47 / 212
8歳
44(料理長side)
しおりを挟む
あーーーー。緊張する。
この屋敷の主。8歳ながらに屋敷の全員から坊ちゃんではなくクラウス様と呼ばれてるだけあって圧がある人。
前奥様が作りあげた完璧な小公爵様だ。公爵様が帰ってこないから多分公爵の仕事もになってる8歳児。
尊敬通り越して恐怖しかない。多分中身は魔法士が作りあげた作り物なんじゃないかとさえ思う。そんできっと中身は前奥様なんだ。
現実逃避をしながらクラウス様の部屋まで歩いていたらいつの間にか部屋の前。
なんで嫌なことに限って時間が早くすぎるんだろう。もっと時間が欲しい。でもこれ以上遅れればクラウス様に首クビにされるかもしれない。
なにより、主の呼び出しを断ることなんてできない。
意を決してクラウス様の部屋のドアを叩く。
中から執事のアルフレートがドアを開けてくれた。
今日のおやつについてだろうか。あれが精一杯だった。怒られたなら大人しく受け入れよう。
「失礼致します。クラウス様。」
「うん。お疲れ様。座っていいよ。」
中には寝巻きに身を包んだクラウス様がソファでお茶を飲んでいた。その机の上に紙が沢山ある。資料でも見ていたのかもしれない。本当にこういうところが8歳児とは思えないんだ。
クラウス様が言うように大人しくクラウス様の前のソファに腰かける。
静かに紅茶を準備してくれるアルフレート。机の上の資料を片付け始めるクラウス様。息ぴったりだな。おい。
俺が固まってたらクラウス様がお茶を勧めてくれる。飲んだら吐きそうなくらい緊張してるんだが。
「どうぞ?」
仕方なくカップに口つける。味なんて分からない。
「忙しい中ありがとね。夜更けだし早速話に入るけど、今日作ってくれたチョコレート。売り物になると思う?」
「数量限定であれば売れると思います。」
思ったことをそのまま告げる。これはアルフレートにも伝えたから怒られはしない…と思う。もっと働けと言われるのだろうか。
「それはいいかな。限定品ってことで高値付けられるしね。」
これはそんなに悪くない反応。じゃあなんのために呼んだんだ?
「料理長の弟子にさ、店舗任せられる子いない?1番大事なのは料理の腕よりも真面目さね。」
真面目。パッと思いついたのは見習いのひとり。
腕はまだまだだが人一倍努力家だ。毎日何かを俺から盗み取ろうと言う気概もある。
「まだ見習いですが1人だけ。」
クラウス様は微笑んで「いいね。」と呟いた。見つかったのが良かったのか俺が即答したのが良かったのか。全然分からんが機嫌がいいにこしたことはない。
「これからスイーツ専門でこれから作らせて。全部僕と使用人で食べるよう。合格点になるならテオや義母様に出してもらおうか。」
「クラウス様自らですか!?」
「ダメ?」
「いや…。いえ、問題ありません。」
文句言えるもんか。この人は気分次第で俺のクビを切れるわけだし。俺だって自分の代わりが沢山いることは知っている。
この屋敷を仕切っていなくなったらどうなるかと思った前奥様だってクラウス様が成り変わった。
誰かがいなくても世界は回るしどうにかなるもんだ。俺の代わりなら尚更。
「テオの誕生日までにチョコレートの作り方とスイーツの作り方は仕込んどいてね。」
「承知致しました。」
クラウス様の考えることは分からない。テオ様には殊更優しく接しているけどこの人の事だ。どうせ裏がある。
闇魔法を使えるから今のうちに飼い慣らしとこうとか。使えるようになったら自分の代わりに戦場に送ろうとか。
それにしては金かけてる気がするけど。クラウス様が好きな投資とやらかもしれない。
この屋敷の主。8歳ながらに屋敷の全員から坊ちゃんではなくクラウス様と呼ばれてるだけあって圧がある人。
前奥様が作りあげた完璧な小公爵様だ。公爵様が帰ってこないから多分公爵の仕事もになってる8歳児。
尊敬通り越して恐怖しかない。多分中身は魔法士が作りあげた作り物なんじゃないかとさえ思う。そんできっと中身は前奥様なんだ。
現実逃避をしながらクラウス様の部屋まで歩いていたらいつの間にか部屋の前。
なんで嫌なことに限って時間が早くすぎるんだろう。もっと時間が欲しい。でもこれ以上遅れればクラウス様に首クビにされるかもしれない。
なにより、主の呼び出しを断ることなんてできない。
意を決してクラウス様の部屋のドアを叩く。
中から執事のアルフレートがドアを開けてくれた。
今日のおやつについてだろうか。あれが精一杯だった。怒られたなら大人しく受け入れよう。
「失礼致します。クラウス様。」
「うん。お疲れ様。座っていいよ。」
中には寝巻きに身を包んだクラウス様がソファでお茶を飲んでいた。その机の上に紙が沢山ある。資料でも見ていたのかもしれない。本当にこういうところが8歳児とは思えないんだ。
クラウス様が言うように大人しくクラウス様の前のソファに腰かける。
静かに紅茶を準備してくれるアルフレート。机の上の資料を片付け始めるクラウス様。息ぴったりだな。おい。
俺が固まってたらクラウス様がお茶を勧めてくれる。飲んだら吐きそうなくらい緊張してるんだが。
「どうぞ?」
仕方なくカップに口つける。味なんて分からない。
「忙しい中ありがとね。夜更けだし早速話に入るけど、今日作ってくれたチョコレート。売り物になると思う?」
「数量限定であれば売れると思います。」
思ったことをそのまま告げる。これはアルフレートにも伝えたから怒られはしない…と思う。もっと働けと言われるのだろうか。
「それはいいかな。限定品ってことで高値付けられるしね。」
これはそんなに悪くない反応。じゃあなんのために呼んだんだ?
「料理長の弟子にさ、店舗任せられる子いない?1番大事なのは料理の腕よりも真面目さね。」
真面目。パッと思いついたのは見習いのひとり。
腕はまだまだだが人一倍努力家だ。毎日何かを俺から盗み取ろうと言う気概もある。
「まだ見習いですが1人だけ。」
クラウス様は微笑んで「いいね。」と呟いた。見つかったのが良かったのか俺が即答したのが良かったのか。全然分からんが機嫌がいいにこしたことはない。
「これからスイーツ専門でこれから作らせて。全部僕と使用人で食べるよう。合格点になるならテオや義母様に出してもらおうか。」
「クラウス様自らですか!?」
「ダメ?」
「いや…。いえ、問題ありません。」
文句言えるもんか。この人は気分次第で俺のクビを切れるわけだし。俺だって自分の代わりが沢山いることは知っている。
この屋敷を仕切っていなくなったらどうなるかと思った前奥様だってクラウス様が成り変わった。
誰かがいなくても世界は回るしどうにかなるもんだ。俺の代わりなら尚更。
「テオの誕生日までにチョコレートの作り方とスイーツの作り方は仕込んどいてね。」
「承知致しました。」
クラウス様の考えることは分からない。テオ様には殊更優しく接しているけどこの人の事だ。どうせ裏がある。
闇魔法を使えるから今のうちに飼い慣らしとこうとか。使えるようになったら自分の代わりに戦場に送ろうとか。
それにしては金かけてる気がするけど。クラウス様が好きな投資とやらかもしれない。
175
お気に入りに追加
1,849
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
弟は僕の名前を知らないらしい。
いちの瀬
BL
ずっと、居ないものとして扱われてきた。
父にも、母にも、弟にさえも。
そう思っていたけど、まず弟は僕の存在を知らなかったみたいだ。
シリアスかと思いきやガチガチのただのほのぼの男子高校生の戯れです。
BLなのかもわからないような男子高校生のふざけあいが苦手な方はご遠慮ください。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる