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第二章~ヒューマンの国~

44話 馴染みの酒場

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「「かんぱーい」」

 木のジョッキをぶつけて一気にそれを飲み干す。

「それにしても良くドーコちゃん、ジョブに鍛冶師が入ってない人と結婚したねえ。ドワーフは鍛冶が命より大事だったんじゃないのかい? それともそれほどまでに旦那さんが魅力的だったのかい?」

「うーんここだけの内緒話だけどドワルフは【ドワーフの神】って言うユニークスキル持ちなんだ」

「ほーユニークスキルかい! そりゃ珍しい。でも鍛冶師がなきゃ名前的に発動しないんじゃないかい?」

「それがそうじゃなかったんだよ……。むしろ鍛冶師がなくてもメインジョブ鍛冶師以上に鍛冶仕事ができるんだよ。ズルだよね!!」

「だからズルじゃないって」

「そりゃすごいな。じゃあドーコちゃんはその鍛冶技術に惚れ込んだってわけかい」

「それもあるけどドワルフは優しいし魅力的だったってのもあるよ!……って何言わせるのさ!!!」

「まさかあのマジックアイテムにしか興味がなかったドーコちゃんが惚気話をするようになるとはねー俺も思いもしなかったよ」

「うー!」

 ドーコが横で顔を真っ赤にして照れている。

「そうだ! マジックアイテムといえば遂に完成したんだよ!!」

「なんだって!? あの伝説のマジックアイテムがかい!?」

「そうそう! 伝説のマジックアイテムが! ほらこれがその大斧だよ」

 そう言ってドーコがカウンターに大斧を出す。

「おぉこれが伝説のマジックアイテムか!!」

 そういえば店長のサブジョブは剣士だったし昔は冒険者だったりするんだろうか?食い入るように見つめる店長を見てそんな事を考える。

「それでこいつはどんな効果なんだい?」

「大竜巻を起こすことができるんだよ! それで旅の道中出くわしたなんとかって言う山賊を倒したんだよ! それでこの大きな卵が戦利品ってわけ」

「常闇の夜な」

「そうそう! そんな名前の旅団だったよ。でもこの大斧で一発だったから大したことないんだろうね」

「ほーう石だと思ってたら卵だったのかって馬鹿言っちゃいけねぇ。『常闇の夜』って言ったらここいらで1番の山賊じゃないか! もしそいつが本当だとするととんでもないことになるぞ!」

「具体的にどうなるんだ?」

「新聞に載るだろうし、あんた確か配信者だったよな?」

「そうだが」

「もう引き渡しちまったのかい?」

「いや多分まだだと思う。シュドが引き渡し次第報酬金を渡すって言ってたしな」

 そう言ってシュドの配信を開くとまだシュリガイムには着いていないようだった。

「あんたあのシュドさんと知り合いだったのかい! あーそうかシュドさんはドワーフも担当してたな。シュドさんならそこら辺はしっかりしてくれるだろう」

「それで新聞に載ることと配信者がどう関係するんだ?」

「新聞に載るときに配信を宣伝してもらうんだよ。そうすりゃザクザク視聴者が増えるって寸法だ」

「そりゃ凄いな。ヒューマンの国でもそんな風に広まればって、倒したのはドーコだからなぁ。そこに俺の名前を載っけても荒らされそうで怖いな」

「でもマジックアイテムにしたのはドワルフだしいいんじゃないかな?」

「どう言うことだい!?」

 またエルフとの混血の説明をしなきゃならないのか? ここではそんな差別がないといいが。そう考えながら俺は被っている帽子を脱ぎシュルッと細長い耳を見せる。

「髭は長いからてっきり背の高いドワーフかと思ったがあんたエルフだったのかい?」

「いやどうやらドワーフとエルフの混血らしい」

「ドワーフとエルフの混血だって!? あのいがみ合ってる種族の!? そりゃ大変な思いをしてきたんだろうなぁ」

 勝手に悲惨な幼少期を想像されている気がする。大変な思いといえば追放されたことぐらいだな。でもそのお陰でドーコと会えたしそこまで悪いことはなかったな。

「そうか。それでドーコちゃんがずっと探してた協力してくれるエルフが見つかったってわけだね」

「そうなんだよ! お陰で私は夢が叶ったんだ!」

「それで今度はこの国に来て何をするつもりなんだい? 夢も叶ったしドーコちゃんの家でのんびり暮らしてればいいじゃないか?」

「いやーそれが配信してたらマジックアイテムを作るのに協力してくれたエルフがいてな。そいつとの約束で今度はエルフの里に行かなきゃならないんだ」

「エルフの里だって!? ドーコちゃんは大丈夫なのかい? そんなことしたらドワーフの村の連中に殺されちゃうんじゃ」

「大丈夫だよ。村の方の問題もドワルフが解決してくれたんだよ! だからちゃんとドワーフ式の結婚式が出来たんだよ」

「聞けば聞くほどすごいね旦那さんは」

「自慢の旦那だよ! 財布に関して以外は」

「ぐっまだ言うか」

「何かあったのかい? もしかしてヒューマンの国で早速大金使っちゃったとか?」

「そうなんだよ。ヒヒイロカネが売ってたからって20万リラもするのを買っちゃったんだよ!」

「20万リラだって!? そんだけお金があったら俺は当分遊んで暮らすよ。それにしたってヒヒイロカネだなんて思い切った事をしたね。転売でもするのかい?」

「いやなんで転売なんだ? 俺が加工するに決まってるだろ?」

「いくらドワルフでも……そういえばドワルフって【ヒューマンの良心】持ちだったからもしかしたら……」

「なんだって【ヒューマンの良心】も持ってるのかい!? じゃあ大魔法使いの素質があるってことじゃないか! 今すぐ冒険者ギルドにでも行ってジョブを選び直した方がいいよ。メインジョブ配信者なんてそもそも聞いたことがない」

「ドワーフの冒険者ギルドで試してみたんだがどうやら俺はジョブ変更できないらしい」

「そりゃ残念だ。大魔法使いなんてこの世に1人しかいないからな」

「それでヒヒイロカネが俺じゃ無理だって言った理由は何なんだ?」

「ヒヒイロカネは魔法の変換率がいいって言ったよね?」

「あー確かにそんなこと言ってたな」

「だからヒヒイロカネを製鉄するには普通の炎だけじゃなく魔法に必要なヒューマンの祈りの力がいるんだよ。だから扱える人はヒューマン魔法使いとタッグを組んだ鍛冶師に限られてたんだよ。でも【ヒューマンの良心】を持ってるドワルフならもしかしたら」

「ドワーフの技術でヒヒイロカネ装備が出来ちまったら大変なことになっちまうぞ!?」

「でも多分効果を発動させるためにはまた適した種族、今回の場合ヒューマンに教えてもらう必要があるな」

「あっそうだったね。じゃあやっぱり今すぐ買わなくてもよかったじゃん!」

「でもいつそんなチャンスが巡ってくるか分からないんだから買っておいて俺は正解だと思うんだがなー。っと話し込んでたらもうこんな遅い時間になっちまったな家に無事着けるか?」

「店長いつもみたいに今日はここに泊めてよ」

「まぁいいけど特別だからね、ここは宿屋じゃなくて酒場なんだから」

「じゃあ今日は深夜まで宴会だー!」

「すまんな俺まで」

「なぁにドーコちゃんの話はいつ聞いても面白いからね。それにドワルフの話も聞いていて心臓に悪いけど愉快だから構わないよ」

「そうだ。ドワルフの交渉術について今度は話そうかな」

「おうそうだそうだどうやって20万リラも手に入れたか気になってたんだ」

 宴会はまだ続きそうだ。
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