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第三章 謎の暗殺者
迷子の子猫ちゃん
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「いや~、女の子とデートなんていつぶりだろう~!!」
「いや、これデートじゃないですからね」
鼻の下を伸ばしたアナンタに私はすかさず訂正を入れた。デートなんて…まったくとんちきな事を…。
私はアナンタという問題種の存在に頭を抱えた。これから大変なことになりそうだ…と。が、しかし…この心配は杞憂に終わった。
アナンタはとても案内人として優秀だったのだ。
「この時間はこの道はやめた方がいいかな~」「ここのご飯安くて美味いんだよね!」「この道を曲がってっと…ほら!可愛い子猫!」「ちよっとこれ食べてみ?」「トイレ?教会のトイレ借りようっか」
人の流れをスイスイと進み私をリードしてくれ、そして通りの名称や有名な建物や重要な場所をひょいと説明してみせた。毎回私を気遣ってくれ、声かけも頻繁にしてくれた。
「アナンタって、なんか惜しいね…」
こんな優秀なのになんでモテないんだろうと不思議に思った。
「どうしたのさ、急に真面目な顔して~!」
アナンタは茶化すように笑った。そして、あっ!と目を丸くして叫んだ。
「そういえば、まだお土産系のお店行ってなかったね!」
その言葉を聞いて、あっ!と私も声を上げた。かれこれ2時間ほどプラプラ歩いていたが、本題を忘れていた。危ない危ない…アナンタが気づかなかったらこのまま城に帰っていた…。
「ナイスです!」
私はぐっと親指を立て、アナンタを褒めた。それを受け、アナンタも親指を立てて、どんなもんだいと答えた。
「じゃ、色々見て決めていこうか!」
「うん!」
私はアナンタの後ろを人の波に流されないよう、アナンタの服をしっかり掴み、必死について行った。
数分後
「…で、その数分後にあんたはアナンタとはぐれ、俺を見つけたってわけか…」
「そーなりますね…」
アハハと恥ずかしさを誤魔化すように頭をかいた。
必死に服も掴んでついて行ったはずなのに、人の波に押し流され、気づいたら一人になっていた。
そして、呆然と立ち尽くしているところを巡回で偶然通りかかったヒューさんに保護されたわけです。
「で?迷子の子猫ちゃん。はぐれた子猫ちゃんを無事届けさせるのも、このおっちゃんの仕事に入ってるんだが…どうする?」
「この年で迷子とか…もう死にたい。恥ずかしい…でも、お願いします。一緒にアナンタ探して下さい」
一連の流れを思い出し、恥ずかしさで顔を手で覆った私は唸った。ヒューさんがヨシヨシと慰めてくれた。が、私は知っている。お節介中尉として名高いヒューさんはこのことを沢山の人にこれから言いふらすであろうということを…。
「ヒューさんは優しさの鬼神っすね」
「いや~、それほどでも~」
私は心の中で褒めてねぇーよ!と叫んだ。
「いや、これデートじゃないですからね」
鼻の下を伸ばしたアナンタに私はすかさず訂正を入れた。デートなんて…まったくとんちきな事を…。
私はアナンタという問題種の存在に頭を抱えた。これから大変なことになりそうだ…と。が、しかし…この心配は杞憂に終わった。
アナンタはとても案内人として優秀だったのだ。
「この時間はこの道はやめた方がいいかな~」「ここのご飯安くて美味いんだよね!」「この道を曲がってっと…ほら!可愛い子猫!」「ちよっとこれ食べてみ?」「トイレ?教会のトイレ借りようっか」
人の流れをスイスイと進み私をリードしてくれ、そして通りの名称や有名な建物や重要な場所をひょいと説明してみせた。毎回私を気遣ってくれ、声かけも頻繁にしてくれた。
「アナンタって、なんか惜しいね…」
こんな優秀なのになんでモテないんだろうと不思議に思った。
「どうしたのさ、急に真面目な顔して~!」
アナンタは茶化すように笑った。そして、あっ!と目を丸くして叫んだ。
「そういえば、まだお土産系のお店行ってなかったね!」
その言葉を聞いて、あっ!と私も声を上げた。かれこれ2時間ほどプラプラ歩いていたが、本題を忘れていた。危ない危ない…アナンタが気づかなかったらこのまま城に帰っていた…。
「ナイスです!」
私はぐっと親指を立て、アナンタを褒めた。それを受け、アナンタも親指を立てて、どんなもんだいと答えた。
「じゃ、色々見て決めていこうか!」
「うん!」
私はアナンタの後ろを人の波に流されないよう、アナンタの服をしっかり掴み、必死について行った。
数分後
「…で、その数分後にあんたはアナンタとはぐれ、俺を見つけたってわけか…」
「そーなりますね…」
アハハと恥ずかしさを誤魔化すように頭をかいた。
必死に服も掴んでついて行ったはずなのに、人の波に押し流され、気づいたら一人になっていた。
そして、呆然と立ち尽くしているところを巡回で偶然通りかかったヒューさんに保護されたわけです。
「で?迷子の子猫ちゃん。はぐれた子猫ちゃんを無事届けさせるのも、このおっちゃんの仕事に入ってるんだが…どうする?」
「この年で迷子とか…もう死にたい。恥ずかしい…でも、お願いします。一緒にアナンタ探して下さい」
一連の流れを思い出し、恥ずかしさで顔を手で覆った私は唸った。ヒューさんがヨシヨシと慰めてくれた。が、私は知っている。お節介中尉として名高いヒューさんはこのことを沢山の人にこれから言いふらすであろうということを…。
「ヒューさんは優しさの鬼神っすね」
「いや~、それほどでも~」
私は心の中で褒めてねぇーよ!と叫んだ。
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