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第二章~ヒューマンの国~

43話 さっきの商売について

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 ギルド長の部屋を出た途端ドーコが質問をしてきた。

「なんであんなにいっぱいあったお金を一気に使っちゃったの? それに商人ギルド長はなんかドワルフのことを褒めて気に入ってたし! 訳がわかんないよ!」

「それはなドーコ、俺が今1000万リラを持って帰ったら商人ギルドはどうなる?」

「その後、その装備を更に高値で売ってもっと利益が出るよ」

「そりゃその後時間が経てばそうなるが今すぐもっといい交渉が出来そうな機会が来たらどうする? すでにかなりの大金を支払った後だ。なかなか手を出すことは難しいだろう」

「それなら待って貰えば」

「その間に別の所で売れてしまったらどうする? 地図で見る限り確かにここが最大の商人ギルドのようだが他にも売る場所はあるようだしな」

「んー? でもいまいち納得できないよ」

「だから俺はそう言った場合のために相手も支払った額が少なくなるよう調整したんだ。魔法鞄の値段は大体想像がシュドのでついたしな」

「それにしてもどうして家を郊外の方にしたの? 絶対中心部の賃貸にした方が楽だよ」

「賃貸かどうかは俺の好みが大きかったな。でも場所に関しては意味があるぞ」

「どんな意味があるの?」

「考えてもみろ。ここはドワーフの村じゃないんだぞ。朝も夜もカンカンカンカン鉄を叩いてたら間違いなく苦情がくる。でも郊外だったらそこまでひどい苦情は来ないだろう」

「うーん確かにそれはそうだね。1人だったから気付かなかったよ」

「それに残りの50万リラだって結構な値段だろ?」

「うんそうだね」

「1000万リラの商品を相手はこれで50万リラで買ったってことになるんだ」

「おぉーそれならすっごく相手もお得だね!」

「そういうことだ。じゃあ魔法鞄を貰って、家の場所聞いて行ってみるか!」

 そう言ってさっきの受付のお姉さんに魔法鞄を貰う。

「魔法鞄ですが本人様認証として魔法印を押していただいてもよろしいでしょうか?」

言われた通り押すとほんのり光が放たれた。

「これでドワルフ様専用の魔法鞄になりました」

中身を確認するとしっかりと50万リラと俺用の名刺が入っていた。

「ドワルフ様のお家の場所ですがこちらになっております」

「ちなみに中心街だった場合ってどこになりますか?」

「こちらになります」

 地図に印をつけてもらい、一安心する。やっぱりこっちを選んで正解だった。土地広くしっかり元鍛冶場で周りに建物がない。きっと最初から試すつもりだったんだろう。

「ありがとうございました。それではまた」

「はい。良き商いを」

 そう言って商人ギルドを後にする。ここからマイホームにはかなりの距離があるな。それに晩ご飯を食べられる状況かわからない。掃除をする必要があるかもしれないしな。

「ドーコ、ちょっと早いけどここら辺で晩ご飯を済ませるか。あと当分の食材と鍛冶に必要な素材を買って帰ろう」

「そうだねー。いちいち来るの面倒だもんね。それにその魔法鞄も有るし」

「しまったなここら辺でおすすめの飯屋でも教えて貰えばよかったな。でも今更戻るのもダサいし」

「それなら私いいお店知ってるよ! エールを出す良いお店!」

 エールを出す良いお店なんじゃなくてエールを出すから良いお店なんじゃないだろうか?

「ほらいこ!」

 ドーコがこちらに向かって手を突き出すのでそれを手に取りドーコおすすめの店へと向かう。道中に様々な商店があったのでそこで塩漬けや日持ちするものを買っていく。後寝巻きを買う。なんとしてもしっかりとした睡眠の取れる寝巻きを買う。ドーコも可愛らしい寝巻きを買っていた。買えば買うほど分かるのだが50万リラでも十分裕福な生活が出来そうだ。ある程度の食料も買った。

 次は鍛冶の素材だがこちらはなかなか高かった。特にドワーフ鋼は店に並んではいる物の1万リラとなかなか手が出せるものではなかった。

〔ドワルフ:なぁドヴァルグのみんな、ドワーフ鋼をこっちに安値で送ってくれたりしないか? こっちだと高くて高くて〕

〔いやードワルフの頼みなら聞いてやりてぇんだが、前のスタンピードで鉄を取りに行く奴も怪我しちまってなかなか取れねぇんだ〕

〔こっちでもヒューマンの国から鉄を買おうかって話になっててな〕

〔そういうことだからすまねぇ、仕送りはできそうにねぇ〕

〔ドワルフ:いやいやこっちが悪い。早く傷が良くなることを願ってるよ〕

 うーむこうなったら少々値が張るが買うしかないだろう……。あーいっぱい買い物してたら残り23万リラしか無いぞ! もう半分しかない!!

 なんて事を考えながら歩いてると一際高い値段で売られている金属を目にした。

『ヒヒイロカネ 20万リラ』

「なぁドーコ、ヒヒイロカネってなんだ? ものすっごく高いんだが」

「あーあれは魔法の変換率が凄くいい金属なんだよ! だから一流の魔法使いとか魔法剣士が使ったりするね。でも私たちドワーフにはあんまりって確かドワルフは【ヒューマンの良心】持ちだったよね。だったら使えるかもしれないけど……まさか買うなんて言わないよね?」

「いやー新しい金属もいいかなーと」

「バカドワルフ!! もう23万リラしかないんだよ! ヒヒイロカネなんて買っちゃったら残り3万リラになっちゃうじゃん! 私と財布の管理変わんないよ!?」

「ぐっわかったとりあえず我慢することにしよう」

「はーいはーい貴重なヒヒイロカネだよー! この機会を逃したらもう当分買う機会なんてないよー!」

「買います!」

「毎度あり!!」

 握っていた手がギリギリと強く握られる。

「ねぇ……さっきの話聞いてた?」

「聞いてた聞いてた!」

「じゃあなんで買っちゃうのさ馬鹿ーーー!!!」

 辺りの人がドーコを注目する。

「ドーコそんなに街中で大きな声を出すもんじゃない」

「誰が出させてるの!」

「ほらほら買い物も全部済んだしドーコがおすすめの店に行こうぜ。そこでエールを飲んで長旅の疲れを癒そう」

「長旅よりさっきの怒鳴り声に疲れたよ」



★   ★   ★



「ほらついたよ」

「なぁドーコ繋いだ手を緩めるのはいつになるのかな?」

「あー忘れてたー」

 絶対嘘だこの腹黒リ。

 カランカラン

「いらっしゃい。こりゃー珍しいお客さんだ。久しぶりじゃないかドーコちゃん」

「うん! 久しぶりマスター」

「それにしても隣の人は誰だい手なんか繋いじゃってさ。もしかしてドーコちゃんのいい人かい?」

 ドーコが連れてきたのは飯屋じゃなくてバーだった。まぁエールの時点でそんな気はしてたんだが。

「こっちはドワルフ! 私の旦那さんだよ!」

 そう恥ずかしげもなく紹介され俺が逆に困惑する。まだ結婚した実感が湧いていないからだ。

「どーも俺はメインジョブ配信者、サブジョブなしのドワルフだ。これからこの国でドーコと2人で暮らして行くから何度か寄らせてもらうことになると思う」

「おぉそうかいそうかい俺はメインジョブ料理人サブジョブ剣士のバディルだ。ご贔屓によろしく頼むよ」

「じゃあマスターいつもの二人前よろしく!」

「あいよー」

 早く家を見に行きたいがドーコ馴染みの店となっては話が長くるだろう。

〔ドワルフ:じゃあ今日の配信はこの辺で。見てくれてありがとうな!〕

〔エマ:おつかれ。早くお金貯めてね〕

 うっそれを言われると弱い。

〔ドバン:お疲れ様。明日鍛冶場見せてくれよ!〕

〔ドワルフ:あー期待はそんなにしないでくれよ。〕

 そう言ってから配信を切る。今日の夜も長そうだ。
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