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第2章 森林炎上編

第42話 ”炎神”朱雀討伐戦①

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 全員が朱雀に向けて戦闘態勢の構えをとる。朱雀も興奮状態になっており、さっきまでの冷静な状態が嘘だったかの様に奇声を上げながら空を滑空していた。
 そして、朱雀は俺たちの上空を飛び回り、体から飛び散る火の粉を撒き散らす。この火の粉は物体に着弾すると爆発するという朱雀が頻繁に行う攻撃だ。しかし、その攻撃はもう対策済みである。

「”防護結界プロテクトシールド”展開します!!」

 ルミナが真上に盾を構えると俺たちに青い結界が覆う。そして、火の粉がその結界に着弾し、攻撃をかき消すことによって爆発から俺たちを守ってくれた。

「セシリア! 行くぞ!! ”EX治療エクストラヒール”!!」

 俺が魔法を唱え、セシリアの身体に光のオーラが纏った。

「これでもう一回攻撃よ!!」

「セシリー!! 飛ばすよ!!」

「EX治療も使えるのか!?」

 カタリナの驚いた言葉よりも先にセシリアはルミナの盾に登る。そして、ルミナは空中にいる朱雀の元へとセシリアを飛ばした。

「行くよ!! ”盾打撃シールドバッシュ”!!」

 飛ばされたセシリアは冷気が宿る二刀の刀でもう一度斬りかかる。セシリアの狙いは勿論、朱雀の翼である。

「もう一度……”二重氷結斬ブリザードスラッシュ”!!」

 セシリアの攻撃は朱雀の左翼へと命中すると、EX治療の攻撃力強化の能力によってさっきよりも軽々と羽に刃が通り、そのまま切り落とした。
 切り落とされた、朱雀の羽は地面に落ちる。しかし、羽は即座に消え、朱雀の傷口からまた新しい羽が生み出されようとしていた。

「再生が速すぎる……これじゃ私がいくら攻撃したって意味ないじゃない!」

 セシリアが着地し、定位置に戻ったとき後方から風を切るような速度で駆けていた者がいた。

「なら! 再生する前にもう一個の翼もひきちぎってやらぁあああ!!」

 朱雀に向かって1人先行していったのはライナだった。

「おい回復術士!! あたいにもその『えくすとらなんちゃら』かけろ!!」

「分かった! セシリア、詠唱対象を変えるから気をつけろ!!」

 俺はEX治癒の対象をセシリアからライナへ変える。

「おいおい……何だこりゃ……? 感じたことのねぇ力があふれて来やがる!!」

 ライナは走りながら、自身に溢れてくる力を感じながらニヒルに笑うと、朱雀に向かって恐れず駆け走っていく。
 そして、朱雀の真下に到着した時、自身の足を獣足へと発達させて飛び上がる。獣化した足によって脅威の跳躍力を見せ、朱雀の元へと届いた。

「あたいの特殊能力『身体獣化ワイルドグロース』は応用が利くんだ! 見せてやるよ……”剛身変異ガードモード”!」

 ライナの変異した右手の毛並みが黒く変色すると、獣の毛が一気に硬化する。

「この腕……溶かせるもんなら溶かしてみやがれ!!」

 ライナはその右手を朱雀の右翼を切り裂くように大きく振り下ろした。ライナの腕が羽に触れたとき、溶けることは無かった。

「おいおい! 溶けると思ってたがこいつはすげぇ!! おらぁあああああ!!!!」

 ライナは羽に貫通したままの腕をそのまま振り下ろし切り、朱雀の翼を黒光りした爪で切り落とした。
 2つの翼を失った朱雀は翼が再生される前に地面へと落下する。それに合わせてライナも地面に着地を決める。
 これで朱雀は片方の翼が再生されても直ぐには飛ぶことは出来なくなった。この瞬間が絶好のチャンスだ。
 しかし、朱雀の身体を武器で攻撃すると武器の耐久を超える温度によって攻撃が無効化され、武器も溶かされてしまう。
 遠くから、属性攻撃が出来る者はあいつしかいない。

「ソレーヌ!! 今だ!! 身体を狙え!!」

「は、はい!!」

 ソレーヌの魔導弓ならば氷属性を付与させ、矢を打ち込めば朱雀を倒せるはずだ。
 ソレーヌは魔導弓に魔力を込めると光の矢が生まれ、地面で暴れている朱雀の身体に魔方陣が浮かび上がった。

「捉えました!!」

「では、お願いします!!”属性付与エレメンタルグロウ”!」

 セインがソレーヌに魔法をかけると、魔導弓は冷気を纏い、氷属性が付与された。
 ソレーヌは生み出された矢を力一杯引き絞り、呼吸を整える。一本の矢を外さぬよう集中を途切れさせない。
 そして、その一本の矢を離した。

「貫け!! ”氷結トワイライト一閃光魔弾フラッシュ”!!」

 ソレーヌが生み出した矢は激しい光を出しながら勢いよく飛び出し、朱雀の腹へと向かっていく。
 そして、回避することもままならない朱雀にその光が命中した。光の矢が朱雀の中ヘと入り、身体を貫通しようとした瞬間、冷気を纏った光の矢が身体を貫通するもう一歩のところで溶けるように蒸発し、消えてしまった。

「そ、そんな……どうして!?」

「光の矢が……溶けた?」

 俺は酷く驚いたが一番驚いていたのはソレーヌである。ソレーヌが膝から崩れ落ちて、絶望に陥ったような顔に変わった。
 ソレーヌの攻撃が失敗に終わり、朱雀の羽も再生されてしまった。朱雀は怒り、飛び回って暴れ回ると思いきやその場で羽を折りたたみ、身体を丸くする構えをとった。すると、朱雀の身体の中心にある炎がどんどん赤みを増していく。

 この時、俺は何だか嫌な予感がした……

「ルミナ!! 結界を展開しろ!!」

「は、はい! わかりまし……」

 俺が大声で叫び、ルミナに指示を出していたその時、丸くなっていた朱雀が羽を一気に開き、身体を全員に見せつけるかのように出すと、部屋全体に高熱の熱風を解き放った。
 ルミナの結界が展開される前に攻撃されてしまったため、その熱波をもろに食らってしまうことになる。

「きゃああああああ!!!!」

「セシリ……いやぁああああ!!」

「くっ……!!」

 俺は後衛から前に出て助けようと走ったが中衛まで来た時点で前衛の3人が熱風に巻き込まれてしまった。熱風は目で視認できるほど色が濃かった。それ程、温度が高いという事である。その熱風に包まれた瞬間に前衛3人の様子を目視することが出来なくなってしまったのだ。

「セシリア!! ルミナ!! カタリナ!!」

「クソがっ!!」

 間に合わなかった……そう思っている間にも中衛にも熱波は襲いかかってきていた。ライナは咄嗟に腕を硬化させて身を守る構えを取っていたが、ソレーヌは攻撃に失敗したショックからへたり込んだまま回避行動もとろうとはしない。ただ、呆然と座っているだけのソレーヌを俺は庇うように抱きしめ、熱波から守ろうとした

「大丈夫だソレーヌ!!!!!! ”完全治癒パーフェクトヒール”!!」

「フール……さん?」

 今にも熱風がこちらに押し寄せて迫って来ている……前衛職とは違い防御力の低い後衛の装備でこの熱を食らってしまったら恐らく俺の身体はひとたまりも無いだろう。俺は咄嗟に自身に魔法をかけたが、ダメージを食らったときに俺が倒れずに詠唱し続けることができるかは分からない。しかし、ここで守らなくてどうする? 守りたい、守らなくてはいけない……覚悟を決めろ俺……

 そして、とうとう俺の元に濃い色をした熱風が届いてしまった。

「フールさん!!」

「ちょ!? 化け物回復術士!!」

セインとサラシエルが俺に向かって叫ぶ。

 頼む……奇跡よ起きてくれ!!

 俺は覚悟を決めて目を閉じた。
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