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最終章 奈落ノ深淵編
第149話 断罪
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血走った眼で人々は殺し合いをしている。これは最早戦争ではない。ただただ狂ったもの達が心無しにただ闇雲に命を刈り続ける連鎖を繰り返すだけの場所になっている。
死体が地面に転がり、それを踏みつけ転んでも武器を離すことはない。人々が倒れ行く光景をヴェルゼーブは横になって眺めていた。
周りとは打って変わり、彼女は呑気に大きく口を開いて、欠伸を見せる。
「長い、退屈」
彼女は立ち上がり、周囲を見まわした。
すると、目線の先から戦場へ向かって来ようとしている2つの陰が見えた。目を凝らしてよく見るとその陰は馬だった。2頭の馬の上にそれぞれ騎乗する者達が見えた。騎士の姿の女と大柄な女だ。
ヴェルゼーブは興味を示すように立ち上がり、その2人の方へと向かった。
2頭の馬が戦場の中へと着くと、2人は馬から降り立つ。
「ライナ、あれを頼む」
「はいよ」
ライナは大きく深呼吸をし、集中力を高め、身体中にゆっくりと力を集める。
ライナの身体が徐々に発光してくると用意が出来た証拠だ。ライナは空へと拳を高く舞上げると大きく叫んだ。
「高く昇りやがれ! 【気炎万丈】!!」
ライナが叫ぶと共にライナの内に秘められたエネルギーが球の形へと具現化し、空へと打ち上げられる。球は眩い光を放ち、この戦場全体を太陽の光の様に照らした。
照らされた者たちは皆一度戦いの手を止め、光の方へと眼を向ける。
球から放たれる光が体に照らされ、瞳へと入ると、戦っていた者たちの瞳は光を取り戻した。
「あ、あれ? 俺は一体何を?」
1人の戦士が我に返るとそれに連鎖するように皆々が正気を取り戻して行く。狂気に陥っていた時の記憶は覚えていないようだった。正気を取り戻してから見た周りの惨状には誰しもが衝撃を受けていた。
だが、1人この様子を別の意味で驚いている者が1名いる。
「え? え? なんで?」
ヴェルゼーブは慌てふためきながら、周りをキョロキョロとしている。
「ヴェルゼーブ、久しぶりだな」
「お前、カタリナ! 一体何した!?」
「貴様がこの戦場にいる者たちを支配し、殺し合いをさせたのだろう」
「だから、あたいらが目を覚まさせてやったって事だ」
「ぐぬぬぅ! だ、だけどまたかけてやれば良いだけだ!」
ヴェルゼーブはまた紫色の円を生み出し、オーラを解き放つ。全員がまたしてもそのオーラを浴びてしまった。
「くっくっく、さぁ! さぁさぁ!! 殺し合えぇ~~!」
ヴェルゼーブはそう言うが、誰もが殺し合おうとはしなかった。全員が何が起こったのか分からない様子だった。
「な、何で……何で何で何で!?」
パニックになるヴェルゼーブの前に余裕そうに、胸を張ってライナが歩いてくる。
「ばーーか、お前の能力なんてもう効かないんだよ! このあたいがいるからな!」
「ななな、何だって!?」
「上見てみろ上」
ライナは空に指を向ける。もちろんその先にあるのはライナの作った擬似太陽だ。ライナの能力は能力向上の他にも状態異常から身を守る力を持っているらしい。
「あ、あんなのに、わたわた、私の能力が……」
尻餅をついて絶望するヴェルゼーブの周りに敵味方関係無しに操られていた者たちが取り囲む。
「このガキ、よくもやってくれたな!」
「私たちの仲間を良くも!」
「こんなの戦争どころか趣旨が変わってるだろ!」
そう言いながら、武器を持ってヴェルゼーブへとにじりよって行く。
「わわわ! 来るな! 来るなぁ!」
ヴェルゼーブは周りの者たちへ精神支配を試みるがやはり効くことはなく、どんどん距離が縮んで行く。
ヴェルゼーブは到頭、土下座をしながら懇願し始めた。
「わわわ、悪かった。悪かったから許せ! いや、許してください!」
勿論、そんな謝罪で罪が償われるわけが無いと皆が平等に思った。しかし、いざ頭をここまで下げられると攻撃を躊躇してしまうのが人間だ。それに、見た目も幼いので戦士や騎士たちは少しだけ踏みとどまってしまっていた。
「私がやろう」
集団の中を割って前へと出てきたのはカタリナだ。カタリナはゆっくりとヴェルゼーブの前へと出る。
「おい、取り押さえておけ」
近くの者へそう告げると2人の戦士はすぐにカタリナの言う事聞いて、ヴェルゼーブの腕を掴んで拘束する。
「うぅ……何をするぅ」
ヴェルゼーブは最早半泣きだった。これまであの能力を使って人々を支配しておもちゃの様に扱って良い気になっていたのだろう。だが、能力が効かないのであればただの幼い子供同然だ。
カタリナは腰の剣を引き抜く。
「今から、この者を騎士の作法にしたがって処刑する。異議のある者は今すぐに申し立てよ」
群衆は周りを互いに見合わせ、様子を伺うが意義あるものなど居ない。
「やってくれ」
1人の騎士がそう言った。
「俺たちは確かに戦争をしていた。けど、俺たちの手で仲間を殺す事はおかしい事だろ? それを、良くもやりやがって……畜生!!」
「そ、そうだ! 戦争と仲間内の殺し合いは違う!」
1人が口を開くとそれに連鎖して、群衆達が声を上げる。
その群衆の声が大きくなると共にカタリナの剣が光出す。
「これは……」
カタリナは思い出す。ノンナとの戦いの際に、胸の内で何かが弾けた様な感じがした。それは能力が発現したのを表していたのだ。
光が強くなる剣をヴェルゼーブの首に向ける。
「これより、四大天ヴェルゼーブを人間の尊厳を損なう行為、及び私情による大量虐殺の罪で処刑を開始する」
「ま、待て! 待て待て待て待て!!!!」
「【断罪】!」
カタリナはヴェルゼーブへ剣を振るう。
剣は真っ直ぐ振り落とされ、ヴェルゼーブの首を掻き切る。その瞬間、剣に纏っていた光がヴェルゼーブの身体全体を包み込み、大きな光の柱が生まれた。
光の中でヴェルゼーブは浄化され、天に昇る様に消えて行く。
ヴェルゼーブの身体が跡形もなく消え去った頃、光の柱は消えた。
「お、おい、カタリナ大丈夫か?」
ライナの心配を他所にカタリナは群衆へ向けて声を上げた。
「皆の者! これ以上の戦争は無意味だ! お前達はバルバドスの捨て駒として使われているだけなのだ! お前達の信じているバルバドスはいずれ用済みになれば殺す。お前達を言葉巧みに操って自分達の良い様にしていたのだ!! それに、もうすぐ答えは出る」
バルバドス軍の騎士達もざわつきを見せていた。
そして、1人の騎士が武器を捨て、両腕を上げながらカタリナへと向かってくる。
「もう、俺達を指示するものは居ない。皆、散っていた。それにさっきの事で目が覚めた。俺たちは何の為に戦っていたのだろうと。まさか、最初から俺たちを殺す気でいた者の元で戦っていたと考えたら……騙されていたんだなと……」
勇気ある1人の騎士の後ろで、バルバドス軍の群衆は一気に武器を捨て、降伏する。
「目が覚めてよかった。皆の者、この者達を連れて行け」
同盟軍の戦士達にカタリナは指示すると、降伏したバルバドス軍達を拘束し、キャンプへと先導し始めた。
ほっと一息した時、後ろから肩を回される。
「やったじゃねぇかリーダー」
「お前もお疲れ様だ」
カタリナはライナの頭を撫でると、照れた様に離れる。
「うわわ! 子供扱いはやめろって! ……あたいももう疲れたぜ」
「そうだな、私達も引き上げるか。後は、彼らに任せる」
「……まぁ、あいつらならきっと大丈夫だろうな」
「そう信じるしか無い、さぁ戻るぞ」
「……おう」
2人は再び馬へと騎乗し、先導者達共にゆっくりと戦場を後にした。
こうして、バルバドス軍の指揮者壊滅により、戦争はバルバドス軍の降伏で幕を閉じた。
死体が地面に転がり、それを踏みつけ転んでも武器を離すことはない。人々が倒れ行く光景をヴェルゼーブは横になって眺めていた。
周りとは打って変わり、彼女は呑気に大きく口を開いて、欠伸を見せる。
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彼女は立ち上がり、周囲を見まわした。
すると、目線の先から戦場へ向かって来ようとしている2つの陰が見えた。目を凝らしてよく見るとその陰は馬だった。2頭の馬の上にそれぞれ騎乗する者達が見えた。騎士の姿の女と大柄な女だ。
ヴェルゼーブは興味を示すように立ち上がり、その2人の方へと向かった。
2頭の馬が戦場の中へと着くと、2人は馬から降り立つ。
「ライナ、あれを頼む」
「はいよ」
ライナは大きく深呼吸をし、集中力を高め、身体中にゆっくりと力を集める。
ライナの身体が徐々に発光してくると用意が出来た証拠だ。ライナは空へと拳を高く舞上げると大きく叫んだ。
「高く昇りやがれ! 【気炎万丈】!!」
ライナが叫ぶと共にライナの内に秘められたエネルギーが球の形へと具現化し、空へと打ち上げられる。球は眩い光を放ち、この戦場全体を太陽の光の様に照らした。
照らされた者たちは皆一度戦いの手を止め、光の方へと眼を向ける。
球から放たれる光が体に照らされ、瞳へと入ると、戦っていた者たちの瞳は光を取り戻した。
「あ、あれ? 俺は一体何を?」
1人の戦士が我に返るとそれに連鎖するように皆々が正気を取り戻して行く。狂気に陥っていた時の記憶は覚えていないようだった。正気を取り戻してから見た周りの惨状には誰しもが衝撃を受けていた。
だが、1人この様子を別の意味で驚いている者が1名いる。
「え? え? なんで?」
ヴェルゼーブは慌てふためきながら、周りをキョロキョロとしている。
「ヴェルゼーブ、久しぶりだな」
「お前、カタリナ! 一体何した!?」
「貴様がこの戦場にいる者たちを支配し、殺し合いをさせたのだろう」
「だから、あたいらが目を覚まさせてやったって事だ」
「ぐぬぬぅ! だ、だけどまたかけてやれば良いだけだ!」
ヴェルゼーブはまた紫色の円を生み出し、オーラを解き放つ。全員がまたしてもそのオーラを浴びてしまった。
「くっくっく、さぁ! さぁさぁ!! 殺し合えぇ~~!」
ヴェルゼーブはそう言うが、誰もが殺し合おうとはしなかった。全員が何が起こったのか分からない様子だった。
「な、何で……何で何で何で!?」
パニックになるヴェルゼーブの前に余裕そうに、胸を張ってライナが歩いてくる。
「ばーーか、お前の能力なんてもう効かないんだよ! このあたいがいるからな!」
「ななな、何だって!?」
「上見てみろ上」
ライナは空に指を向ける。もちろんその先にあるのはライナの作った擬似太陽だ。ライナの能力は能力向上の他にも状態異常から身を守る力を持っているらしい。
「あ、あんなのに、わたわた、私の能力が……」
尻餅をついて絶望するヴェルゼーブの周りに敵味方関係無しに操られていた者たちが取り囲む。
「このガキ、よくもやってくれたな!」
「私たちの仲間を良くも!」
「こんなの戦争どころか趣旨が変わってるだろ!」
そう言いながら、武器を持ってヴェルゼーブへとにじりよって行く。
「わわわ! 来るな! 来るなぁ!」
ヴェルゼーブは周りの者たちへ精神支配を試みるがやはり効くことはなく、どんどん距離が縮んで行く。
ヴェルゼーブは到頭、土下座をしながら懇願し始めた。
「わわわ、悪かった。悪かったから許せ! いや、許してください!」
勿論、そんな謝罪で罪が償われるわけが無いと皆が平等に思った。しかし、いざ頭をここまで下げられると攻撃を躊躇してしまうのが人間だ。それに、見た目も幼いので戦士や騎士たちは少しだけ踏みとどまってしまっていた。
「私がやろう」
集団の中を割って前へと出てきたのはカタリナだ。カタリナはゆっくりとヴェルゼーブの前へと出る。
「おい、取り押さえておけ」
近くの者へそう告げると2人の戦士はすぐにカタリナの言う事聞いて、ヴェルゼーブの腕を掴んで拘束する。
「うぅ……何をするぅ」
ヴェルゼーブは最早半泣きだった。これまであの能力を使って人々を支配しておもちゃの様に扱って良い気になっていたのだろう。だが、能力が効かないのであればただの幼い子供同然だ。
カタリナは腰の剣を引き抜く。
「今から、この者を騎士の作法にしたがって処刑する。異議のある者は今すぐに申し立てよ」
群衆は周りを互いに見合わせ、様子を伺うが意義あるものなど居ない。
「やってくれ」
1人の騎士がそう言った。
「俺たちは確かに戦争をしていた。けど、俺たちの手で仲間を殺す事はおかしい事だろ? それを、良くもやりやがって……畜生!!」
「そ、そうだ! 戦争と仲間内の殺し合いは違う!」
1人が口を開くとそれに連鎖して、群衆達が声を上げる。
その群衆の声が大きくなると共にカタリナの剣が光出す。
「これは……」
カタリナは思い出す。ノンナとの戦いの際に、胸の内で何かが弾けた様な感じがした。それは能力が発現したのを表していたのだ。
光が強くなる剣をヴェルゼーブの首に向ける。
「これより、四大天ヴェルゼーブを人間の尊厳を損なう行為、及び私情による大量虐殺の罪で処刑を開始する」
「ま、待て! 待て待て待て待て!!!!」
「【断罪】!」
カタリナはヴェルゼーブへ剣を振るう。
剣は真っ直ぐ振り落とされ、ヴェルゼーブの首を掻き切る。その瞬間、剣に纏っていた光がヴェルゼーブの身体全体を包み込み、大きな光の柱が生まれた。
光の中でヴェルゼーブは浄化され、天に昇る様に消えて行く。
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「お、おい、カタリナ大丈夫か?」
ライナの心配を他所にカタリナは群衆へ向けて声を上げた。
「皆の者! これ以上の戦争は無意味だ! お前達はバルバドスの捨て駒として使われているだけなのだ! お前達の信じているバルバドスはいずれ用済みになれば殺す。お前達を言葉巧みに操って自分達の良い様にしていたのだ!! それに、もうすぐ答えは出る」
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そして、1人の騎士が武器を捨て、両腕を上げながらカタリナへと向かってくる。
「もう、俺達を指示するものは居ない。皆、散っていた。それにさっきの事で目が覚めた。俺たちは何の為に戦っていたのだろうと。まさか、最初から俺たちを殺す気でいた者の元で戦っていたと考えたら……騙されていたんだなと……」
勇気ある1人の騎士の後ろで、バルバドス軍の群衆は一気に武器を捨て、降伏する。
「目が覚めてよかった。皆の者、この者達を連れて行け」
同盟軍の戦士達にカタリナは指示すると、降伏したバルバドス軍達を拘束し、キャンプへと先導し始めた。
ほっと一息した時、後ろから肩を回される。
「やったじゃねぇかリーダー」
「お前もお疲れ様だ」
カタリナはライナの頭を撫でると、照れた様に離れる。
「うわわ! 子供扱いはやめろって! ……あたいももう疲れたぜ」
「そうだな、私達も引き上げるか。後は、彼らに任せる」
「……まぁ、あいつらならきっと大丈夫だろうな」
「そう信じるしか無い、さぁ戻るぞ」
「……おう」
2人は再び馬へと騎乗し、先導者達共にゆっくりと戦場を後にした。
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