上 下
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8歳

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「兄上、おはようございます。」

いつ通り僕が着替え終わるまで部屋の前で待っててくれたんだけど…。
なんかいつもより声がかたい。


「おはよう。随分気合いが入ってるね。」

「第1皇子殿下に初めてお会いしますので……正直に言えば緊張してます。」

かっわいい♡
緊張してるんだ。そっかぁ♡♡♡♡♡
ルディなんかに緊張しなくていいのにぃ♡
可愛すぎて昇天しそう。

「同じ人間だよ。なにも気にすることもないよ。」

「そうですよ。テオ様。クラウス様に気に入られる方が万倍も難しいです。それを乗り越えられたテオ様に恐れるものはありません。」

後ろから僕が脱いだパジャマを持って話しかけてくるアルフレート。ほんと朝からうざい。
自分が僕らの家族に含まれてるって勘違いしてんじゃないの?

「うるさいよ。アルフレート。」

「緊張をほぐそうかと思いまして。クラウス様、今日は午後から獣人について時間を頂きたいのですがよろしいでしょうか?」

「はいはい。風呂に入らせといてね。」

「承知致しました。」

ノミとかダニとかいたら大変だもんね。

要件はそれか。まぁ僕も話そうと思ってたから別にいいんだけど。


朝ごはんを食べて、少し領地の仕事したり投資先の利益の確認。うん。いい感じ。

昼ごはんは少なめで。いつもは見送ってくれるテオ様と一緒に馬車に乗り込む。
テオ様はなんか肩に力が入ってる。緊張してるのかな。ルディが第1皇子と言えど会えばただの悪ガキだってわかると思う。
緊張するだけ無意味だと思うけどなぁ。


「兄上、挨拶の練習してもいいですか?」

「いいけど…。そこまで緊張する?」

「兄上はしなかったんですか?俺なんて心臓がバクバクいってます。」

んー。昔過ぎて忘れたなぁ。それに付き添いが母様と父様だったから怖いもの無かったな。どう頑張っても皇帝陛下の婚約者を寝取るより不敬なことできないし。
母様の前で失態を晒すより皇帝の前で失態晒す方が精神衛生上いいし。

「父様より大きい失態なんて誰がするの?陛下の婚約者寝取って許されるならなにしたって許されるよ。」

「少し気が楽になりました。」

「それにルディはあまり媚びない人が好きだよ。程々にね。」

「難しい注文ですね…。分かりました。頑張ります。」

少し落ち着いたようでなにより。テオ様、緊張しぃだな。そんな所も可愛いけど。

パッと僕の方を向いて座ったまま深深と頭を下げる。


「第1皇子殿下にご挨拶申し上げます。シルヴェスター公爵家次男テオ・フォン・シルヴェスターと申します。」

か、わ、い、い♡
いいよもう。なにがあってもその可愛さで乗り越えられるって。

「いかがですか?兄上。」

「問題ないよ。完璧。」

「本当にそう思っていますか?」

思ってる思ってる。可愛いなぁって。

少し微笑んでやれば不貞腐れたようにそっぽを向いた。可愛いなぁ。子供っぽい。
テオ様にもこんな時期があったんだね。


「テオ、ルディ…殿下はそんなに礼儀を気にする人じゃない。公の場は別だけどね。大丈夫だよ。むしろ気に触ることをズケズケ言ってくるからそっちの方気にしてな。」

ルディ、義母のことをテオ様の前でアバズレとか言わないよね。ほんと悪気がない分タチが悪い。





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