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アフター編
5.わかりあい(※R18)
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ぷし、と音がしてビールのプルタブが開けられる。笹塚の冷蔵庫に入っていたお酒だ。最近は週末の殆どをこっちの家で過ごす為、彼の冷蔵庫には常に私の好きなお酒も入っている。
カットソーにハーフパンツといった服装に着替えた笹塚は、ビール。私はチューハイを開けてこくこくと喉を潤す。
飲んでから初めて、自分の喉が驚くほどカラカラに渇いていたのだと気付いた。
ビールのラベルを見つめ、俯く笹塚。すでにもう、録画していたアニメを見ようなどという空気ではない。私もそんな気分になれない。
ソファに並んで座る笹塚を見上げると、何かを考え込んでいるような、無表情で固い……そんな表情をしていた。
「あの、さ」
ぽそりと私から話しかける。ゆっくりと、笹塚が私の方を向いてきた。
「あの、私、気にしてないからね。ああいうのって、結構言われてたんだよ。あ、最近は言われてないけど、でも、昔は毎日のように言われてて、だから聞き慣れてるし、大丈夫だよ」
「……そうか。ごめん」
「い、いや! 謝って欲しいんじゃなくて。なんて言えばいいのかな……。あっ、嬉しい! 嬉しかったよ、浩太さん!」
「嬉しい?」
少し不思議そうな表情に変わる。さっきみたいな表情の無い怖い顔じゃなくなって、心なしかホッとした。
「あの、……大事な人って言ってくれて。わ、私に、そんな魅力があるとは到底思えないけど。でも、浩太さんにそう思われてるのが解ったのは、嬉しかったよ」
「……当たり前だろ。何度も好きだっつってんのに、今更嬉しいとか、遅すぎお前」
「うっ。ち、ちがうよ! 前からも嬉しいって思ってたよ。でも、その……再確認と言いますかね、だから」
ごにょごにょと言う私の言葉がふいに止まる。笹塚に、抱きしめられたからだ。
コトリとガラステーブルにビール缶が置かれる音がする。笹塚は、私の頬を両手で取って優しくキスをした。
ちゅ、と小さな音がして唇が外される。優しくて大好きな、笹塚の黒い瞳に私の顔が映っている。
「――好き。由里が好き」
「うん」
「うん、じゃなくて。由里も言えよ」
「う。私も、こ、浩太さんが、好きです」
くす、と嬉しそうに笹塚が目を細めて、再び唇を重ねる。彼の唇からビールの、少し苦い味がした。
「呆れるほどバカで超鈍感で、料理は練習中だけどおにぎりだけは最高においしくて、必死になって毎週水曜日にやってる深夜アニメの面白さを熱く語る、そんな由里が好き」
「ばっ……ど……! お、おにぎりだけって! うう……そんなトコが好きとか、ヒドイ」
「フフ。でも、変な由里が好きな俺も割と変人だなーって最近自覚した」
「なんですかそれ……もっとヒドイ」
むぅ、と顔が歪む。言われれば言われるほど自分のどこに魅力があるのか判らなくなる。なのに笹塚は私の顔を見てくっくっと意地悪そうに笑った。
「勿論、小心者で小物な由里も好きだぞ?」
「だ、だから。……褒めてないよね?」
「褒めてはいないなぁ。事実を言ってるだけだ」
相変わらずこういう所は人が悪い。
……でも調子が戻ってくれたみたいで、そこは良かったかも。
笹塚が再びビール缶を取って口をつける。私もチューハイを一口飲んで、おずおずと聞いてみた。
「あの。大丈夫、かな」
「なにが?」
「その、さっきの人。元カノなんでしょ? 結構きつい事を浩太さんが言ってたから、大丈夫かなって……」
すると笹塚はフッと優しい目をして笑った。ワシワシと頭を撫でてくる。
「わかるのか。元カノだって」
「そ、そりゃあ、あんなにヨリ戻すだの、別れただのって言葉を聞けば」
「そうか、成長したなぁ」
撫でる手がワシワシからガシガシに変わる。髪がぐちゃぐちゃになりそうで、私は首を振って笹塚の手から逃れようとしたが、許してもらえなかった。
そのまま頭を掴まれて、笹塚の膝に倒される。……自然と、膝枕のような体勢になった。
すると次はガシガシ攻撃から一転して、優しく撫でてくる。時折、絡まった髪を解くように指で梳いていった。
「そう。あの人は、昔つきあってた人。大丈夫だよ。きつい事って言っても事実を言っただけだ。……むしろ、あれで諦めてくれるとすげえ助かるんだが」
「え?」
「……いや。その、あれだ。不安なら、聞くか? さっきの人のこと。それで由里が納得するなら、俺はいくらでも話すよ。だから」
自分の膝に私を乗せた笹塚がそっと頬を撫でてくる。上から見下ろしてくるのは、何かを懇願するような、悲しそうな顔。
「また変な風に考えて、ナナメの結論に落ち着かないでくれ。俺は、それだけが怖い。頼むから、俺から離れようなんて思わないでくれ」
ナナメの結論……。多分、あれか。昨年、私と笹塚が両思いになった、あの夜。それまで私は笹塚に好きな人がいて、私はフラれたと思い込んでいた。
そして思い出すと恥ずかしい程の暴走をしでかして、笹塚がキレてうちにきた。考えてみればキレて当たり前の事だったのだ。好きな女の子が勝手に勘違いして離れようとしたんだから。
まぁ、あの時は私もいっぱいいっぱいだった訳だけど、笹塚が今怖がってるのは、きっとあの時の二の舞なんだ。私がまた変な誤解をして、離れようとしないかと。
あながち、見当違いの心配でもない。だって私も、何がきっかけでトンデモ理論に走るか自分でもわからないからだ。すごく情けないけど、事実である。
でも、笹塚は不安にさせたくない。私だって、この人が好きなんだから。
「わかった。じゃあ聞く。あの宗像さんって人のこと」
「由里……」
「ちゃんと浩太さんの口から聞いておく。そしたら変な誤解しないで済むでしょ? それに、私が思ったことも話すようにする。一人で考えずに、ちゃんと相談する。……そうしたら、浩太さんは安心する?」
膝枕から起き上がって、じっと笹塚を見る。
すると彼は小さく息をついて私を抱きしめ、そのままソファに押し倒してきた。
「うん、それでいい。ありがとう由里」
「いいんだよ。ホラ、なんていうか、私も思考回路が変だって自覚してるし……。心配する気持ちもわかるっていうか、ははは」
「フフ、まぁ時々妙な事を考えたりするからちょっとな。でも、由里はやっぱり優しい」
さわ、と背中に手が回され、ブラウス越しにブラのホックをぷつりと外された。
ひっ!? な、なんで唐突のエロイベント展開!? い、いや、いい加減この思考もやめよう……。エロイベントだの、ベッドシーンだの。
「あ、あの、浩太さん。……お、お話、はっ?」
「うん。勿論話すよ。――だけど、その前に由里としたい」
「え!? っていうか、シャワーしてないですし、歯も磨いてな……んむ!?」
喋ってる途中に唇で塞がれる。そして舌が差し込まれ、ちろちろと撫でるように私の舌をまさぐってきた。
うう……! いつの間に笹塚の中でスイッチが入っていたのだろう。
全くそういう展開を予想してなかった私は面白いように笹塚に翻弄される。
ごつごつした大きな手がブラウスの裾から差し込まれ、ブラを上にずらして柔らかく触ってくる。ふにふにと揉んでみたり、形を確認するように撫でたり。
ちゅ、ちゅ、と小さな音を立てて笹塚があちこちにキスを落とす。こめかみに耳、ちろ、と舌が頬を伝って首筋にまた1つ、口付けを。
私の耳に聞こえるのは笹塚がしてくるキスの音と、布がこすれる音。時折つかれる、男の息遣い。
ぷつ、ぷつ、と胸を触るのとは違う手がブラウスのボタンを外して行く。いつも器用だなぁと思う。一度自分でやってみたけど、外せなかった。
すっかり前が暴かれた私の肌を、笹塚の手が滑る。まるで大事な芸術品でも愛でるように。または、可愛いペットをナデナデと可愛がるように。
きゅっと胸の尖りを摘まれて、上げたくない声が勝手に口から出た。
「あっ」
私の声を聞いて笹塚が嬉しそうに喉で笑い、私の頂を弄り始める。押したり、緩く引っ張ったり、摘んでくりくりと擦ったり。
我慢できない。やっぱり声が出てしまう。どうしてこんなに、人から触られると気持ち良いんだろう。自分で触るのとは全然違う。頂の刺激が体全体に巡って、すごく敏感になって……笹塚が首筋をちろちろと舐める度、身をよじらせてしまう。
ガク、と片足がラブソファから落ち、だらりとした体勢になってしまった。
「はぁ、あ、っ、ここ……せまい、よ」
「窮屈なのもたまにはいいだろ」
「そ、なの?」
「うん。……狭い所でヤるのって、興奮しない?」
そうかな……? よくわからない。でも、ベッドと違って身動きが取れないと、何かこう、刺激に対する衝動から逃れられないっていうか、時々変になりそうになる。……だから個人的にはベッドのほうがいいんだけど。
っていうか、私だけ服を中途半端に脱がされて、笹塚は何一つ脱いでないのが気に食わないのですが。
「ん、浩太さん……も、脱いで、よ!」
「え? ヤダ」
「……なんだと」
思わず険しい顔をしたのだろう。笹塚が私の表情を見てクックッと笑い、胸を弄っていた手が動いてスカートを軽く捲くり、太ももを触ってくる。
内腿をするすると撫でながら、酷く意地悪そうな顔で私を見下ろす。
「俺は脱がない。由里だけが脱ぐの」
「そ、そんな。ずる……っ、ア!」
「んん? ――へぇ、もう濡れてる。やっぱり興奮してるんじゃないか」
スカートの中で、笹塚の指が淫らに動く。ショーツのクロッチ部分をずらして秘所を弄り、軽くナカに指が押し込まれるとくちゅりと小さな水音が鳴った。
顔に熱が入る。……恥ずかしい。興奮とか言わないで欲しい。
笹塚が私の背中に手を回し、ソファに座らせる。そして目を細めて意地悪な事を言ってきた。
「自分で脱いで。ブラウスと下着」
「え……そ、そん、なの」
「ホラ、脱いで? 由里のカラダ、見たい」
ニヤニヤと見つめてくる。で、でも、自分で脱ぐのは非常に恥ずかしいのですが。いつも器用に上手に脱がしてくれてるんだから、いつもみたいに脱がしてくれたらいいのに。
なのに笹塚は私を急かすようにスカートの中の指を動かし始めた。くちゅくちゅと音が鳴って、ナカに指を出し入れしたり、なんか凄く気持ちよくてヘンになる所……秘所の芯を人差し指で擦ってくる。
たまらなくなって、私は彼の弄るその手をぎゅっと掴み、声を上げた。
「あ……、や、だ。やめて、この手」
「脱いだらやめてやる」
「うう」
笹塚は不思議と、この行為をする時だけちょっと意地悪になる。手首を掴んで動けなくしたり、後ろに手を回したり。恥ずかしい事を言ってきたり。
まるで好きな子をいじめて興味を引かせている男の子みたいだ。
恥ずかしくて困ってるのに、笹塚の指は一向に行為をやめてくれない。ぬるぬるとすごく気持ち良い所を擦ってきて、仕方なく私は自分でブラウスを脱ぎ、つけてる意味もないブラも外した。
ぱさ、とブラが床に落ちた時、やっと笹塚が弄っていた指を外してくれる。
しかしほっとしたのもつかの間、片足をぐいっと持ち上げられ、ソファの背もたれ部分にかけられる。……なんだかすごく、恥ずかしい格好にさせられている気が……。
「こっ、これ、はずかし……!」
「スカートはいてんだから恥ずかしくないだろ」
「いやいや!? 恥ずかしいですよ! やっ、何す……っ」
笹塚が器用に……こういう所だけはやたら器用に私のもう片方の足からショーツを外す。
脱がすなら全部脱がして欲しいのですが!
なのに私が文句を言う間もなく、彼は私の内股部分に顔を向けてスカートの裾を捲くり、ぺろりと秘所を舐め始めた。
「んッ! ああっ!」
ガツガツと食べるように、唇で食み、舌で秘所をまさぐる。例えようもない感覚が襲ってきて、私は悲鳴にも似た嬌声を上げた。
どうしよう、気持ち良い。……けどっ! こ、これは、だめだよ。だって……!
「ああっ! き、きたな…汚い、から、だめえ!」
風呂も入っていないのに。恥ずかしくて仕方がない。
「はっ……あ、だめ、こーたさんっ! お、ふろ……っ」
「余計な事を考えるな」
「よけ……じゃないよっ! んっ、ん……はぁ!」
「フフ。じゃあ、そんな事も考えられなくしてやるよ」
え? と思う間もなく、彼の指がナカにぐにぐにと入れられて、中でくいくいと動かされる。更にちゅるりと肉芽の部分を舐められて、びくんと腰が跳ね上がった。
まるで何かを掻き出すように指が動く。指の関節を曲げてナカを弄っては、ずるりと引き出されて、またナカに入れられて弄られて。その間も舌が蠢き、ちゅっと吸っては唇をつけたままゾロゾロと舐めたり、舌先で細やかに動かされたり。
汚いとか、ダメだとか、そういう思いがポーンと頭から飛んでいって、ただひたすら気持ちが良くて、頭がおかしくなってしまいそうになる。
「んっ、だめ、あっ……へん、変になる、からっ、もう、やめてっ」
「ダメ。許さない」
「え、なん……でっ! あっ、は。やだぁ、やめてぇ……!」
「何回ヤッてると思うんだよ? もう優しく気遣ってやる必要はないよな?」
……うう、つきあって最初のころは、私がやめてって言ったらやめてくれたのに。最近は私がおかしくなるまで行為をやめてくれない。ううん、おかしくなっても、やめてくれない。
気持ちよくって、気持ちよすぎて変になっちゃうのに。
このままだとまた、おかしくなってしまうのに。
舐める行為をやめた笹塚が私に覆いかぶさり、尚も指の抽挿をしながら私の耳元で低く囁く。
「今日も変になればいい。――イクまで弄ってやるから」
くるくるとナカで指が回され、指がもう一本追加される。笹塚は身体を起こして座り、私を見下ろしてひたすらに指を動かす。
私が変になるまで、きっとその行為はやめないのだろう。
くちくちと水音がリズムを刻むように鳴る。私が腕で顔を覆おうとすると、サッと腕が取られ、身動きが取れなくなった。
「や、やだ」
「嫌じゃない」
「こわい……あっ、こわい、よっ……!」
「お前はホント、怖がりだな?」
くすくすとおかしそうに笑ってぐちゅぐちゅと下半身で音が鳴る。私の腰がビクビクと動いてはっはとつく息使いが短くなっていく。
背中が冷たくなって、頭が熱くなる。
――変に、なる。
「あっ、あっ……や、やぁうっ!!」
ビクンと一際大きく肩や腰が跳ねて、頭の中が真っ白になり、衝動が頂点に達する。
そのまま息を継いで、ぼうっと焦点の合わない目で見れば、笹塚が酷く嬉しそうな顔をしていた。
指をぬるりと抜き、人差し指と中指で秘所を広げると、何かを確認するようにそこをジッと見る。
「だらしねえ顔。……ここも、だらしないな」
息を整える私にひどいことを言う。情けない顔をしていたのだろうか、笹塚はニッコリとして熱を帯びた目を向けてきた。
「俺の大好きな……俺だけの由里だ」
クス、と笑って頭を撫でる。彼のネツはまだ冷める気配を見せなかった。
カットソーにハーフパンツといった服装に着替えた笹塚は、ビール。私はチューハイを開けてこくこくと喉を潤す。
飲んでから初めて、自分の喉が驚くほどカラカラに渇いていたのだと気付いた。
ビールのラベルを見つめ、俯く笹塚。すでにもう、録画していたアニメを見ようなどという空気ではない。私もそんな気分になれない。
ソファに並んで座る笹塚を見上げると、何かを考え込んでいるような、無表情で固い……そんな表情をしていた。
「あの、さ」
ぽそりと私から話しかける。ゆっくりと、笹塚が私の方を向いてきた。
「あの、私、気にしてないからね。ああいうのって、結構言われてたんだよ。あ、最近は言われてないけど、でも、昔は毎日のように言われてて、だから聞き慣れてるし、大丈夫だよ」
「……そうか。ごめん」
「い、いや! 謝って欲しいんじゃなくて。なんて言えばいいのかな……。あっ、嬉しい! 嬉しかったよ、浩太さん!」
「嬉しい?」
少し不思議そうな表情に変わる。さっきみたいな表情の無い怖い顔じゃなくなって、心なしかホッとした。
「あの、……大事な人って言ってくれて。わ、私に、そんな魅力があるとは到底思えないけど。でも、浩太さんにそう思われてるのが解ったのは、嬉しかったよ」
「……当たり前だろ。何度も好きだっつってんのに、今更嬉しいとか、遅すぎお前」
「うっ。ち、ちがうよ! 前からも嬉しいって思ってたよ。でも、その……再確認と言いますかね、だから」
ごにょごにょと言う私の言葉がふいに止まる。笹塚に、抱きしめられたからだ。
コトリとガラステーブルにビール缶が置かれる音がする。笹塚は、私の頬を両手で取って優しくキスをした。
ちゅ、と小さな音がして唇が外される。優しくて大好きな、笹塚の黒い瞳に私の顔が映っている。
「――好き。由里が好き」
「うん」
「うん、じゃなくて。由里も言えよ」
「う。私も、こ、浩太さんが、好きです」
くす、と嬉しそうに笹塚が目を細めて、再び唇を重ねる。彼の唇からビールの、少し苦い味がした。
「呆れるほどバカで超鈍感で、料理は練習中だけどおにぎりだけは最高においしくて、必死になって毎週水曜日にやってる深夜アニメの面白さを熱く語る、そんな由里が好き」
「ばっ……ど……! お、おにぎりだけって! うう……そんなトコが好きとか、ヒドイ」
「フフ。でも、変な由里が好きな俺も割と変人だなーって最近自覚した」
「なんですかそれ……もっとヒドイ」
むぅ、と顔が歪む。言われれば言われるほど自分のどこに魅力があるのか判らなくなる。なのに笹塚は私の顔を見てくっくっと意地悪そうに笑った。
「勿論、小心者で小物な由里も好きだぞ?」
「だ、だから。……褒めてないよね?」
「褒めてはいないなぁ。事実を言ってるだけだ」
相変わらずこういう所は人が悪い。
……でも調子が戻ってくれたみたいで、そこは良かったかも。
笹塚が再びビール缶を取って口をつける。私もチューハイを一口飲んで、おずおずと聞いてみた。
「あの。大丈夫、かな」
「なにが?」
「その、さっきの人。元カノなんでしょ? 結構きつい事を浩太さんが言ってたから、大丈夫かなって……」
すると笹塚はフッと優しい目をして笑った。ワシワシと頭を撫でてくる。
「わかるのか。元カノだって」
「そ、そりゃあ、あんなにヨリ戻すだの、別れただのって言葉を聞けば」
「そうか、成長したなぁ」
撫でる手がワシワシからガシガシに変わる。髪がぐちゃぐちゃになりそうで、私は首を振って笹塚の手から逃れようとしたが、許してもらえなかった。
そのまま頭を掴まれて、笹塚の膝に倒される。……自然と、膝枕のような体勢になった。
すると次はガシガシ攻撃から一転して、優しく撫でてくる。時折、絡まった髪を解くように指で梳いていった。
「そう。あの人は、昔つきあってた人。大丈夫だよ。きつい事って言っても事実を言っただけだ。……むしろ、あれで諦めてくれるとすげえ助かるんだが」
「え?」
「……いや。その、あれだ。不安なら、聞くか? さっきの人のこと。それで由里が納得するなら、俺はいくらでも話すよ。だから」
自分の膝に私を乗せた笹塚がそっと頬を撫でてくる。上から見下ろしてくるのは、何かを懇願するような、悲しそうな顔。
「また変な風に考えて、ナナメの結論に落ち着かないでくれ。俺は、それだけが怖い。頼むから、俺から離れようなんて思わないでくれ」
ナナメの結論……。多分、あれか。昨年、私と笹塚が両思いになった、あの夜。それまで私は笹塚に好きな人がいて、私はフラれたと思い込んでいた。
そして思い出すと恥ずかしい程の暴走をしでかして、笹塚がキレてうちにきた。考えてみればキレて当たり前の事だったのだ。好きな女の子が勝手に勘違いして離れようとしたんだから。
まぁ、あの時は私もいっぱいいっぱいだった訳だけど、笹塚が今怖がってるのは、きっとあの時の二の舞なんだ。私がまた変な誤解をして、離れようとしないかと。
あながち、見当違いの心配でもない。だって私も、何がきっかけでトンデモ理論に走るか自分でもわからないからだ。すごく情けないけど、事実である。
でも、笹塚は不安にさせたくない。私だって、この人が好きなんだから。
「わかった。じゃあ聞く。あの宗像さんって人のこと」
「由里……」
「ちゃんと浩太さんの口から聞いておく。そしたら変な誤解しないで済むでしょ? それに、私が思ったことも話すようにする。一人で考えずに、ちゃんと相談する。……そうしたら、浩太さんは安心する?」
膝枕から起き上がって、じっと笹塚を見る。
すると彼は小さく息をついて私を抱きしめ、そのままソファに押し倒してきた。
「うん、それでいい。ありがとう由里」
「いいんだよ。ホラ、なんていうか、私も思考回路が変だって自覚してるし……。心配する気持ちもわかるっていうか、ははは」
「フフ、まぁ時々妙な事を考えたりするからちょっとな。でも、由里はやっぱり優しい」
さわ、と背中に手が回され、ブラウス越しにブラのホックをぷつりと外された。
ひっ!? な、なんで唐突のエロイベント展開!? い、いや、いい加減この思考もやめよう……。エロイベントだの、ベッドシーンだの。
「あ、あの、浩太さん。……お、お話、はっ?」
「うん。勿論話すよ。――だけど、その前に由里としたい」
「え!? っていうか、シャワーしてないですし、歯も磨いてな……んむ!?」
喋ってる途中に唇で塞がれる。そして舌が差し込まれ、ちろちろと撫でるように私の舌をまさぐってきた。
うう……! いつの間に笹塚の中でスイッチが入っていたのだろう。
全くそういう展開を予想してなかった私は面白いように笹塚に翻弄される。
ごつごつした大きな手がブラウスの裾から差し込まれ、ブラを上にずらして柔らかく触ってくる。ふにふにと揉んでみたり、形を確認するように撫でたり。
ちゅ、ちゅ、と小さな音を立てて笹塚があちこちにキスを落とす。こめかみに耳、ちろ、と舌が頬を伝って首筋にまた1つ、口付けを。
私の耳に聞こえるのは笹塚がしてくるキスの音と、布がこすれる音。時折つかれる、男の息遣い。
ぷつ、ぷつ、と胸を触るのとは違う手がブラウスのボタンを外して行く。いつも器用だなぁと思う。一度自分でやってみたけど、外せなかった。
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きゅっと胸の尖りを摘まれて、上げたくない声が勝手に口から出た。
「あっ」
私の声を聞いて笹塚が嬉しそうに喉で笑い、私の頂を弄り始める。押したり、緩く引っ張ったり、摘んでくりくりと擦ったり。
我慢できない。やっぱり声が出てしまう。どうしてこんなに、人から触られると気持ち良いんだろう。自分で触るのとは全然違う。頂の刺激が体全体に巡って、すごく敏感になって……笹塚が首筋をちろちろと舐める度、身をよじらせてしまう。
ガク、と片足がラブソファから落ち、だらりとした体勢になってしまった。
「はぁ、あ、っ、ここ……せまい、よ」
「窮屈なのもたまにはいいだろ」
「そ、なの?」
「うん。……狭い所でヤるのって、興奮しない?」
そうかな……? よくわからない。でも、ベッドと違って身動きが取れないと、何かこう、刺激に対する衝動から逃れられないっていうか、時々変になりそうになる。……だから個人的にはベッドのほうがいいんだけど。
っていうか、私だけ服を中途半端に脱がされて、笹塚は何一つ脱いでないのが気に食わないのですが。
「ん、浩太さん……も、脱いで、よ!」
「え? ヤダ」
「……なんだと」
思わず険しい顔をしたのだろう。笹塚が私の表情を見てクックッと笑い、胸を弄っていた手が動いてスカートを軽く捲くり、太ももを触ってくる。
内腿をするすると撫でながら、酷く意地悪そうな顔で私を見下ろす。
「俺は脱がない。由里だけが脱ぐの」
「そ、そんな。ずる……っ、ア!」
「んん? ――へぇ、もう濡れてる。やっぱり興奮してるんじゃないか」
スカートの中で、笹塚の指が淫らに動く。ショーツのクロッチ部分をずらして秘所を弄り、軽くナカに指が押し込まれるとくちゅりと小さな水音が鳴った。
顔に熱が入る。……恥ずかしい。興奮とか言わないで欲しい。
笹塚が私の背中に手を回し、ソファに座らせる。そして目を細めて意地悪な事を言ってきた。
「自分で脱いで。ブラウスと下着」
「え……そ、そん、なの」
「ホラ、脱いで? 由里のカラダ、見たい」
ニヤニヤと見つめてくる。で、でも、自分で脱ぐのは非常に恥ずかしいのですが。いつも器用に上手に脱がしてくれてるんだから、いつもみたいに脱がしてくれたらいいのに。
なのに笹塚は私を急かすようにスカートの中の指を動かし始めた。くちゅくちゅと音が鳴って、ナカに指を出し入れしたり、なんか凄く気持ちよくてヘンになる所……秘所の芯を人差し指で擦ってくる。
たまらなくなって、私は彼の弄るその手をぎゅっと掴み、声を上げた。
「あ……、や、だ。やめて、この手」
「脱いだらやめてやる」
「うう」
笹塚は不思議と、この行為をする時だけちょっと意地悪になる。手首を掴んで動けなくしたり、後ろに手を回したり。恥ずかしい事を言ってきたり。
まるで好きな子をいじめて興味を引かせている男の子みたいだ。
恥ずかしくて困ってるのに、笹塚の指は一向に行為をやめてくれない。ぬるぬるとすごく気持ち良い所を擦ってきて、仕方なく私は自分でブラウスを脱ぎ、つけてる意味もないブラも外した。
ぱさ、とブラが床に落ちた時、やっと笹塚が弄っていた指を外してくれる。
しかしほっとしたのもつかの間、片足をぐいっと持ち上げられ、ソファの背もたれ部分にかけられる。……なんだかすごく、恥ずかしい格好にさせられている気が……。
「こっ、これ、はずかし……!」
「スカートはいてんだから恥ずかしくないだろ」
「いやいや!? 恥ずかしいですよ! やっ、何す……っ」
笹塚が器用に……こういう所だけはやたら器用に私のもう片方の足からショーツを外す。
脱がすなら全部脱がして欲しいのですが!
なのに私が文句を言う間もなく、彼は私の内股部分に顔を向けてスカートの裾を捲くり、ぺろりと秘所を舐め始めた。
「んッ! ああっ!」
ガツガツと食べるように、唇で食み、舌で秘所をまさぐる。例えようもない感覚が襲ってきて、私は悲鳴にも似た嬌声を上げた。
どうしよう、気持ち良い。……けどっ! こ、これは、だめだよ。だって……!
「ああっ! き、きたな…汚い、から、だめえ!」
風呂も入っていないのに。恥ずかしくて仕方がない。
「はっ……あ、だめ、こーたさんっ! お、ふろ……っ」
「余計な事を考えるな」
「よけ……じゃないよっ! んっ、ん……はぁ!」
「フフ。じゃあ、そんな事も考えられなくしてやるよ」
え? と思う間もなく、彼の指がナカにぐにぐにと入れられて、中でくいくいと動かされる。更にちゅるりと肉芽の部分を舐められて、びくんと腰が跳ね上がった。
まるで何かを掻き出すように指が動く。指の関節を曲げてナカを弄っては、ずるりと引き出されて、またナカに入れられて弄られて。その間も舌が蠢き、ちゅっと吸っては唇をつけたままゾロゾロと舐めたり、舌先で細やかに動かされたり。
汚いとか、ダメだとか、そういう思いがポーンと頭から飛んでいって、ただひたすら気持ちが良くて、頭がおかしくなってしまいそうになる。
「んっ、だめ、あっ……へん、変になる、からっ、もう、やめてっ」
「ダメ。許さない」
「え、なん……でっ! あっ、は。やだぁ、やめてぇ……!」
「何回ヤッてると思うんだよ? もう優しく気遣ってやる必要はないよな?」
……うう、つきあって最初のころは、私がやめてって言ったらやめてくれたのに。最近は私がおかしくなるまで行為をやめてくれない。ううん、おかしくなっても、やめてくれない。
気持ちよくって、気持ちよすぎて変になっちゃうのに。
このままだとまた、おかしくなってしまうのに。
舐める行為をやめた笹塚が私に覆いかぶさり、尚も指の抽挿をしながら私の耳元で低く囁く。
「今日も変になればいい。――イクまで弄ってやるから」
くるくるとナカで指が回され、指がもう一本追加される。笹塚は身体を起こして座り、私を見下ろしてひたすらに指を動かす。
私が変になるまで、きっとその行為はやめないのだろう。
くちくちと水音がリズムを刻むように鳴る。私が腕で顔を覆おうとすると、サッと腕が取られ、身動きが取れなくなった。
「や、やだ」
「嫌じゃない」
「こわい……あっ、こわい、よっ……!」
「お前はホント、怖がりだな?」
くすくすとおかしそうに笑ってぐちゅぐちゅと下半身で音が鳴る。私の腰がビクビクと動いてはっはとつく息使いが短くなっていく。
背中が冷たくなって、頭が熱くなる。
――変に、なる。
「あっ、あっ……や、やぁうっ!!」
ビクンと一際大きく肩や腰が跳ねて、頭の中が真っ白になり、衝動が頂点に達する。
そのまま息を継いで、ぼうっと焦点の合わない目で見れば、笹塚が酷く嬉しそうな顔をしていた。
指をぬるりと抜き、人差し指と中指で秘所を広げると、何かを確認するようにそこをジッと見る。
「だらしねえ顔。……ここも、だらしないな」
息を整える私にひどいことを言う。情けない顔をしていたのだろうか、笹塚はニッコリとして熱を帯びた目を向けてきた。
「俺の大好きな……俺だけの由里だ」
クス、と笑って頭を撫でる。彼のネツはまだ冷める気配を見せなかった。
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「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
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