上 下
50 / 65

【ざまぁ前フリ回】第50話 黒幕、ゴーレム技師の実力を知らず、低レベルのゴーレムを作ってドヤ顔する

しおりを挟む
 ――時は同じくして、ゴーレム対決1日前。

 ゴーレム研究院のナンバー3にして、ナットを勇者パーティーから追放するように仕向けた男ことボイルは、とある高級宿に泊っていた。

「ボイル様、ご要望の物を調達いたしました」

 ボイルの部屋に、部下が訪れる。

 部下はボイルを、宿の前まで案内する。

「ほう、これが……!」

 宿の前には、馬車で運ばれてきた、高さ3メートルを超える巨大な包みがあった。

 輸送中に壊れないように、何重にも布で巻いてあるのだ。

 ボイルが震える手で包みを解く。

 中から現れたのは、ナットが作った巨大なゴーレム。

 長期使用を考えていないインスタントゴーレムなので既に壊れかけているが、それでもまだ動いている。

 腕と足を何重にも拘束している鎖がなければ、今ころボイルとその部下を叩き潰しているだろう。

「勇者選抜試験でナットが作ったもののうち、これ1体だけが壊れずに残っていました」

「素晴らしい、素晴らしいぞ!」

 ボイルの声は、興奮で震えている。

「我々は10年以上ずっとゴーレムの研究を進めてきて、理論はおおむね構築している。

 だが、ゴーレムを作ることはできなかった。

 それが今、動くゴーレムが目の前にいる。私は感動すらしているぞ!」

「ワタクシも同じ気持ちでございます」

 ゴーレムを運んできた部下も頷いた。部下も、興奮で手が震えている。

「ナットは、ゴーレムの可能性にまるで気が付いていない。ゴーレムは戦闘以外にも使い道がいくらでもあるのだ」

 ボイルとその部下は知らない。ナットが、街の人のためにアダマンタイト採掘ゴーレムを作ったことを。故郷の町で、たくさんの人のために役立つゴーレムを作っていたことを。

「私の理論が間違っていなければ、このゴーレムを改造可能なはずだ。

 くくく、戦闘用ゴーレムであれば我々に勝ち目はない。

 だが、人の役に立つというゴーレムなら我々の勝利だ。戦闘しか頭にないガキなど、たやすくひねりつぶせる」

 ボイルの顔に醜悪な笑みが浮かぶ。

「俺はこのゴーレムを、”掃き掃除ゴーレム”に改造する。審査員は一般市民。掃き掃除ができるゴーレムと戦闘にしか使い道がないゴーレム、どちらに軍配が上がるかな?」

「流石ボイル様、見事な着眼点でございます」

「くくく、賞賛はまだ早い。その言葉は、明日ナットを叩き潰した後に受け取るとしよう」

 既にアルカは掃き掃除どころか料理ができるレベルまで成長している。

 だが、ボイルと部下はそんなことを知らずに笑っているのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

私の物を奪っていく妹がダメになる話

七辻ゆゆ
ファンタジー
私は将来の公爵夫人として厳しく躾けられ、妹はひたすら甘やかされて育った。 立派な公爵夫人になるために、妹には優しくして、なんでも譲ってあげなさい。その結果、私は着るものがないし、妹はそのヤバさがクラスに知れ渡っている。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

処理中です...