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第二章~ヒューマンの国~

52話 勇者パーティーから配信を学ぶ その2

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《この里を犯すもの共に警告する。我々は魔族に屈する程脆くはない。》

「そこにいるんですのね! 早く出てきなさって!! 先程の私たちの重戦士が木を切ろうとしたことなら謝りますわ」

《それだけではない。森の中だというのに貴様らは至る所で炎を使い森を焼いてきただろう》

「それは魔物を倒すため仕方なくですわ」

《それではそこの勇者が見晴らしが悪いと斬撃を飛ばして木を薙ぎ倒したことに関してはどうなのだ》

「それはこんな風に木がいっぱいあると戦いの時に邪魔で仕方ねぇんだよ!」

《我らエルフと国交を結びたいと言いながらまるで我らの文化をまるで理解しようとしていない。そんなもの達と国交を結ぶつもりはない》

「俺たちもわざわざこんな遠くまできたのに勇者である俺に顔も見せない無礼な奴らと国交を結ぶなんてありえないなぁ! やっちまうぞお前ら! 見てる奴らもそう思うよな!」

〔そうだそうだ!〕
〔やっちまえー!〕
〔さっきはあんなこと言ってたがどうせ魔族側につくんだ! 燃やしちまえ〕
〔エルフも魔族の一員だー〕
〔でもエルフと戦っちゃったらまずいん
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 コメント欄も殺気立っている。それにまともな意見というか自分たちと反対する意見は全部BANしてるのか? だからコメント欄にも信者しかいなくてより一層根性が曲がっていった?

 今日だけだが配信を見ていて思うのは勇者達が余りにもエルフに対して理解が無さすぎる気がする。勇者達も全員俺みたいに異世界から転生してすぐエルフの里に飛ばされたとかではなくヒューマンの国で少しは噂なり情報なり仕入れることが出来たはずだ。

 どう聞いても勇者パーティーに非があるのは明らかだ。だが信者がこんなにいては自分たちの過ちに気付くことも出来ないだろうな。

「よーしじゃあこの今からこの森を焼く配信にしようぜ! そっちの方が面白いに決まってる!」

「そうですわね。私もこんなに無礼な一族だとは知りませんでしたわ。私だって好きで森を焼いていた訳ではありませんのに、好きで焼くとどうなるのか見せて差し上げますわ!」

「今度は魔物をぶち殺す力で木を切ってやろう。俺も舐められたままじゃ気分が悪いからな」

 そう言って思い思いの破壊行動を口にした時地面から突如ゴーレムが現れた。

「魔物か!? じゃあ既にエルフは魔族側についたってわけか。じゃあ正式にぶっ壊す権限を得たってわけだ。勇者様に逆らうものには死をってな!」

 ゴーレムが森を壊そうとする勇者パーティーの前に立ち塞がった。配信越しだからかもしれないがどうにも魔物のような禍々しさを感じない。これは魔物ではなくエルフの魔術か何かじゃないだろうか? 伝えようかと思ったがどうせ即BANされるだろうと思い黙って見ておく。

 流石に冒険カテゴリ一位は伊達じゃなく、戦闘面では鮮やかに戦っていた。重戦士が前衛を張り大斧をぶん回しつつ、勇者がその攻撃にも耐えたものを倒し、大魔法使いが遠距離から攻撃を放っている。うーんこの配信から見始めなければ俺ももっといい印象を持って信者になってしまったりするのだろうか?

 もう昼になっていたので勇者達の戦いを見ながら朝ドーコが失敗して出来た卵サンドを食べながら配信を見る。

 勇者が優勢だったのも束の間でゴーレム達はやられてもやられてもすぐに再構成され召喚され続ける。いくら戦闘慣れしている勇者パーティーであってもこうも無尽蔵にゴーレムが湧いてきてはたまらないと言った様子だ。

「よし! こうなったらあの技を使うぞ!」

「え!? でもそんなことをしてしまっては本当にエルフの里が崩壊してしまいますわよ!」

「いくら何でも本当にぶっ壊すのはまずいぜ」

「どうせもう魔族に堕ちたんだ。早いうちに潰しておいた方が身のためだ!! じゃあいくぜみんな!!」

〔おぉー久々に見れるぜ!〕
〔これ生で見れるとかマジ感動〕
〔来た来た来た来たー〕

 勇者の持っている剣に光がどんどん集まっていく。

究極正義執行ジャスティスブレード!!!」

 ズバシャーン!! ゴーレムは全て土クズへと帰り、辺りの木が全て切られ、ほんの一瞬だが斬撃が霞のようなもの切りそこにエルフのようなものが映った気がする。

〔流石メルフィンさんの究極正義執行ジャスティスブレードだぜ〕
〔一瞬で辺りが平原になっちまった!!〕
〔生で見れて感動だぜ〕

 他の視聴者はどうやら一瞬エルフが映ったことには気付いていないらしい。みんな勇者の必殺技とやらにご執心だったからな。勇者一行も気付いていないらしい。

 自分の配信を開きエマに確認する。

〔ドワルフ:エマ! 今チラッとエルフの里が見えたんだが被害とかは大丈夫か?〕

〔エマ:えぇ。なんとか被害は出てないみたい。それにしてもエルフ一同で作ったこの結界を破るなんて一体どんな馬鹿げた威力をしてるのよ〕

〔ドワルフ:被害がなかった様で何よりだ〕

「ふぅここまでして何もなかったんだからきっと別の場所に拠点があってそこから俺たちに話しかけてきたんだろうな。どこまでも陰険な種族だぜ!」

「本当あそこまで丁寧に私たちが礼をしているっていうのになんていう無礼な種族なんでしょう!」

「これはもうエルフとは国交断裂だな」

「そうに決まってる! 俺も王に向かってエルフは魔族に堕ちたって言ってやるぜ! というわけで今日は俺たちも疲れたし明日からは俺たちの国に向けて帰る配信をするからよろしくな」

 そう言って勇者パーティーの配信は終了した。何故こんな配信に人は惹きつけられるんだろうか? もしかしたら昔はもっとマシな配信だったのかもしれない。でもいつの日か天狗になりこう言った配信になったのだろう。大魔法使いは止めたがってた見たいだが。

 それにしても1つ大きな問題が出来たな。エルフとの国交をやめるということだ。しかも散々な言いようだった。多くの人が見てる配信であんなことを言われてしまっては俺たちがエルフの里に向かうときについて来てくれる冒険者がいなくなるかもしれない。

 それに俺の耳はエルフの様にシュッと長い。俺ももしかしたら迫害の対象になる可能性は大いにある。また追放されるのはごめんだぞ。

 今日は勇者配信が暴れないかが不安で全然鍛冶に力が入らなかったな。一応謝っておこう。

〔ドワルフ:いやー今日はあんまりいい作業配信が出来なくてすまなかったな。ちょっと見てた配信が危なっかしくてそっちに集中しちゃってな〕

〔まぁいいんじゃねぇか? 俺もドワルフから技術を盗むために見てたら作業遅れてるしな〕

〔俺も俺も〕

〔というかみんなドワルフの配信を見てるから、ドワーフの村のピンチかもしれない〕

〔ドワルフ:ほどほどにしておいてくれよ。あっそうだエマ勇者達の配信は見ていたか?〕

〔エマ:えぇドワルフの配信を見ながら同時に見ていたわ。攻め込む時にも配信を開いてるなんて馬鹿よね〕

〔ドワルフ:確かに馬鹿だな。じゃなくて問題はエルフと国交断裂するってことだ。何か問題があったりするんじゃないのか?〕

〔エマ:さぁ? 元々国交なんてなかったのよ? それを断裂だなんて意味がわからないわ。ただあなた達が私のところに来るのが難しくなったのはしんどいわね〕

〔ドワルフ:やっぱりそうなるよな。まぁできる限りはするが以前の計画より遅くなることは覚悟してくれ〕

〔エマ:こうなっちゃった以上最悪来れなくなっても文句を言えないわよ〕

〔ドワルフ:最大限の努力はする。というわけで今日は配信を切ろうと思う。ちょっと今日は料理に力を入れるんでな〕

〔エマ:お疲れ様。私の方は何か方法がないか考えておくわ〕

〔お疲れ様〕

〔おつかれ〕

 ふぅー勇者め、ややこしいことだけしやがって。しかも全然配信の勉強にならなかった。とりあえず今日の白身魚のフライでも作りながら考えるか。
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