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【ざまぁ回】第53話 黒幕、イカサマがばれて大勢の観衆の前で大恥をかく
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『ええと、あなたがゴーレム研究院の作ったゴーレム、ですか?』
リエルさんが珍しく戸惑っている。
「ゴーレムだ。見ての通り」
外見は、全身甲冑に身を包んだ人間にしか見えないのだけれど。顔も見えないし。
自称ゴーレムさんは『俺はゴーレムだがそれがどうかしたか?』と言わんばかりに堂々と腕組みしている。
「さぁ、パフォーマンスをさせてもらうぞ」
ゴーレムさんが、ステージに登ろうとする。そして、コケた。
ゴーレムさんの兜が取れる。兜の下から、ボイルと完全に同じ顔が出てきた。
もう、まんまボイルだった。
両手で顔を隠すが、既に観客にもリエルさんにもばっちり見られてしまった。
観客がどよめく。
これは……
「これは……凄いです!」
「へ?」
僕は思わず叫んでいた。
「こんなに誰かそっくりに作ったゴーレム、初めて見ました!」
「う、うむ。俺こそは、ゴーレム研究院の技術の結晶、”ボイルそっくりゴーレム”だ。くくく、凄まじい完成度だろう」
「はい、顔の毛穴や後退し始めた生え際まで全く同じに作っていますね。まるでボイルさん本人がゴーレムに成りすましているみたいです」
何故かゴーレムさんのほほが引きつる。
「ただ、『イケメンゴーレムを連れてくる』と言ったのに、別にイケメンではないですね」
「なんだと!?」
ゴーレムさんの顔が赤くなって、額の血管が膨れ上がった。
凄く丁寧に作っているなぁ。
『ええと、では、ゴーレムを研究院のゴーレムさん、パフォーマンスを、どうぞ!』
司会をするリエルさんが何故か苦しそうだ。まるで笑いをこらえているみたいに。
「パ、パフォーマンスって。俺は一体何をすればいいんだ……?」
「さっきボイルさんが言っていましたよ。『宙返りしながらホットケーキをひっくり返せてしかもイケメンなゴーレム』を連れてくるって」
「いやしかし、冷静になったら。俺はホットケーキなんてひっくり返したことなんてなくて……」
「大丈夫です! ボイルさんはあなたを、そういうことができるゴーレムとして作りました! 自分を信じてください。ゴーレムの身体能力は、人間より遥かに高いからきっとやれますよ!」
「うぐぐ……」
ゴーレムさんがたじろぐ。
『どうしますか? やりますか? それとも、負けを認めますか?』
リエルさんがゴーレムさんに詰め寄る。観客に背中を向けて見えないようにしているが、完全に獲物をいたぶって楽しむ猫の顔をしていた。
「ええい、やってやるさ!」
ゴーレムさんはアルカからホットケーキの乗ったフライパンを受け取る。
「せっかくなので、新しいホットケーキを入れておきました。火炎魔法でフライパンを温めて、片面だけ焼いてあります。まさにひっくり返す直前の状態です。熱いのでご注意ください」
アルカも几帳面なことをするなぁ。
「見ていろ、行くぞ! うおおおおお!」
ゴーレムさんが飛びあがり、宙返りする!
――が、勢いが足りず、腰を思い切り地面に打ち付ける。
「いってえええええええぇ!!」
さらにそこへ、片面しか焼いていないホットケーキが落下。
”ベチャッ”
ホットケーキのまだ焼いていない面がゴーレムさんの顔面に着地した。
「熱い! 熱い熱い熱い!」
ゴーレムさんが顔面をかきむしりながらステージの上で転がりまわる。
会場は笑いに包まれた。
「マスター、あれはゴーレムではなく、ただの甲冑をかぶっただけのボイルですよ。ゴーレムであれば、あの程度で熱がったりするわけがありません」
確かに、アルカの言うとおりだ。
せっかく見たことのないゴーレム技術が見れたと思ったのに、残念だ。
『では、そろそろ判定に移りましょう! 会場の皆さん、”ボイルのゴーレムがすごい”と思ったなら赤色の、”ナットの方がすごい”と思ったら青色のハンカチを挙げて振ってください!』
観客席は、青一色に染まった。
『数えるまでもありませんね。勝者、ナットさん!』
観客全員が、割れんばかりの拍手で祝福してくれた。
「これでやっと、終わったんだな……」
勇者パーティーから追放された時から、僕の心にはどこか、劣等感のようなほの暗い感情がまとわりついていた。
しかし、勇者パーティーから追放されたのは全て仕組まれていたことだとわかり、その黒幕にも完全勝利した。
文句なしに、これでやっと自分は後ろめたいことのない、1人前の冒険者だと胸を張れる気がする。
「くうううぅ、組織の所有物であるS級アーティファクトを取られてしまった……! これでは、ボスに何と言われるか……! クソ! クソ!」
ボイルが地面を叩いている。
僕は勇者パーティーから追放されて今はとても幸せなので今更恨む気持ちはないが、それでも他人を陥れるようなことをしたんだ。自業自得と思ってもらおう。
リエルさんが珍しく戸惑っている。
「ゴーレムだ。見ての通り」
外見は、全身甲冑に身を包んだ人間にしか見えないのだけれど。顔も見えないし。
自称ゴーレムさんは『俺はゴーレムだがそれがどうかしたか?』と言わんばかりに堂々と腕組みしている。
「さぁ、パフォーマンスをさせてもらうぞ」
ゴーレムさんが、ステージに登ろうとする。そして、コケた。
ゴーレムさんの兜が取れる。兜の下から、ボイルと完全に同じ顔が出てきた。
もう、まんまボイルだった。
両手で顔を隠すが、既に観客にもリエルさんにもばっちり見られてしまった。
観客がどよめく。
これは……
「これは……凄いです!」
「へ?」
僕は思わず叫んでいた。
「こんなに誰かそっくりに作ったゴーレム、初めて見ました!」
「う、うむ。俺こそは、ゴーレム研究院の技術の結晶、”ボイルそっくりゴーレム”だ。くくく、凄まじい完成度だろう」
「はい、顔の毛穴や後退し始めた生え際まで全く同じに作っていますね。まるでボイルさん本人がゴーレムに成りすましているみたいです」
何故かゴーレムさんのほほが引きつる。
「ただ、『イケメンゴーレムを連れてくる』と言ったのに、別にイケメンではないですね」
「なんだと!?」
ゴーレムさんの顔が赤くなって、額の血管が膨れ上がった。
凄く丁寧に作っているなぁ。
『ええと、では、ゴーレムを研究院のゴーレムさん、パフォーマンスを、どうぞ!』
司会をするリエルさんが何故か苦しそうだ。まるで笑いをこらえているみたいに。
「パ、パフォーマンスって。俺は一体何をすればいいんだ……?」
「さっきボイルさんが言っていましたよ。『宙返りしながらホットケーキをひっくり返せてしかもイケメンなゴーレム』を連れてくるって」
「いやしかし、冷静になったら。俺はホットケーキなんてひっくり返したことなんてなくて……」
「大丈夫です! ボイルさんはあなたを、そういうことができるゴーレムとして作りました! 自分を信じてください。ゴーレムの身体能力は、人間より遥かに高いからきっとやれますよ!」
「うぐぐ……」
ゴーレムさんがたじろぐ。
『どうしますか? やりますか? それとも、負けを認めますか?』
リエルさんがゴーレムさんに詰め寄る。観客に背中を向けて見えないようにしているが、完全に獲物をいたぶって楽しむ猫の顔をしていた。
「ええい、やってやるさ!」
ゴーレムさんはアルカからホットケーキの乗ったフライパンを受け取る。
「せっかくなので、新しいホットケーキを入れておきました。火炎魔法でフライパンを温めて、片面だけ焼いてあります。まさにひっくり返す直前の状態です。熱いのでご注意ください」
アルカも几帳面なことをするなぁ。
「見ていろ、行くぞ! うおおおおお!」
ゴーレムさんが飛びあがり、宙返りする!
――が、勢いが足りず、腰を思い切り地面に打ち付ける。
「いってえええええええぇ!!」
さらにそこへ、片面しか焼いていないホットケーキが落下。
”ベチャッ”
ホットケーキのまだ焼いていない面がゴーレムさんの顔面に着地した。
「熱い! 熱い熱い熱い!」
ゴーレムさんが顔面をかきむしりながらステージの上で転がりまわる。
会場は笑いに包まれた。
「マスター、あれはゴーレムではなく、ただの甲冑をかぶっただけのボイルですよ。ゴーレムであれば、あの程度で熱がったりするわけがありません」
確かに、アルカの言うとおりだ。
せっかく見たことのないゴーレム技術が見れたと思ったのに、残念だ。
『では、そろそろ判定に移りましょう! 会場の皆さん、”ボイルのゴーレムがすごい”と思ったなら赤色の、”ナットの方がすごい”と思ったら青色のハンカチを挙げて振ってください!』
観客席は、青一色に染まった。
『数えるまでもありませんね。勝者、ナットさん!』
観客全員が、割れんばかりの拍手で祝福してくれた。
「これでやっと、終わったんだな……」
勇者パーティーから追放された時から、僕の心にはどこか、劣等感のようなほの暗い感情がまとわりついていた。
しかし、勇者パーティーから追放されたのは全て仕組まれていたことだとわかり、その黒幕にも完全勝利した。
文句なしに、これでやっと自分は後ろめたいことのない、1人前の冒険者だと胸を張れる気がする。
「くうううぅ、組織の所有物であるS級アーティファクトを取られてしまった……! これでは、ボスに何と言われるか……! クソ! クソ!」
ボイルが地面を叩いている。
僕は勇者パーティーから追放されて今はとても幸せなので今更恨む気持ちはないが、それでも他人を陥れるようなことをしたんだ。自業自得と思ってもらおう。
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