上 下
37 / 160
第2章 森林炎上編

第35話 ヒーラー、SS級ダンジョン”朱雀の根城”に挑む

しおりを挟む
 俺たちは草木を掻き分け、カタリナ達が向かったダンジョンを探している。幸いにもカタリナが草を踏んでできた痕跡が少し残っていたのでそれを辿っていくことができた。
 そうして、辿っていくと地面が隆起し、地下への道がある洞穴を見つけた。どうやらここが四神のいるダンジョンだ。四神が居るのならばダンジョンの難易度は跳ね上がり、SS級ダンジョンとなる。

 SS級になるとフロアにいる魔物がボスクラスの魔物がうろつくようになる。だから、普通に戦うとボスラッシュの様になり、効率が悪く、こちらの体力も奪われていく。しかし、その代わり、宝はS級ダンジョンよりも多く得られることができる。そんなハイリスクハイリターンなダンジョンなのだ。勿論、魔物と戦わずに進む事はできるのだが、そんな事が意図的にできれば苦労はしないのだ。

「さぁ、ダンジョンに入るぞ。みんな良いな?」

「ここまで来たんだから、引くわけには行かないわよ」

「私も、みんなの役に立ちたいです!」

「私の仲間の為に戦います!」

 皆の覚悟を確認し、俺たちはとうとうダンジョンの中へと潜った。

 ダンジョン内には松明が一定間隔で置かれており、見通しがまあまあ良くなっている。どうやらカタリナのパーティが先に向かっていると言う事だ。しかし、一度通った道が安全であると言うわけではない。ここは……

「セシリア、またお前の鼻で危険感知を頼めるか?」

「任せて! クンクン……」

 鼻の効くセシリアを前に出し、魔物の気配を見ながら進んでいくことにした。ゆっくりと進んでいくと別れ道にやってきた。右の道には松明が置かれているが、左の道は手がつけられていない様子だった。
 普通なら開拓されている道の方が安全であると感じるが、セシリアがその道の向こうを見て、疑問に思っていた。

「何か……変だわ」

「どうしたのセシリー?」

「左の匂いは何もしない、魔物の気配もない。でも、右の道からは点々と魔物の匂いがする。あ、一つ消えた」

 点々と言う事はつまり魔物が複数体いる、そしてリアルタイムで臭いが消えると言う事はつまり……

「もしかしたら交戦中かもしれない! みんな行くぞ!」

 もしかしたら、ボスクラスに手を焼いているかもしれないと、急いで右の道へと向かった。その道を駆けていくと物音が聞こえてくる。この先にやっぱりいる……S級パーティでさえこのダンジョンに苦戦する筈だ。
 駆けていく先に最初の部屋があり、その部屋へと駆け込む。

「大丈夫……か?」

 その部屋に入るとそこにパーティはいなかった。しかし、部屋の奥で大きな影が何かを食べている。よく見るとそれは竜だ。恐らく大きな羽からしてドレイク種だろう。全体的な大きさからA級のミドルドレイクだと推測できる。しかし、問題はそこではない。A級の魔物を食らっている……それも数十体もだ。ここには恐らくミドルドレイク達の部屋だったのかもしれない。それの縄張りを邪魔したものが今俺たちの目の前にいる。

 俺はゆっくりと火の灯りをそちらへ向ける。

 そいつはまるで黒光りする鎧のような鱗を持ち、よく見ると羽だと思っていたものは鱗で覆われたコブだ。大きな尻尾と異様に長い胴体の先にはまるで蜥蜴のような顔をした竜がミドルドレイクの肉を骨ごと貪り食っていたのだ。

「臭いが一つだけになったわ……あれは?」

「……こいつは、S級モンスター……ファフニールだ」

 雑用係の頃に本で読んだ覚えがあった。"翼を持たぬ竜"ファフニール、その名の通り翼を持たず飛ぶことができない竜だ。しかし、ファフニールにとって飛翔する事など関係ない程危険な魔物で、防御力、攻撃力共に竜の中ではトップクラスの能力を持っているのだ。

「みんな……構えろ」

 俺がそう促すと、全員が武器を前に出して構える。
 そして、ファフニールも俺たちの出す物音に気がついたのか振り向いて、俺たちに顔を見せると甲高く、威嚇の鳴き声を部屋全体に響かせた。

 何故ここにファフニールが? さっきまで松明の火があったはず……S級パーティ達はこの魔物を倒さずに向かったのか? 分からない……でも今は、こいつを倒さないと先には進めないんだ……やってやる!

 こうして、俺たちはSS級ダンジョンで最初にして厄介な魔物と戦うことになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

処理中です...