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12歳《中等部》
94 ルディside
しおりを挟む国王陛下に呼ばれて父上の執務室に行った。そしたら聖皇国の皇族がいた。
クラウスのお気に入りの第3皇子。クラウスが言うんだから次の王はコイツなんだろう。仲良くして損はない…か。
でもあっちも俺を選んでもらわなきゃ意味がねぇ。弟も呼ばれたってことはこれも皇太子になるための試験なんだろう。
「ルディ、ノルベルト、聖皇国の第3皇子シモン・ヨアヒム・ヴァイゲル殿下だ。」
ノルベルトが1人で一礼してシモンを見る。
シモンも立ち上がって微笑むだけ。
「殿下、息子のルディとノルベルトだ。」
ふぅん。聖皇国らしく真っ白だな。髪も目は灰色っぽい白。服だって真っ白だ。クラウスとは真逆だな。
「どうぞ。」
シモンの前の席に座る。弟は俺の隣。
弟はなんか返事してるけどそいつ多分そういう奴には興味ねぇぞ。
「シモンとお呼びしても?殿下。」
「はい。私もルディとお呼びしても?」
「えぇ。クラウスと話すようにしてください。」
クラウスと同じように少しだけ目を細めて俺を観察するように微笑んだ。
初めて俺に会った時のクラウスにそっくりだ。気持ちわりぃ。テオより似てんじゃねぇの。
「そうですね。同じ学園に入学する友ですから。」
「…高等部ですか?」
「はい。ルディもクラウスと話すようにしください。」
「俺はクラウスと話す時は無礼講だぞ。」
「私もだよ。」
そう言い合って笑い合う。お互いクラウスのお墨付きって確認は取れた。あとは自分たちが王になるために相手を見極めればいいだけ。面倒な駆け引きだけど聖皇国の次の王を選ぶならクラウスよりも自分を信じた方が諦めがつく。
俺はシモンとは会ったことがない。城にひきこもってる第3皇子ってイメージだ。
昔。クラウスの母親である前公爵夫人が公爵に代わって外交のために聖皇国に行った時にシモンは前公爵夫人に認められたとクラウスから聞いた。
あのご婦人にクラウスの妻にと選ばれたんならすげぇやり手なんだろう。クラウスも認めてるみてぇだし。どこがすごいのかは分かんねぇけど。
「他のご兄弟は元気か?」
第1皇子は外交に第1皇女は社交界に第2皇子は自国の発展に力を入れていた。その繋がりで会ったことはある。
第3皇子は城の中から支援をしたり自ら国内の孤児院や養成所に足を向けて支援者を増やしている聞いている。
「えぇ。相変わらず元気だよ。よくこっちにも顔を出してるみたいだね。毎日1人でも多くの信者を救おうと奮闘してて尊敬する兄達だよ。」
考えてみればクラウスも俺にそういうことをさせたがった。
孤児院もたまに顔だしてる。スラムの改善は街の治安に関係あると思うからそこはちゃんと定期的に顔だしてそこの顔役と話してる。昔よりかは改善されたと思う。まだまだ改善するところはあるけどな。
今でも意味ねぇだろとは思ってるけどまぁクラウスが言うんだ。暇つぶしにはなるし、損はねぇだろ。
コイツもクラウスに言われてんのかなぁ。
「シモン。お前はどんな国にしてぇの?」
「先に言うのが礼儀だと思うけど…そうだね。みんなが後世に渡って幸せでいられる国。かな。そのためには貧困層のレベルを上げる必要がある。」
俺の欲しい国にてる。みんな俺を敬って褒めたたえて素晴らしい王だと口をそろえる。ただ平民に頭が良くなられたら貴族が俺が困る。だからシモンほど金をかけるつもりはない。
「ルディは?」
「俺を褒め称える国。」
「そのために何するの?」
「スラム街の改善だな。あとは識字と簡単な計算の普及。孤児院は国として支援したい。この国はそっちと違って貴族も纏まってるからな。」
シルヴェスターは本当に便利だ。皇室を裏切ることはないし。代々のシルヴェスターは面倒な表舞台は皇室に任せて自分たちはやりたいことだけやってる。クラウスは一時王の椅子を狙ってた素振りがあったけどテオが現れてからは一切なくなった。
それともテオじゃなくて魔術の方に興味が出たのか貴族の影響が少ない北の領地で色んな実験したり、錬金術師を囲ったりしてるらしい。俺は多少の平民の被害は見て見ぬふりするが…弟が王になったら面倒なことになるだろうな。
「シルヴェスターのおかげね。私もシルヴェスターが欲しいよ。でも、今のシルヴェスターは敵が多い。これまで通り上手くいくかな?」
「シルヴェスターと敵対してるのは全員不正を働いてる家紋だ。俺が王になったら潰す。」
「不正はある程度の許容が必要だと思う。それでも潰すの?」
「クラウスと同じこと言うんだな。」
「確かに不正は許せないことだ。だけど才覚とお金ならこれからの未来を取るべきだ。」
「けどな。シルヴェスター公爵夫人の代わりはクラウスがしてる。クラウスが居なくなっても代わりはテオがする。そいつがいなくても代わりはいるんだぜ。」
「第2皇子はどう思われますか?」
「不正はどんなことであろうと裁くべきだと考えています。才覚がある、金がある。兄様が言うように代わりはいくらでもいます。ならその一族をのさばらせる意味はありません。」
その一族ってシルヴェスターのことだろ。アイツらの不正を暴くのは王なら簡単だろうな。クラウスがその不正を告発されそうになって何もしないわけがねぇけど。
「ルディと似ているけど全く違う意見ですね。」
「民から受け取ったものを民に返してなにが悪い。貴族の不正に使うための金ではありません。」
そうじゃねぇだろ。貴族の遊びに国の金使ってんなら問題だ。それは俺もクラウスもシモンもわかってる。
でも国を守るためには綺麗事だけじゃ進まない。そのための不正と国庫だ。平和を享受させるための下準備や手回し、賄賂、色々あるがそんな不正の金もある。
今、全部一気に止めてみろ。起こるのは内戦だ。貴族と国&平民の戦争だ。
ここまで潔癖だと国の運営もやりにくいだろうな。平治の王は弟だって言うクラウスのことがちょっとだけ分かって腹立たしい。
シモンがよく分からない微笑みを顔に乗せて父様の方に向いた。
「陛下。ルディと話してみたいです。少し席を外しても?」
皇帝と第3皇子。立場なんて考えるまでもなく父様が上だ。威風堂々というか。傲慢というか。ここは俺の方が似てるかな。
「ルディがお気に入りかな?構わないぞ。」
よし。俺が選ばれた。
これでシモンが王になれば俺の皇太子への道が近づく。
逆にシモンが王にならなきゃ俺の王への道は難しくなるんだけどな。
それでもここは賭けるべき時だろう。負ける前にチャンスを逃すなんて馬鹿のやることだ。
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