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16歳《高等部 1年》
8 テオside
しおりを挟む「レネ。」
「はい。テオ様。」
「いや、いつも通りでいい。兄上の従者はやっていけそうか?兄上は忙しい方だ。まだ執事の方が良いと思うんだが…。」
「いえ、脚本のためにも従者が良いのです。ですか…本当にクラウス様は忙しい方ですね。体がいくつあっても足りません。」
兄上は公爵の仕事も公爵夫人の仕事もしている。もちろん大まかなことはメイド長や執事長のメラニーとアルフレートがしているが確認は兄上の仕事だ。人を信用していないんだろう。
公爵の仕事も領主代理に任せて確認だけ。それでも気が遠くなるほどの資料が送られてくる。収穫高が去年より低い。穀物が南では足りない。肉が西では足りない。北は全てが足りない。魔獣に襲われて村が壊滅した。
などなど。よく1人で対応できると思う。
それに加えて生徒会の仕事だ。
いい加減体を壊しそうで見てるこっちが恐ろしい。
「あれでもまだマシになったんだ。茶の入れ方を覚えたら兄上にも重宝されるはずだ。頑張ってくれ。」
「はい。」
正直それくらいしか兄上の役に立たないだろうからな。それにアルフレートのお茶の入れ方を覚えておけば生徒会の執務室でも兄上が喜ばれるに違いない。
俺は覚えられなかったから尚更だ。
正直兄上と違ってお茶の美味い不味いが分からない。レモンを入れているものなどは分かるが、それが無ければどれも同じ茶だ。味がついた水くらいにしか思えない。手間をかける暇があるなら水でよいと思う。貴族として許されないから口に出したことはないが…。
兄上がお茶好きだからといって俺まで詳しいと思わないで欲しい。騎士の仲間内で許嫁に渡す茶葉はどれがいいかどれが美味いか人気かなど聞かれても困る。知らん。味もわからん。どれも一緒だ。
ただ兄上が飲んでいるものは覚えていたからそれを伝えるだけ。これ人気なんだよって持ってくる茶葉も兄上が言ったから覚えてる。
「なにか手伝えることがあれば言ってくれ。基本的に学園か訓練場にしかいないからな。」
家にいてもやることといえば兄上の手伝いと風呂くらいだ。何もしないのはサボっているようで好きじゃない。
「そういえばテオ様、クラウス様が気分転換に手合わせをしたいと仰っていました。手が空いた時に誘っていただければと思います。」
「そうか!助かった。」
兄上との手合わせは本当に身になる手合わせだ。剣術メインだが兄上は魔法も一緒に使ってくる。剣術だけなら俺でも勝てるからな。だけど剣術を学べば学ぶほど、剣を振るってる間に魔法を使う難しさを理解した。
身体強化などは別だがそれを使えるのは身体強化魔法を無詠唱まで極め、無意識的に扱えるようになった者だけ。
初めの方はどちらかに意識が集中しすぎてなかなか同時に使えない。同時に使えて半人前になれると言ったところだ。
それなのに兄上は身体強化以外にも空間魔法やよく使われる防御魔法を足場にして空中戦までできる。それも無詠唱で剣を使いながらだ。剣を使う者からしたら剣技使いと同じくらいの憧れだ。しかも史上初めて魔法で剣技を真似できる人になった。
魔法を魔法で斬ることができるんだ。もちろん魔法だけを極めた者もそれが出来る。だが兄上は戦いながら無効化することで目の前の身体強化魔法を無効化したりもできるんだ。外からの大魔法も。
魔法陣を見て真反対の魔法を撃つことで無効化しているらしい。俺は言っていることがよく分からない。魔法陣なんてそもそも見ても分からない。変な絵にしか見えないし、一人一人の癖が出て読むのも様々で魔法陣学は苦手だ。
なのに兄上はそれをその場で読み解いて無効化する。さすがだ兄上だ。尊敬に値する兄上だ。いつ手合わせしても俺のためになる。兄上も努力を続けているんだろう。俺も頑張らなければ。
剣技を使う時な剣術に集中するからそれも使えなくなる代わりに魔法のような剣術になる。魔法を切ったり斬撃を飛ばしたり。仕組みがよく分からないがそういうものなんだろうと納得してる。もしかしたら微量な魔力を使ってるのかもしれないが兄上ですら魔力を感知できないのだから使っていないも同然だ。
「兄上はいつ頃時間が空きそうだろうか。」
「3時頃によく休憩を取られています。」
「ではそのくらいに手合わせの時間が欲しいと伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
そうと決まれば早速練習しなければ。兄上に無様なところなんて見せられない。
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