異世界召喚鍛冶師

蛇神

文字の大きさ
上 下
56 / 64
第三章 謎の暗殺者

ヒュー足掻く

しおりを挟む
「うらぁぁ!!」

 ドゴ!と俺の拳が魔獣の顔面にめり込んだ。魔獣の目玉が衝撃でこぼれ落ちるぐらい飛び出た。

 戦いの中で魔獣の数は分かった。全部で九匹。

 俺には鋭い爪や牙、そして頑丈な拳がある。だがしかし、この数…もそうだが、コイツらは腹を切り裂いても顔面を砕こうも立上り、こちらに向かってくる。今顔面に一発食らわしたやつだって、切り裂かれた腹から内蔵を出し、ズルズル引きずりながら向かってきた。

 顔面が砕け脳が飛び出ようが、腹を裂かれ内蔵が飛び出ていようが、骨を噛み砕かれようが…ケタケタケタケタ笑いながら突っ込んでくる。

「クソったれ!キリがない!」

 俺はチラリと嬢ちゃんたちを見た。少年の体はもとの体に戻りかけている。もう少しで終わりそうだな。

 嬢ちゃんがじっとこちらを不安そうに見つめている。たいしたもんだ。普通のやつなら気が狂っちまうようなこの状況を受け入れ、自分のすべきことを逃げ出さずに全うしてるんだ。

「「「「ケタケタケタケタケタケタケタケタ!!」」」」

 急に魔獣共が笑い叫び始めた。耳をつんざくような不快な笑い声。俺は自然と耳を伏せていた。

「何事!?」

 嬢ちゃんがあたふたと魔獣たちを見回した。俺もこの状況がどうなってんだが知りたい。

「嬢ちゃんあとどんくらい!?」
「分かんないよ!でもあと傷塞ぐだけ!」

 最悪の状況だな。

「ヒューさん!アレ見て!!」

 嬢ちゃんが鋭く叫んだ。俺は嬢ちゃんから顔を逸らし前を見た。

「!?」

 驚くというより絶望した。魔獣たちが見る見るうちに傷が癒えていったかとおもうと、ニュルニュルと分裂した。八本足から四本足になった同じくらいの大きさの魔獣がさっきの倍の数現れた。

「十八匹か…これは厳しいな…」

 俺はヒュッと鋭く息を吐いた。どうすればいい?どうすれば後ろのやつを無事に帰せる?

「ヒューさん!!」

 嬢ちゃんが叫んだ。

 その途端、足に衝撃が走った。

「っ!?」

 魔獣の一匹が地面から出てきたのだ。魔法陣の中に上半身だけ出し、俺のふくらはぎに噛み付いていたのだ。俺はそいつを蹴り上げ距離をとった。そして、一斉に俺へと魔獣が飛びかかってきた。

「こいつら魔法を使うのかよ!?」
「いえ、それは魔術です!!」
「どうでもいいわい!」

 こんな軽口を言う余裕はもう俺にない。こいつら、動きがさっきよりも早くなっている。

 あーぁ…せめて俺の武器があればコイツらなんか屁でもねぇのになぁ…

 なんて、くだらないことを考え戦いに集中出来なかった罰なのか何なのか…背後からの攻撃に気づかず、もろにいい一撃を食らっちまった。多分魔法?魔術?のどっちかだろうな…。

「ぐぁぁっ!!」
「ヒューさん!!」

 背中が焼けるように熱い。身体がビリビリと痺れ、地面に伏した。最悪な事に、魔獣たちのど真ん中で…。魔獣たちはよだれをダラダラ垂らし、ゲハァゲハァと荒く呼吸していた。あぁ、これは俺を食おうとしているのか。

 俺は嬢ちゃんを見た。嬢ちゃんは涙をポロポロ流し、俺の名前を連呼している。俺は申し訳なくてスマネェと呟いた。

その時、少年を包む光が消えた。多分治療が完了したんだろう。俺はホットした。俺のことをコイツらが食っている隙に、その少年を連れて逃げられる。

「魔獣ども!!食うなら俺の骨までしっかり食えよ!!」

 それを合図に俺の全身を痛みが包み込んだ。

「ああぁぁぁぁ!!」

 これでいい、これでいいんだ。俺の肉が裂け、骨が砕かれる音が聞こえる。恐怖はあまり感じなかった。意識がボーウボーウとぼやけてきた。

 あぁ、俺はもう死ぬんだな…。

「どぉけえぇぇぇぇええ!!」

 嬢ちゃんがコチラに突っ込んでくるのが見えた。俺はビックリしたが、もうどうすることも出来ない。

「ば…か…、なんで…」

 俺は飛び込んで来る嬢ちゃんを見たのを最後に、目の前が真っ暗になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!

青空一夏
ファンタジー
 婚約者(レミントン侯爵家嫡男レオン)は何者かに襲われ亡くなった。さらに両親(ランス伯爵夫妻)を病で次々に亡くした葬式の翌日、叔母エイナ・リック前男爵未亡人(母の妹)がいきなり荷物をランス伯爵家に持ち込み、従兄弟ラモント・リック男爵(叔母の息子)と住みだした。  私はその夜、ラモントに乱暴され身ごもり娘(ララ)を産んだが・・・・・・この夫となったラモントはさらに暴走しだすのだった。  ラモントがある日、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹の娘)を連れてきて、 「お前は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むぞ!」  と、言い出した。  さらには、マーガレットの両親(モーセ準男爵夫妻)もやってきて離れに住みだした。  怒りが頂点に到達した時に私は魔法の力に目覚めた。さて、こいつらはどうやって料理しましょうか?  さらには別の事実も判明して、いよいよ怒った私は・・・・・・壮絶な復讐(コメディ路線の復讐あり)をしようとするが・・・・・・(途中で路線変更するかもしれません。あくまで予定) ※ゆるふわ設定ご都合主義の素人作品。※魔法世界ですが、使える人は希でほとんどいない。(昔はそこそこいたが、どんどん廃れていったという設定です) ※残酷な意味でR15・途中R18になるかもです。 ※具体的な性描写は含まれておりません。エッチ系R15ではないです。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

処理中です...