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第一章~ドワーフの村~

40話 VS山賊

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 なかなかヒューマンの国は近くにあるわけではなく、俺達は夜になったので馬車で睡眠をとることになった。従者の人とシュドは焚火をしてその付近で眠ることにするそうだ。眠ろうとした時、シュドが静かにこちらに来て馬車のドアを開ける。

「申し訳ありません。どうやら山賊に狙われてしまったようです。私共でできる限り対処しますので、どうぞご安心してお眠りくださいませ」

 そういわれてそうですかと眠れるような図太い性格ならよかったのだが生憎俺はそんな人間ではない。

「ドーコ俺達も手伝うぞ。ここまで送ってくれた恩もあるんだ」

「うん! 私も重戦士になってから初めて戦うからワクワクするよ!」

 こんなことでワクワクしないでもらいたいな。それでも怯えて戦えないよりはマシか。俺達も馬車を出て臨戦態勢に入る。だが相手も手慣れているらしく夜に紛れてなかなか姿を現さない。そんな冷戦状態に嫌気がさしたのかドーコが思いっきり大斧をぶん回す。当たりの木がなぎ倒され、隠れていた山賊たちも大竜巻に巻き込まれ瀕死状態になっていた……。

「これなら面倒くさくないし早いでしょ! 重戦士になったおかげで今までより楽に触れる様になったよ!」

「だからってちゃんと加減したのか? いくら山賊だからと言って殺しちゃったら後味悪いだろ」

「なっなんだこれは!?!?」

 初めてドーコの大斧を見た従者が驚きの声を漏らしていた。幸い死傷者はおらず、全員シュドが手際よくロープで縛り上げていった。

「それにしてもどうして俺らを襲ったんだ?」

 俺はさっきの大竜巻のなか唯一喋れる状態にあった、山賊のリーダーらしき人物に尋ねた。

「どうして俺らがそれをいわなきゃならねぇんだ?」

 シュドが縛っていたロープを更に締め上げながら、ナイフを首筋に押し当てる。どうやら本当に俺達は馬車で眠っていても大丈夫なようだったな。

「わかったよ。一昨日だったか、シュリガイムから大層な馬車が出ていくのが見えたんだよ。こりゃお宝の交渉に行くに違いねぇと思って俺達はあんたらが帰ってくるのを待って寝静まるのを待ってたんだ」

「シュリガイムってなんだ?」

「そっかドワルフはヒューマンの国の名前を知らなかったんだね」

 ほーヒューマンの国はシュリガイムっていうのか、覚えておこう。

「そういや山賊だったらアジトに行ってみようじゃないか。どうせ今回の襲撃に全力を懸けてそうだしな」

そういってあたりに倒れている大量の山賊を見る。

「山賊のアジトなんていってどうするの?」

「何かお宝があるかもしれないじゃないか!」

「ドワルフ……山賊目指してるの?」

「馬鹿なこというな! とりあえずシュドさんに預けて盗品なんかは変えそう。それでも余ったものは俺達で分けようじゃないか。それぐらい許されるだろ」

「はい。その程度でしたら問題ないかと思われます。それにこの山賊、ギルドで指名手配中の『常闇の夜』かと思われます。私が連れていきますが、私共は何もしておりませんので報酬はドワルフ様にお渡しいたします」

 そういって優しい顔のままシュドさんがナイフで山賊の首の薄皮を切りアジトの場所を吐かせる。優しい顔のままなのが怖かった。

「じゃあさっそくアジトに行くか!」


★   ★   ★



「それにしてもなんとも悪臭のする場所だなー」

「綺麗な山賊のアジトもそれはそれで怖いからね!」

 シュドさんは捕まえた山賊を見張っているため従者とドーコと一緒に来た。従者も魔法鞄を持っているのでお宝を運び出すことはできるようだ。それにしても暗い。あの山賊たち相当夜目が効くのだろう。アジトには明かり一つなかった。

「これをどうぞ」

 従者が魔法鞄から松明を取り出す。どんな状況でも想定しているということなんだろうか。松明の明かりを元に探索を進める奥のほうにどんどん進んでいくとようやく目当てのお宝が見つかった。

「なぁこんなに大量のお宝もらっちゃっていいのか?」

「奪われた人に返すんでしょ! だからほとんど手元には残らないよ」

 手早く従者が魔法鞄にお宝を詰め込んでいく。全部入ったところを見るにこの魔法鞄も相当な容量のものだとわかる。この従者も切れ者なのか? 一つ取り残している巨大な石のような物が気になったのでドーコに尋ねることにした。

「なぁこれはなんなんだ?」

「うーん。見たことない石だねー」

「多分ですがこれは魔法鞄に入らないあたり何か生き物の卵ではないかと思われます。盗品でもないですし魔物の卵だと危険な可能性もありますので破壊しようかと思ったのですがどうにも硬くて……」

「じゃあ私の大斧で」

「いやちょっと待った。これって持ち帰ってもいいか? 万が一危険な生き物であっても俺達ならすぐ対処できると思うし」

 俺はこの卵に運命なようなものを感じていた。

「私の一存では判断しかねますが、すぐに孵化するような状態でもないですし持ち帰ってから、シュドさんの判断次第ですかね」

「わかった。とりあえず帰ろう」



★   ★   ★



「申し訳ありませんドワルフ様。私共の過失でございます。良い旅をと思い最高の馬車を用意したのが仇となりました」

「いやまぁ悪いのはこの山賊だしな。シュドさんは別に悪くない。それにこの馬車の乗り心地は最高だしな、ドーコもそう思うだろ?」

「うん! あんな凸凹した道なのに全然揺れないし座るところもフカフカで最高だよ」

「というわけだ。まぁどうしてもそっちの気が済まないっていうならこの卵なんだがどうにも気に入ってな持ち帰って育てたいんだがいいだろうか?」

「ドワルフ様であれば何かあってもすぐ対応できるでしょうし承知いたしました。それと重ね重ね申し訳ありませんが私はこの者どもを連れてシュリガイムへと向かわなければならないので別行動をとらせて頂きます。ここからはそこまで離れていませんので、また山賊に襲われるような心配はないと思います。それとこれをお持ちくださいませ」

 そういってシュドは一枚の紙を渡してきた。シュドという名前と役職名が書かれた名刺のようだった。

「これを商人ギルドで渡していただければすぐギルド長とお話ができますので、シュリガイムについて観光が終わった後にでも是非ギルドへ向かってください」

「わかったよ。とりあえずシュリガイムについたらすぐ寄ることにするよ」

「はいよろしくお願いいたします。それでは今度こそ良い夢を」

「おやすみ」

「おやすみなさーい」

 そういって馬車へ戻る。今度こそゆっくり眠れそうだ。
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