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二章 死神養成学校

十話

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 相変わらず発射台から湖の中にドブンと落ちて、岸辺で考え込んでいるとバサと羽音がした。見上げると白い天使ではなく黒髪の妖艶な死神がいた。
「この前は悪かったな」
 九朗は俺の側に腰を下ろしニンヤリと笑って言った。

「いや、お陰でアロウと……」
 後の言葉はもぞもぞと口の中に飲み込んだ。九朗はアロウのことを何処まで知っているんだろう。

「あんたは一体何者なんだ?」
「俺はカラスだ」
「カラス……?」
「ヴァルファの一族は皆、肩にカラスを従える。カラスはお目付け役であり、侍従でもある」

「ヴァルファの一族って、偉いのか?」
「まあな。たまにはあいつを呼んでやれ。でないと、あいつの機嫌がまた悪くなる」
 九朗はそう言うと立ち上がり、バサと羽音をさせて飛んで行った。

 俺、アロウを呼んでもいいのかな。
 やっぱし、ちょっとは遠慮してたんだけど。全然、飛べないし。


 アロウ───!!
 呼ぶと、いきなり背中から抱きすくめられた。銀の髪が優しく俺を包む。アロウの唇がふんわりと下りてきた。
 ああ、アロウ……。俺はあんたと一緒にいたいから、こうして死神に志願したのに、そう思っていてはいけないのか……?


「どうしたんだ、七斗」
 紫の瞳が心配そうに俺を覗き込んで聞いた。殆んど表情の変わらない人形のような顔を心持傾けると、長い銀の髪がはらりと落ちて湖面を渡る風に揺れ、キラキラと光が零れ落ちる。

 俺ってこの死神をものすっごく好きになってるんだよな。そう思ったら何故か無性に泣きたくなった。
 ほろり、ほろり…と、涙が転がり落ちた。

 俺の顔を覗き込んでいた死神は慌てたようだ。目を見開き、顔を上に向け、横に向け、下に向け、また俺の顔を見て目を逸らせた。
 そりゃあ困るよな。呼び出しておいて理由も言わずにいきなり泣き出したりしたら。
 俺がゴメンと謝ろうとしたら、いきなりきつく抱き締められた。

「泣くな、七斗。こんなところにまで連れて来た私が悪かった」
「え……?」
 そうじゃないんだけど。俺が泣いたのは……。しかし、俺を抱いたアロウはくぐもった声でさらに言った。
「押さえがきかぬ……」
「え……?」
 アロウはいきなり俺を抱き上げて空に飛び上がった。ギューンとものすごいスピードで翔けてゆく。目が回りそうだ。俺はアロウにしがみ付いた。


 * * *


 あっという間に新居予定の可愛い家に着いた。アロウは俺を抱いたままダダダッと二階に駆け上がる。
 ベッドに乱暴に投げ出され、アロウを見上げて驚いた。


 二本の角が生えている。牙もある。長い爪の生えた手が俺の身体を捕まえて、乱暴に着ている服を引き剥がした。

「あ、アロ…ウ……」
 ここにいるのは誰だろう。本当にアロウなのか?

 服を脱がされ再びベッドに転がされ、アロウが襲い掛かってきた。俺の身体をまるでガツガツと貪るように唇を這わす。獣のように低い唸り声を上げ、俺の魂までも貪り尽くすように。


 俺は空を飛べないから、死神になれそうもないから、あんたに食われるのか? でも、あんたに食われたら、俺はあんたの中で血や肉になって、あんたと一つになれるかな──。

 熱いアロウの塊が俺の中に押し入って来た。
 ああ、アロウ熱いよ……。もっと、もっと一つになりたいよ。

 俺は身体を開いてアロウの熱い塊を迎え入れる。もっと、もっと奥まで欲しい。もっと深く繋がりたい。
 アロウは俺を膝の上に抱き上げた。俺は腕と足をアロウの体に絡めて、牙のある唇にキスをした。アロウの瞳が燃えるように紅い。激しく俺の身体を突き上げてくる。

 ああ、あんたは本当は鬼なんだ──。

 俺の身体を貫くモノが熱く熱く燃え上がらせて、突き上げられる度に燃え広がり、業火となって身体ごと魂ごと燃やし尽くす。
 俺はもう何も考える事も出来ず、ただアロウに責め苛まれて喘いでいた。


 気が付くとアロウの腕の中にいた。俺の身体はまだあるようだ。アロウに喰らい尽くされたかと思ったのに。
 あれから何度も貫かれ揉みくちゃにされた。
 まるで本当に鬼のようだったよな。今までアロウは俺に対して割とソフトに接していたんだ。

「すまない」
 アロウが俺を見て言う。もう角も牙もない。水晶のような瞳の中に俺の蕩けた顔がある。

 あんなふうに抱かれたら誰でもイチコロかもな。そういえば九朗があいつに抱かれたら大変なことになるとか言っていたけど、こういうことか?
 もしかして、俺ってアロウに本気出されていなかったんじゃあ……。

 それなのに俺はこんなトコまで追いかけて来て、アロウに縋って面倒ばかりかけて……。何より未だに空も飛べないし。
 顔を俯けてしまった俺をアロウが抱き寄せる。


「お前にはずっと優しくするつもりでいたが」
 アロウはそう耳に囁き耳朶を噛んだ。顎やら頬やらに唇を這わせながら、手がまた俺の蕾の方に伸びてくる。
 散々にアロウに食い散らかされてもう燃えカスも残っていない筈なのに、指が身体に入ってくると、じわりとまた熱を帯びてくる。
「ああ……ん…、アロウ……」
 俺の身体ってこんなに貪欲だっけ。アロウの唇にキスをすると、俺の身体の中に入った指が暴れだした。俺の足を押し広げて、もっと質量のあるモノが入ってくる。
「ああん……、動いて、アロウ……」
 俺ってこんなに淫乱だっけ。アロウの身体に手も足も絡みつけ催促した。
 アロウは苦笑して、ゆっくりと俺を焦らすように動き始めた。
 ああ、そんなんじゃ物足りない。だって、さっきの嵐の余韻がまだ身体中に残っていて、あの熱を欲しがっている。
「アロウ……、もっと……」
 しかしアロウはなかなかくれない。俺を焦らせるだけ焦らせて、俺に何度もお願いさせた。
「私が好きか、七斗」
「好き……、愛してる」
「鬼でも……?」
「アロウが何でも好き。アロウになら魂も食べられてもいい……。ねえ、アロウ……」
 不意に俺を抱き締めているアロウの腕が熱くなる。
 紅い瞳、二本の角。アロウだけれど人形と違う、綺麗に整っているけれど表情のある顔。ニヤリとまるで悪人みたいに笑って、紅い瞳で覗き込み言った。
「その言葉、忘れるな」
 あんたって、鬼というより魔王みたいだ。

 その途端ドンッと突き上げられた。いつもの何倍にも膨れ上がったソレが俺の身体を魂を貫き引き裂く。
「はうっ……!!」
 きついのか、痛いのか、苦しいのか、快感なのか、もう何も分からない。極限まで引き出し、また身体の奥まで突き上げる。熱い熱い塊──。
 何度も何度も角度を変え、体勢を変えて突き上げられ、俺の身体の奥の奥まで貫いてアロウは俺を揺さぶった。
 身も心も何もかも真っ赤に燃やして焦がしてしまう、こんなセックスを知ってしまって俺はどうなっちゃうのかな。

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