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第三章 謎の暗殺者
ヒュー足掻く
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「うらぁぁ!!」
ドゴ!と俺の拳が魔獣の顔面にめり込んだ。魔獣の目玉が衝撃でこぼれ落ちるぐらい飛び出た。
戦いの中で魔獣の数は分かった。全部で九匹。
俺には鋭い爪や牙、そして頑丈な拳がある。だがしかし、この数…もそうだが、コイツらは腹を切り裂いても顔面を砕こうも立上り、こちらに向かってくる。今顔面に一発食らわしたやつだって、切り裂かれた腹から内蔵を出し、ズルズル引きずりながら向かってきた。
顔面が砕け脳が飛び出ようが、腹を裂かれ内蔵が飛び出ていようが、骨を噛み砕かれようが…ケタケタケタケタ笑いながら突っ込んでくる。
「クソったれ!キリがない!」
俺はチラリと嬢ちゃんたちを見た。少年の体はもとの体に戻りかけている。もう少しで終わりそうだな。
嬢ちゃんがじっとこちらを不安そうに見つめている。たいしたもんだ。普通のやつなら気が狂っちまうようなこの状況を受け入れ、自分のすべきことを逃げ出さずに全うしてるんだ。
「「「「ケタケタケタケタケタケタケタケタ!!」」」」
急に魔獣共が笑い叫び始めた。耳をつんざくような不快な笑い声。俺は自然と耳を伏せていた。
「何事!?」
嬢ちゃんがあたふたと魔獣たちを見回した。俺もこの状況がどうなってんだが知りたい。
「嬢ちゃんあとどんくらい!?」
「分かんないよ!でもあと傷塞ぐだけ!」
最悪の状況だな。
「ヒューさん!アレ見て!!」
嬢ちゃんが鋭く叫んだ。俺は嬢ちゃんから顔を逸らし前を見た。
「!?」
驚くというより絶望した。魔獣たちが見る見るうちに傷が癒えていったかとおもうと、ニュルニュルと分裂した。八本足から四本足になった同じくらいの大きさの魔獣がさっきの倍の数現れた。
「十八匹か…これは厳しいな…」
俺はヒュッと鋭く息を吐いた。どうすればいい?どうすれば後ろのやつを無事に帰せる?
「ヒューさん!!」
嬢ちゃんが叫んだ。
その途端、足に衝撃が走った。
「っ!?」
魔獣の一匹が地面から出てきたのだ。魔法陣の中に上半身だけ出し、俺のふくらはぎに噛み付いていたのだ。俺はそいつを蹴り上げ距離をとった。そして、一斉に俺へと魔獣が飛びかかってきた。
「こいつら魔法を使うのかよ!?」
「いえ、それは魔術です!!」
「どうでもいいわい!」
こんな軽口を言う余裕はもう俺にない。こいつら、動きがさっきよりも早くなっている。
あーぁ…せめて俺の武器があればコイツらなんか屁でもねぇのになぁ…
なんて、くだらないことを考え戦いに集中出来なかった罰なのか何なのか…背後からの攻撃に気づかず、もろにいい一撃を食らっちまった。多分魔法?魔術?のどっちかだろうな…。
「ぐぁぁっ!!」
「ヒューさん!!」
背中が焼けるように熱い。身体がビリビリと痺れ、地面に伏した。最悪な事に、魔獣たちのど真ん中で…。魔獣たちはよだれをダラダラ垂らし、ゲハァゲハァと荒く呼吸していた。あぁ、これは俺を食おうとしているのか。
俺は嬢ちゃんを見た。嬢ちゃんは涙をポロポロ流し、俺の名前を連呼している。俺は申し訳なくてスマネェと呟いた。
その時、少年を包む光が消えた。多分治療が完了したんだろう。俺はホットした。俺のことをコイツらが食っている隙に、その少年を連れて逃げられる。
「魔獣ども!!食うなら俺の骨までしっかり食えよ!!」
それを合図に俺の全身を痛みが包み込んだ。
「ああぁぁぁぁ!!」
これでいい、これでいいんだ。俺の肉が裂け、骨が砕かれる音が聞こえる。恐怖はあまり感じなかった。意識がボーウボーウとぼやけてきた。
あぁ、俺はもう死ぬんだな…。
「どぉけえぇぇぇぇええ!!」
嬢ちゃんがコチラに突っ込んでくるのが見えた。俺はビックリしたが、もうどうすることも出来ない。
「ば…か…、なんで…」
俺は飛び込んで来る嬢ちゃんを見たのを最後に、目の前が真っ暗になった。
ドゴ!と俺の拳が魔獣の顔面にめり込んだ。魔獣の目玉が衝撃でこぼれ落ちるぐらい飛び出た。
戦いの中で魔獣の数は分かった。全部で九匹。
俺には鋭い爪や牙、そして頑丈な拳がある。だがしかし、この数…もそうだが、コイツらは腹を切り裂いても顔面を砕こうも立上り、こちらに向かってくる。今顔面に一発食らわしたやつだって、切り裂かれた腹から内蔵を出し、ズルズル引きずりながら向かってきた。
顔面が砕け脳が飛び出ようが、腹を裂かれ内蔵が飛び出ていようが、骨を噛み砕かれようが…ケタケタケタケタ笑いながら突っ込んでくる。
「クソったれ!キリがない!」
俺はチラリと嬢ちゃんたちを見た。少年の体はもとの体に戻りかけている。もう少しで終わりそうだな。
嬢ちゃんがじっとこちらを不安そうに見つめている。たいしたもんだ。普通のやつなら気が狂っちまうようなこの状況を受け入れ、自分のすべきことを逃げ出さずに全うしてるんだ。
「「「「ケタケタケタケタケタケタケタケタ!!」」」」
急に魔獣共が笑い叫び始めた。耳をつんざくような不快な笑い声。俺は自然と耳を伏せていた。
「何事!?」
嬢ちゃんがあたふたと魔獣たちを見回した。俺もこの状況がどうなってんだが知りたい。
「嬢ちゃんあとどんくらい!?」
「分かんないよ!でもあと傷塞ぐだけ!」
最悪の状況だな。
「ヒューさん!アレ見て!!」
嬢ちゃんが鋭く叫んだ。俺は嬢ちゃんから顔を逸らし前を見た。
「!?」
驚くというより絶望した。魔獣たちが見る見るうちに傷が癒えていったかとおもうと、ニュルニュルと分裂した。八本足から四本足になった同じくらいの大きさの魔獣がさっきの倍の数現れた。
「十八匹か…これは厳しいな…」
俺はヒュッと鋭く息を吐いた。どうすればいい?どうすれば後ろのやつを無事に帰せる?
「ヒューさん!!」
嬢ちゃんが叫んだ。
その途端、足に衝撃が走った。
「っ!?」
魔獣の一匹が地面から出てきたのだ。魔法陣の中に上半身だけ出し、俺のふくらはぎに噛み付いていたのだ。俺はそいつを蹴り上げ距離をとった。そして、一斉に俺へと魔獣が飛びかかってきた。
「こいつら魔法を使うのかよ!?」
「いえ、それは魔術です!!」
「どうでもいいわい!」
こんな軽口を言う余裕はもう俺にない。こいつら、動きがさっきよりも早くなっている。
あーぁ…せめて俺の武器があればコイツらなんか屁でもねぇのになぁ…
なんて、くだらないことを考え戦いに集中出来なかった罰なのか何なのか…背後からの攻撃に気づかず、もろにいい一撃を食らっちまった。多分魔法?魔術?のどっちかだろうな…。
「ぐぁぁっ!!」
「ヒューさん!!」
背中が焼けるように熱い。身体がビリビリと痺れ、地面に伏した。最悪な事に、魔獣たちのど真ん中で…。魔獣たちはよだれをダラダラ垂らし、ゲハァゲハァと荒く呼吸していた。あぁ、これは俺を食おうとしているのか。
俺は嬢ちゃんを見た。嬢ちゃんは涙をポロポロ流し、俺の名前を連呼している。俺は申し訳なくてスマネェと呟いた。
その時、少年を包む光が消えた。多分治療が完了したんだろう。俺はホットした。俺のことをコイツらが食っている隙に、その少年を連れて逃げられる。
「魔獣ども!!食うなら俺の骨までしっかり食えよ!!」
それを合図に俺の全身を痛みが包み込んだ。
「ああぁぁぁぁ!!」
これでいい、これでいいんだ。俺の肉が裂け、骨が砕かれる音が聞こえる。恐怖はあまり感じなかった。意識がボーウボーウとぼやけてきた。
あぁ、俺はもう死ぬんだな…。
「どぉけえぇぇぇぇええ!!」
嬢ちゃんがコチラに突っ込んでくるのが見えた。俺はビックリしたが、もうどうすることも出来ない。
「ば…か…、なんで…」
俺は飛び込んで来る嬢ちゃんを見たのを最後に、目の前が真っ暗になった。
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