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36 初心者

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 エラルドが菜々美の手を取って身体を抱き寄せる。軽く唇を啄ばんでから、おもむろにドレスを脱がせ始めた。
「あの、お風呂に……」
「後で一緒に入ろう」
 いや、それは菜々美の金太郎並みに太った姿を隙間なく見られるのでは? この世界、鏡が少ないのだ。あっても小さいし、貴重品なのだろうか。

 愚図愚図考えている内にエラルドはもう菜々美のドレスに取り掛かっている。嬉しそうに後ろのボタンをはずして床にパサリと落とした。
 肌着とコルセットとパニエだけになる。
 その後菜々美を抱き上げてベッドに下ろすと、上着を脱いでタイも解いてベッドに上がってきた。少し怖いかもしれない。


 菜々美は唾を飲み込んでベッドの上に正座し両手をついた。
「旦那様、幾久しくよろしくお願いします」
 頭を下げるとエラルドは正面に座って菜々美の手を取った。
「よろしく、ナナミ」
 真面目な顔で言っている。
 少しきつい目、スッと通った鼻梁、榛色の瞳。くせっ毛の黒い髪は後ろだけ長くして普段は三つ編みにしているけれど今は背中に垂らしている。

 抱き寄せてじっと顔を見て唇を寄せて来た。エラルドとキスしたのいつだっけ。ずっと側にいたのにあんまりそういうことしてないな。
 外国人とかキスが自然で上手いなあとか余計な事を考える。気を紛らわせているとも緊張感を解しているともいう。
 だんだんキスが深くなって舌とか入って来てのぼせたようになった。

 エラルドは頬やら耳やらにキスしながらコルセットを外して、なんか手間取っている。
(あっ、ブラしてた)
 菜々美の身体に回した手で一生懸命外そうとしている。身体を抱いて、肩口から背中を覗き見て「これはどうなっているんだ?」と聞く。
「あ、カギホックがあって──」
「ふうん?」
 決して焦っている感じではない。無理やり下ろしたり引っ剥がしたりしない、いつものエラルドであった。

「こうか、分かったぞなるほど」
 ぴらぴらと嬉しそうにブラを引っ剥がした。無論この世界にはまだない筈だから手間取ったのだろう。嬉しそうに匂いを嗅いだりひっくり返したりしている。
 菜々美はやっぱり恥ずかしくてパシンと取り上げる。

 エラルドはちょっと不服そうな顔をしたが菜々美の胸を見て、骨を見つけた犬みたいに顔を輝かして手を伸ばして来る。
 パウリーナには全然敵わない。隠そうとする手を開いてじっと見る。
「ええと、可能性についてだけど……、こう、もっと大きい胸の方が──」
「これがいい」
 胸にかぶりついた。いや、食べてはいない。そのくらいの勢いで嬉しそうに取り付いた。
「おお、肌が吸い付くようだ。手触りが良いな。ずっとこうしていたいぞ」と舐めたりしゃぶったり舌で転がしたり、両手を使ってもみもみくにくに──。
 恰好な玩具を見つけたと言わんばかりに熱心に両手と舌で弄り倒した。
「はふう……」

 所かまわずキスしているエラルドに聞く。
「ねえ、私、金太郎じゃないよね」
「ん? キンタロウ?」
「あー、ええとね、こう赤いエプロンをかけて、裸で熊をやっつけるのー」
「裸で赤いエプロン……」
(はっ、今何かヘンなこと言わなかった?)
「ぜひその恰好が見たい。俺の前でだけ見せてくれ」
「いや、ちょっと」
「はあはあ」
 何にハアハアしているんだろう。


 胸を弄り倒している内に、菜々美の息が上がって来る。エラルドの手が下半身に行く。パンティを引っぺがして両手に持って広げる。

「小さいな」
「きゃあ、見ないで!」
 パッと取り上げようとして失敗した。
「もう!」
 見ればソレは菜々美が穿こうと思っていた可愛いレースのフリフリショーツではなく、いつも穿いているお腹まですっぽり包むオバサンパンツだった。
「うわっ! 何でこんな時に勝負パンツじゃなくて、オバサンパンツを穿いてるのーーー!?」
(サイテー! うっうっうっ)
「なあ、これいいな。向こうのパンツか。肌触りがいいし、すっぽりと隠せて」
(うっうっうっ……、異世界ありがとうーーー!!)
「こういうのを工場で作ってもよいな」
 工場で下着を作ることを提案された。それはいいと思うけど、そのパンツを広げたり覗いたり匂い嗅いだりは止めてーー!
 やっとの思いで取り上げるとまた不服そうな顔をする。
 あのオバサン(聖女)こういう所が可愛いって思ったのかしら。
 菜々美は少しイケナイ気分になった。


 エラルドが起き上がって服を脱ぐ。痩躯だけど見事な筋肉だ。腹筋割れているし、逆三角形でこちらが恥ずかしくなる。トラウザーも脱いだ。ウッどうしよう。
 元気なソレが、立派なソレがこっちを向いている。

 どうしてそんなトコロにそんなモノがあるの? 大きいしこっち向いてるし。
「や、ヤダ、来ないで」
 背中を向けようとするのを引き戻して押さえ付けて、
「ナナミ……」
 心無しか息が早くなって顔も上気しているみたい。
「状況を説明されると萎えるぞ」
「う、ごめんなさい」
 動転して思っている事と喋っている事の区別がつかない。
「こっちを向いて」
「う…ん」
 腕を取って抱き寄せる。
「エラルド」
「大事にするから」
「うん。私エラルドのこと好きよ。でもちょっと怖いの……」
「分かった」
 力強く請け負った。けれど、
「分かったけど余裕がない」
 すぐに狼になって襲い掛かって来た。


「エラルド?」「何だ」
 菜々美の股間に手を伸ばして来る。
「恥ずかしいんだけど」「ちゅ」
 耳に首筋にキス。
「何が?」「エラルドの裸が」
「何で?」「ちゅ」「だって」
「これから何度も見るんだから慣れろよ」
「いや、でも」
 ものすごい格好をして受け入れる。こんな格好ってアリなの?


 エラルドが本格的に菜々美の身体に覆い被さって来て少し緊張したけれど、菜々美は受け入れようとした。しかし菜々美の身体はまだ硬い。なかなか一つになれなかった。
 もどかしい。一つになれない。何かに阻まれて「くっ」と一度身体を離し、試行錯誤する。
「力を抜いて」「うん」
 一つになりたい。もどかしい。
「あ……ん、くっ……」
「ナナミ……」
 やっと貫通したらしい。エラルドのキスの嵐。
「ふはう……」
「きついな、ナナミの内部。気持ちがいい」
 菜々美は物凄い恰好をしてエラルドにしがみ付いており、ソコを押し広げられて大きいモノが入って一杯一杯だ。
「……んっく、そうなの」
 思わず菜々美の内部にいるエラルドのソレを意識する。
「くっ、締め付けて来る」
 耐えるような嬉しいようなエラルドの声。
 体勢を整えて掻き抱く。
「動くぞ」
「うん……」
 エラルドの身体に手も足も巻き付く。揺さぶられて痛み以外のものが押し寄せて身体が熱くなる。熱い、燃え上がるよう、どうなっているの?
 気持ちがいいまではいかないけれど、身体の内部から熱くなって揺さぶられている内にエラルドが果てて菜々美も訳が分からなくなった。

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