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最終章 奈落ノ深淵編
第140話 シュリン VS ”蛇ノ女王”ロノウェーザ
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血気狂た戦士たちが戦を行っている最中、巨竜も乱入し、戦場はさらに激しさを見せている。そんな最中異様なオーラによってそんな戦士たちですら近づくことを避ける2人の女だけの戦場が作られていた。
巨竜の足元でお互い静かに構える。巨竜の大地を踏みしめる音すらも気にも留めない2人は正に2人だけの世界に入っていた。
1人は愛する者を仇を討つため、もう1人は愛する者の使命を手助けするために。
「来なさいシュリン、私に”元”S級冒険者の実力を見せてくれないかしら?」
「上等よ。もうすぐあなたは私の炎に焼かれて死ぬのよ」
「あら、それはこちらの台詞ではなくて?」
お互い煽り会っている間も、シュリンとロノウェーザは魔力を溜めていた。先に仕掛けたのシュリンであった。
「”大火球”!!」
真っすぐ放たれた大きな火の玉はそのままロノウェーザに直撃した。しかし、ロノウェーザの手のひらに広がった魔方陣によって魔法を受け止められていた。
「私の魔法障壁すら壊せないなんて話にならないわね、火球って言うのはこうやるのよ!!」
ロノウェーザは大杖をシュリンへ向けると、シュリンの生み出した大火球よりも二回りも大きいサイズの火の玉が生み出され投擲される。
シュリンも魔法障壁を張り、その火球を受け止める。しかし、強力な威力によってシュリンは体ごと押し返されてしまう。
「くぅうっ!!」
シュリンも何とか足で踏ん張って無理やりその火球を受け止めた。火球が消えた頃には立っていた距離から50m程移動してしまっていた。
「因みに今のは大火球ではないわ、火球よ」
「なんですって?」
さっきのがただの火球だとすればフールには怠るものの膨大な魔力量を持っていると言う事になる。
シュリンは立ち上がり、次なる魔法詠唱の準備をする。
「あなた、得意なんでしょう? 炎魔法が。実は私も得意でしてね。こんな芸当もこなせちゃうの」
ロノウェーザの杖の上には火球と氷塊、2つの相反する属性の玉が生まれた。そして、ロノウェーザはその2つの魔法を組み合わせると、メラメラと真っ黒に染まった炎が完成された。
「熱を吸い尽くす。冷たい炎……"黒火球"」
「熱を奪う?」
「この意味、その身体で味わう事ね!!」
ロノウェーザは黒火球をシュリンへ投擲する。
「火炎槍!!」
勿論、シュリンは直ぐに行使できる魔法で抵抗を試みる。
シュリンの魔法がロノウェーザの黒火球に直撃し、相殺されるものだと思っていた。しかし、それは違った。何と、黒魔法はシュリンの魔法を飲み込んだのだ。そして、一方的にこちらへ飛んでくる。
シュリンは魔法障壁を使用せず、身体を伏せて身を守る。黒火球が地面へ直撃すると着弾地点の地面の熱が奪われ、抉れていた。
こんなものを体で食らってはひとたまりもない。しかし、だからと言って抵抗する手段もない。
シュリンはすぐに立ち上がって、何か策が無いかと考える時間を生むために走り出した。
「あら? もうギブアップかしら、でも容赦はしないよ!」
ロノウェーザは黒火球を複数個生み出すと、シュリンへと向かって投擲を続けた。
シュリンは必死で避ける。自身の魔法障壁では恐らく突破されてしまうので自力で魔法を避けなければならなかった。
当たれば死ぬ……何か、何か方法は無いのか? そう考えていた時、最後の一球がシュリンの右足に着弾し、シュリンは地面に倒れ転がりもがいた。
「あぁああああ!!!!」
黒火球の当たった足から熱が奪われ、低温火傷によって足がボロボロになった。何とか立ち上がろうとするも、足には激痛が走る。
「くぅ……ダ、ダレン」
シュリンがはいずりながらも地面を進んでいくとある地点に到達した。それは、ダレンが呪いの鎧によって破裂した場所だった。何もないと思っていたその場所に何かきらりと光るものが落ちていた。
シュリンはそれを取る。それは絵を埋め込むことができるロケットペンダントだった。横のボタンを押すことで蓋が取れて中の絵が見られる仕掛けのペンダントだ。
シュリンは横のボタンを押すと、そこにはシュリンの自画像が埋め込まれていた。
そう、ダレンは呪いの鎧によって自我を失ってもシュリンの事を忘れないようにしていたのだ。それを知ったシュリンから大粒の涙が流れる。
「ああ……ああダレン……」
悲しみに浸るシュリンの後ろで、ニヒルに笑うロノウェーザが迫っていた。
「ふふふ、まったく馬鹿な男だ。自分の力を求めたくせに、愛する女も忘れることができないなんて。本当、強欲な男。最後の最後まで、無様だったわ」
ロノウェーザの言葉がシュリンの胸に突き刺さる。その時、シュリンの怒りの器が割れた。シュリンは激痛に耐えながらゆっくりと立ち上がる。
「お前は……お前だけは」
ロノウェーザはまたしても黒火球を生み出す。今回のはいつもより大きく、黒い火の粉が激しく燃え滾っていた。
「死んで無様な男の元へと向かいな!!」
ロノウェーザが黒火球をシュリンへ向け投擲する。その火球はシュリンへと真っすぐ飛んで行き、直撃は確実だった。
しかし、シュリンに当たる直前、紙一重で黒火球が縮み、消滅した。
「な、何ですって!? 私の黒い炎が……は!?」
ロノウェーザがシュリンを見ると、シュリンの身体には青白いオーラがメラメラと生み出されていた。まるで青い炎が立つように。
「絶対に、許さない……!」
シュリンの涙が体中を包む青い炎によって蒸発していく。涙が消えたシュリンの目は再び真っすぐロノウェーザへと向かれていた。
巨竜の足元でお互い静かに構える。巨竜の大地を踏みしめる音すらも気にも留めない2人は正に2人だけの世界に入っていた。
1人は愛する者を仇を討つため、もう1人は愛する者の使命を手助けするために。
「来なさいシュリン、私に”元”S級冒険者の実力を見せてくれないかしら?」
「上等よ。もうすぐあなたは私の炎に焼かれて死ぬのよ」
「あら、それはこちらの台詞ではなくて?」
お互い煽り会っている間も、シュリンとロノウェーザは魔力を溜めていた。先に仕掛けたのシュリンであった。
「”大火球”!!」
真っすぐ放たれた大きな火の玉はそのままロノウェーザに直撃した。しかし、ロノウェーザの手のひらに広がった魔方陣によって魔法を受け止められていた。
「私の魔法障壁すら壊せないなんて話にならないわね、火球って言うのはこうやるのよ!!」
ロノウェーザは大杖をシュリンへ向けると、シュリンの生み出した大火球よりも二回りも大きいサイズの火の玉が生み出され投擲される。
シュリンも魔法障壁を張り、その火球を受け止める。しかし、強力な威力によってシュリンは体ごと押し返されてしまう。
「くぅうっ!!」
シュリンも何とか足で踏ん張って無理やりその火球を受け止めた。火球が消えた頃には立っていた距離から50m程移動してしまっていた。
「因みに今のは大火球ではないわ、火球よ」
「なんですって?」
さっきのがただの火球だとすればフールには怠るものの膨大な魔力量を持っていると言う事になる。
シュリンは立ち上がり、次なる魔法詠唱の準備をする。
「あなた、得意なんでしょう? 炎魔法が。実は私も得意でしてね。こんな芸当もこなせちゃうの」
ロノウェーザの杖の上には火球と氷塊、2つの相反する属性の玉が生まれた。そして、ロノウェーザはその2つの魔法を組み合わせると、メラメラと真っ黒に染まった炎が完成された。
「熱を吸い尽くす。冷たい炎……"黒火球"」
「熱を奪う?」
「この意味、その身体で味わう事ね!!」
ロノウェーザは黒火球をシュリンへ投擲する。
「火炎槍!!」
勿論、シュリンは直ぐに行使できる魔法で抵抗を試みる。
シュリンの魔法がロノウェーザの黒火球に直撃し、相殺されるものだと思っていた。しかし、それは違った。何と、黒魔法はシュリンの魔法を飲み込んだのだ。そして、一方的にこちらへ飛んでくる。
シュリンは魔法障壁を使用せず、身体を伏せて身を守る。黒火球が地面へ直撃すると着弾地点の地面の熱が奪われ、抉れていた。
こんなものを体で食らってはひとたまりもない。しかし、だからと言って抵抗する手段もない。
シュリンはすぐに立ち上がって、何か策が無いかと考える時間を生むために走り出した。
「あら? もうギブアップかしら、でも容赦はしないよ!」
ロノウェーザは黒火球を複数個生み出すと、シュリンへと向かって投擲を続けた。
シュリンは必死で避ける。自身の魔法障壁では恐らく突破されてしまうので自力で魔法を避けなければならなかった。
当たれば死ぬ……何か、何か方法は無いのか? そう考えていた時、最後の一球がシュリンの右足に着弾し、シュリンは地面に倒れ転がりもがいた。
「あぁああああ!!!!」
黒火球の当たった足から熱が奪われ、低温火傷によって足がボロボロになった。何とか立ち上がろうとするも、足には激痛が走る。
「くぅ……ダ、ダレン」
シュリンがはいずりながらも地面を進んでいくとある地点に到達した。それは、ダレンが呪いの鎧によって破裂した場所だった。何もないと思っていたその場所に何かきらりと光るものが落ちていた。
シュリンはそれを取る。それは絵を埋め込むことができるロケットペンダントだった。横のボタンを押すことで蓋が取れて中の絵が見られる仕掛けのペンダントだ。
シュリンは横のボタンを押すと、そこにはシュリンの自画像が埋め込まれていた。
そう、ダレンは呪いの鎧によって自我を失ってもシュリンの事を忘れないようにしていたのだ。それを知ったシュリンから大粒の涙が流れる。
「ああ……ああダレン……」
悲しみに浸るシュリンの後ろで、ニヒルに笑うロノウェーザが迫っていた。
「ふふふ、まったく馬鹿な男だ。自分の力を求めたくせに、愛する女も忘れることができないなんて。本当、強欲な男。最後の最後まで、無様だったわ」
ロノウェーザの言葉がシュリンの胸に突き刺さる。その時、シュリンの怒りの器が割れた。シュリンは激痛に耐えながらゆっくりと立ち上がる。
「お前は……お前だけは」
ロノウェーザはまたしても黒火球を生み出す。今回のはいつもより大きく、黒い火の粉が激しく燃え滾っていた。
「死んで無様な男の元へと向かいな!!」
ロノウェーザが黒火球をシュリンへ向け投擲する。その火球はシュリンへと真っすぐ飛んで行き、直撃は確実だった。
しかし、シュリンに当たる直前、紙一重で黒火球が縮み、消滅した。
「な、何ですって!? 私の黒い炎が……は!?」
ロノウェーザがシュリンを見ると、シュリンの身体には青白いオーラがメラメラと生み出されていた。まるで青い炎が立つように。
「絶対に、許さない……!」
シュリンの涙が体中を包む青い炎によって蒸発していく。涙が消えたシュリンの目は再び真っすぐロノウェーザへと向かれていた。
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