大天?」
「ふん、貴様をここに連れてきたのはお前の潜在的な力が必要なのだ。貴様はバルバドス様に選ばれた優秀な肉体を持っている。貴様はバルバドスと共にこの世界で最強の存在へと変わるのだ」
「何を言ってるのか分からないけど、私はそんなものに何かなりたくない! ましてや、あんな男と一緒になるなんてもってのほかよ!!」
「心配するな、お前が拒否しても私が力尽くで事を進めてやる」
バルべリットはセシリアとの距離を詰め、黒く染まった剣をセシリアへと突き出した。
セシリアはバルべリットの動きに合わせ、咄嗟に背中の大太刀を抜いてその突きを受け止める。鞘から抜かれた剣は轟々と炎が煮えたぎる。
「テリオン、おのれ貴様ぁ……死して尚、私の邪魔をするか!?」
「テリオン……そうか、この剣は……」
バルバドスの言葉でセシリアは思い出す。
夢の中で見たテリオンと言う男はケルディアの夫だった。
ケルディアの子供がセシリアと言うことはテリオンはセシリアの父親ということになる。
セシリアの握る大太刀は父親であるテリオンの形見の武器だったのだ。
「残念だけど、私は貴女に負けるわけにはいかないの」
バルべリットと鍔迫り合うセシリアの外見が徐々に変わって行くのが見えた。獣耳の前に鬼の角の様な物が生えてきている。そして、顔立ちも可愛らしい少女から凛として美しい女性の姿へと変わって行く。
「貴様!? その姿は!!」
「そう、私は……獣人と魔人の混血族よ!!」
バルべリッドの剣がルミナの力によって砕ける。バルベリットは直ぐにセシリアから距離を取った。
バルべリットは自身の手が衝撃によって手が小刻みに震えている。
「なんて事だ、あれはただの鬼人化ではない」
バルベリットを押しのけセシリアはフールの元へと辿り着く。
「フール!! 何だか久しぶりな感じね」
「そんな気がするな。それよりもルミナが」
パトラがルミナの傷口を薬草や布などを巻いて応急手当を施していた。
セシリアは慌ててルミナの元へと寄り添う。
「ルミナ!? ルミナ大丈夫!?」
「セシリー……遅いよ、馬鹿」
「パトラちゃん! ルミナは大丈夫なの!?」
「傷は大丈夫、命に別状は無いんだぞ。ただ不思議だったんだぞ。フールの回復魔法で傷が癒えなかったのはおかしい事なんだぞ」
「回復魔法が効かない?」
「ああ、恐らく奴の能力が魔法を無視する性質があるのかもしれない」
セシリアは立ち上がり、フールの前へと立つ。
「フール、ルミナだけに無理させちゃったみたいね。お待たせ! ここからは私も戦うわ」
「ありがとうセシリア! 俺も全力でサポートする!!」
セシリアは大太刀を背中の鞘に収め、腰の雷光と烈風を引き抜き刃先を向けた。
「こっちの方が小回りがきくわ! さあ掛かって来なさい!」
「小娘が調子に乗るな。ならば私も本気で相手をしてやる! はぁああああああああ!!!!」
バルべリットは気合いを入れるが如く、身体中に力を込める。
バチバチと電流が弾ける様な音と共にバルべリットの身体が変貌する。四大天専用の金属鎧を貫通し、背中から黒い羽が生え、片目は赤く染まり、髪も紫色へと変わる。
腕は白い肌から青色へと変わり、爪が変形し鋭利になる。
「はぁはぁ、見ろ。これが私の本気、【悪魔化】だ!」
バルべリットはニタリと笑みを浮かべ、セシリアに向けて舌舐めずりを見せる。
セシリアはバルべリットの姿に恐れる事なく前へと出た。
「あなたがどんな姿になろうと関係ない。ただ、私はその奥にいる仇を討つ為にあなたを倒すだけよ」
「ぬかせ小娘!! さっきまでの私とは違う!! 全てのステータスが上昇し、戦闘力も格段に上がっている! それに、私にはもう一つ【能力除去】もある! たとえ貴様が原初ノ能力の力で強化されても無駄なんだ!!」
バルべリットは興奮した様子だが、セシリアは冷静だった。バルべリットの威勢に圧倒されそうになるが、セシリアは俺の方へと振り向き笑顔を見せた。
「フール、大丈夫。いつも通り、私に魔法を持続詠唱して」
セシリアのその笑顔がいつも戦ってきた時の安心感を思い出させてくれた。
「勿論だ、俺はセシリアを信じてかけ続ける!」
セシリアは大きく深呼吸押して、戦闘態勢に入る。
「フール行くよ!」
「ああ! EX治癒!!」
俺はセシリアのタイミングで魔法を行使する。
セシリアとバルべリットは同タイミングで動き出し、剣と爪がぶつかり合う。
2本の刃と鋭利な爪が弾き合い、舞踏会で踊りを踊っているかの様な闘いに見えた。
バルべリットの腕を使った軽やかな攻撃を細やかな動きで華麗に受け流すセシリア、その姿は今まで見たセシリアの戦いの中で1番洗礼された動きだった。
「私考えたの、あの時パトラが言ってた事を聞いて。あなたのその攻撃は、受けたら全ての魔法の効果を打ち消すでしょ。なら、私はあなたの攻撃に当たらなければいいのよ」
「簡単に言ってくれるじゃないか。だけど、私の動きについて来れるかな!!」
バルべリットの動きは更に激しさが増し、腕の振りが速くなってくる。
到頭、セシリアはバルべリットの攻撃を弾ききれずにセシリアの腕をバルべリットの爪が引き裂く。
「くぅ!」
セシリアの腕から血が滴る。EX治癒を施しているが、傷が癒える事はない。
「セシリア!?」
「私は大丈夫!! そのままかけ続けて!!」
「くぅ……」
俺はセシリアに言われるがまま持続詠唱を続ける。俺は見守ることしかできないのか……
「ふはは! 攻撃を喰らって仕舞えばお前の能力上昇は無に等しい!! さぁそのまま私に殺されるのだ!!」
バルべリットの言葉にセシリアはニヒルに笑う。
「それはどうかしら?」
「何?」
セシリアは巧みな早業で2本の剣を地面に突き刺し、直ぐに大太刀を抜いてバルべリットに切りつけた。
「煉獄斬!!」
炎を纏った剣はそのままバルべリットの腕を切る。
切られた腕は大きく吹き飛び、壁にぶつかって力なく落ちる。
「ば、馬鹿な!?」
「私の攻撃を喰らったわよね? なら、これでお互い様よね?」
セシリアはバルべリットの能力でフールの魔法の効果がが適応されなくなり、バルべリットは自身の能力発動が無効化された。
そう、それはバルべリットにとって終わりを表していた。
セシリアに切られたことによって悪魔化によって変貌した身体がどんどん元に戻っていく。
そして、悪魔化の体力消耗により力が入らなくなっていた。
「し、しまった……」
立ちあがろうとするも力が入らない。バルべリットは額に大量の汗を出しながら、ゆっくりと目線を上げる。
目の前にはセシリアがバルべリットの顔に向けて剣を突きつけている。
「これでお互い実力勝負……できると言いたかったけど、どうやらあなた、もう無理そうね」
肩を落として、絶望するかと思いきやバルべリットは大きく笑い出す。
「ふっふっふ……クフフ……あっはははははは!!!! はーー……そうか、私は負けるのか」
「あなたが何もしなければね」
「私にはもう何もない……強いな、流石はあのテリオンの娘だ」
「あなた知っていたの?」
「ふふふ、貴様がどう言う存在なのか私達は最初から知っていたさ。だが、まさかここまでの潜在能力を持っていたとは……完敗だ。さぁ殺せ」
セシリアは剣を納め、フールの方へと向いた。
俺は魔法詠唱をやめてセシリアに近づく。
「セシリア、どうした?」
「あの人はもう能力は使えないし、戦いの意思もない。それにこの戦いが終わってから色々聞きたいことがある。だから……ね?」
セシリアの言いたいことはわかった。きっとセシリアの優しさなのだろう。
俺は何も言わずに首を縦に振った。
すると、セシリア嬉しそうに笑みを浮かべ尻尾を振る。
「ぐはぁあああああ!!!!」
目を離していた隙に突然バルべリットの断末魔が聞こえる。
俺たちがバルべリットの方へ向くとバルべリットの胸がウィーンドールの腕によって貫かれていた。
「この使えない雌豚が!」
ウィーンドールの手にはバルべリットの心臓が握られていた。
「か、かはっ……」
バルべリットは力なく倒れる
「バルべリット!! あなた仲間を……どうして!?」
ウィーンドールはセシリアの言葉を無視して、バルバドスに駆け寄る。
「バルバドス様、プランを変えましょう。私の身体とあの雌豚の心臓を貴方に捧げます。元々の力を引き出せるかは分かりませんが、どうか私達の思いを受け取って下さいますか?」
ウィーンドールの言葉を聞いたバルバドスはウィーンドールを抱き寄せる。
「ああ、バルバドス様……」
そしてバルバドスはウィーンドールの首に噛み付く。
ウィーンドールは声を上げることなく、最後の最後までバルバドスにしがみつき、自身の最期を終えた。
一方でバルバドスはフール達の目の前でウィーンドールの肉を喰らい、バルべリットの心臓もデザートの用に平らげた。
口の周りを血で染めたバルバドスは懐から液体が入った4本の瓶を撮り出す。それぞれ、赤、白、緑、青色の液体が入っている。バルバドスはそれを一気に飲み干す。
「まさか、儀式を……」
セシリアが小さく呟く。
俺たちはバルバドスが変貌して行く姿を見ている事しかできなかった。
バルバドスは苦しそうな雄叫びを上げながら、自身の服を脱ぐ。バルバドスの身体の内から何かが出てくるかの様に骨格が疼き、動き回る。そして骨がボキボキとなり、骨格が変形し、どんどん肥大化していく。首が8つに生え、どんどんと伸びる。腕や足はぐちゃぐちゃと気持ち悪い音をたてながらどんどん巨大化して行く。
俺たちの目線がどんどん上へ上へと上がっていき、最終的にバルバドスはその姿形が原型が何かを忘れてしまう程に変化してしまったのだった。
「ぐぬぅ……おのれぇ」
バルバドスの顔に熱波が直撃し、火傷の跡がしっかり刻まれていた。
「今ここで貴様を殺してやる!!」
バルバドスは右手をセシリアに向ける。
しかし、右手を向けられたセシリアの身体は何も異変など起こらないでいた。
「な、何だと!?」
「フール!!」
セシリアは台座から飛び降り、俺達の方へと走ってくる。
だが、セシリアの前にバルべリットが立ちはだかる。
「待て、ここでお前を易々引き渡すと思ってるのか?」
「な、何、誰よあんた」
「私の名は聖騎士協会四大天が一人、バルべリットだ」
「四大天?」
「ふん、貴様をここに連れてきたのはお前の潜在的な力が必要なのだ。貴様はバルバドス様に選ばれた優秀な肉体を持っている。貴様はバルバドスと共にこの世界で最強の存在へと変わるのだ」
「何を言ってるのか分からないけど、私はそんなものに何かなりたくない! ましてや、あんな男と一緒になるなんてもってのほかよ!!」
「心配するな、お前が拒否しても私が力尽くで事を進めてやる」
バルべリットはセシリアとの距離を詰め、黒く染まった剣をセシリアへと突き出した。
セシリアはバルべリットの動きに合わせ、咄嗟に背中の大太刀を抜いてその突きを受け止める。鞘から抜かれた剣は轟々と炎が煮えたぎる。
「テリオン、おのれ貴様ぁ……死して尚、私の邪魔をするか!?」
「テリオン……そうか、この剣は……」
バルバドスの言葉でセシリアは思い出す。
夢の中で見たテリオンと言う男はケルディアの夫だった。
ケルディアの子供がセシリアと言うことはテリオンはセシリアの父親ということになる。
セシリアの握る大太刀は父親であるテリオンの形見の武器だったのだ。
「残念だけど、私は貴女に負けるわけにはいかないの」
バルべリットと鍔迫り合うセシリアの外見が徐々に変わって行くのが見えた。獣耳の前に鬼の角の様な物が生えてきている。そして、顔立ちも可愛らしい少女から凛として美しい女性の姿へと変わって行く。
「貴様!? その姿は!!」
「そう、私は……獣人と魔人の混血族よ!!」
バルべリッドの剣がルミナの力によって砕ける。バルベリットは直ぐにセシリアから距離を取った。
バルべリットは自身の手が衝撃によって手が小刻みに震えている。
「なんて事だ、あれはただの鬼人化ではない」
バルベリットを押しのけセシリアはフールの元へと辿り着く。
「フール!! 何だか久しぶりな感じね」
「そんな気がするな。それよりもルミナが」
パトラがルミナの傷口を薬草や布などを巻いて応急手当を施していた。
セシリアは慌ててルミナの元へと寄り添う。
「ルミナ!? ルミナ大丈夫!?」
「セシリー……遅いよ、馬鹿」
「パトラちゃん! ルミナは大丈夫なの!?」
「傷は大丈夫、命に別状は無いんだぞ。ただ不思議だったんだぞ。フールの回復魔法で傷が癒えなかったのはおかしい事なんだぞ」
「回復魔法が効かない?」
「ああ、恐らく奴の能力が魔法を無視する性質があるのかもしれない」
セシリアは立ち上がり、フールの前へと立つ。
「フール、ルミナだけに無理させちゃったみたいね。お待たせ! ここからは私も戦うわ」
「ありがとうセシリア! 俺も全力でサポートする!!」
セシリアは大太刀を背中の鞘に収め、腰の雷光と烈風を引き抜き刃先を向けた。
「こっちの方が小回りがきくわ! さあ掛かって来なさい!」
「小娘が調子に乗るな。ならば私も本気で相手をしてやる! はぁああああああああ!!!!」
バルべリットは気合いを入れるが如く、身体中に力を込める。
バチバチと電流が弾ける様な音と共にバルべリットの身体が変貌する。四大天専用の金属鎧を貫通し、背中から黒い羽が生え、片目は赤く染まり、髪も紫色へと変わる。
腕は白い肌から青色へと変わり、爪が変形し鋭利になる。
「はぁはぁ、見ろ。これが私の本気、【悪魔化】だ!」
バルべリットはニタリと笑みを浮かべ、セシリアに向けて舌舐めずりを見せる。
セシリアはバルべリットの姿に恐れる事なく前へと出た。
「あなたがどんな姿になろうと関係ない。ただ、私はその奥にいる仇を討つ為にあなたを倒すだけよ」
「ぬかせ小娘!! さっきまでの私とは違う!! 全てのステータスが上昇し、戦闘力も格段に上がっている! それに、私にはもう一つ【能力除去】もある! たとえ貴様が原初ノ能力の力で強化されても無駄なんだ!!」
バルべリットは興奮した様子だが、セシリアは冷静だった。バルべリットの威勢に圧倒されそうになるが、セシリアは俺の方へと振り向き笑顔を見せた。
「フール、大丈夫。いつも通り、私に魔法を持続詠唱して」
セシリアのその笑顔がいつも戦ってきた時の安心感を思い出させてくれた。
「勿論だ、俺はセシリアを信じてかけ続ける!」
セシリアは大きく深呼吸押して、戦闘態勢に入る。
「フール行くよ!」
「ああ! EX治癒!!」
俺はセシリアのタイミングで魔法を行使する。
セシリアとバルべリットは同タイミングで動き出し、剣と爪がぶつかり合う。
2本の刃と鋭利な爪が弾き合い、舞踏会で踊りを踊っているかの様な闘いに見えた。
バルべリットの腕を使った軽やかな攻撃を細やかな動きで華麗に受け流すセシリア、その姿は今まで見たセシリアの戦いの中で1番洗礼された動きだった。
「私考えたの、あの時パトラが言ってた事を聞いて。あなたのその攻撃は、受けたら全ての魔法の効果を打ち消すでしょ。なら、私はあなたの攻撃に当たらなければいいのよ」
「簡単に言ってくれるじゃないか。だけど、私の動きについて来れるかな!!」
バルべリットの動きは更に激しさが増し、腕の振りが速くなってくる。
到頭、セシリアはバルべリットの攻撃を弾ききれずにセシリアの腕をバルべリットの爪が引き裂く。
「くぅ!」
セシリアの腕から血が滴る。EX治癒を施しているが、傷が癒える事はない。
「セシリア!?」
「私は大丈夫!! そのままかけ続けて!!」
「くぅ……」
俺はセシリアに言われるがまま持続詠唱を続ける。俺は見守ることしかできないのか……
「ふはは! 攻撃を喰らって仕舞えばお前の能力上昇は無に等しい!! さぁそのまま私に殺されるのだ!!」
バルべリットの言葉にセシリアはニヒルに笑う。
「それはどうかしら?」
「何?」
セシリアは巧みな早業で2本の剣を地面に突き刺し、直ぐに大太刀を抜いてバルべリットに切りつけた。
「煉獄斬!!」
炎を纏った剣はそのままバルべリットの腕を切る。
切られた腕は大きく吹き飛び、壁にぶつかって力なく落ちる。
「ば、馬鹿な!?」
「私の攻撃を喰らったわよね? なら、これでお互い様よね?」
セシリアはバルべリットの能力でフールの魔法の効果がが適応されなくなり、バルべリットは自身の能力発動が無効化された。
そう、それはバルべリットにとって終わりを表していた。
セシリアに切られたことによって悪魔化によって変貌した身体がどんどん元に戻っていく。
そして、悪魔化の体力消耗により力が入らなくなっていた。
「し、しまった……」
立ちあがろうとするも力が入らない。バルべリットは額に大量の汗を出しながら、ゆっくりと目線を上げる。
目の前にはセシリアがバルべリットの顔に向けて剣を突きつけている。
「これでお互い実力勝負……できると言いたかったけど、どうやらあなた、もう無理そうね」
肩を落として、絶望するかと思いきやバルべリットは大きく笑い出す。
「ふっふっふ……クフフ……あっはははははは!!!! はーー……そうか、私は負けるのか」
「あなたが何もしなければね」
「私にはもう何もない……強いな、流石はあのテリオンの娘だ」
「あなた知っていたの?」
「ふふふ、貴様がどう言う存在なのか私達は最初から知っていたさ。だが、まさかここまでの潜在能力を持っていたとは……完敗だ。さぁ殺せ」
セシリアは剣を納め、フールの方へと向いた。
俺は魔法詠唱をやめてセシリアに近づく。
「セシリア、どうした?」
「あの人はもう能力は使えないし、戦いの意思もない。それにこの戦いが終わってから色々聞きたいことがある。だから……ね?」
セシリアの言いたいことはわかった。きっとセシリアの優しさなのだろう。
俺は何も言わずに首を縦に振った。
すると、セシリア嬉しそうに笑みを浮かべ尻尾を振る。
「ぐはぁあああああ!!!!」
目を離していた隙に突然バルべリットの断末魔が聞こえる。
俺たちがバルべリットの方へ向くとバルべリットの胸がウィーンドールの腕によって貫かれていた。
「この使えない雌豚が!」
ウィーンドールの手にはバルべリットの心臓が握られていた。
「か、かはっ……」
バルべリットは力なく倒れる
「バルべリット!! あなた仲間を……どうして!?」
ウィーンドールはセシリアの言葉を無視して、バルバドスに駆け寄る。
「バルバドス様、プランを変えましょう。私の身体とあの雌豚の心臓を貴方に捧げます。元々の力を引き出せるかは分かりませんが、どうか私達の思いを受け取って下さいますか?」
ウィーンドールの言葉を聞いたバルバドスはウィーンドールを抱き寄せる。
「ああ、バルバドス様……」
そしてバルバドスはウィーンドールの首に噛み付く。
ウィーンドールは声を上げることなく、最後の最後までバルバドスにしがみつき、自身の最期を終えた。
一方でバルバドスはフール達の目の前でウィーンドールの肉を喰らい、バルべリットの心臓もデザートの用に平らげた。
口の周りを血で染めたバルバドスは懐から液体が入った4本の瓶を撮り出す。それぞれ、赤、白、緑、青色の液体が入っている。バルバドスはそれを一気に飲み干す。
「まさか、儀式を……」
セシリアが小さく呟く。
俺たちはバルバドスが変貌して行く姿を見ている事しかできなかった。
バルバドスは苦しそうな雄叫びを上げながら、自身の服を脱ぐ。バルバドスの身体の内から何かが出てくるかの様に骨格が疼き、動き回る。そして骨がボキボキとなり、骨格が変形し、どんどん肥大化していく。首が8つに生え、どんどんと伸びる。腕や足はぐちゃぐちゃと気持ち悪い音をたてながらどんどん巨大化して行く。
俺たちの目線がどんどん上へ上へと上がっていき、最終的にバルバドスはその姿形が原型が何かを忘れてしまう程に変化してしまったのだった。
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