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第46話 美少女ゴーレム、新しい力を使ってライバルたちを次々と撃破する

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「マスター、テントにいた3人を撃破しました。……というか、勝手に降参しました」

「ありがとう、よくやった」

 僕は、アルカの頭を撫でる。

 アルカは嬉しそうに目を細める。

 アルカは、周りに人がいないときには、よくこういうスキンシップを求めてくる。

「よし、じゃあ次の作戦を立てよう」

 アルカには、今回新しい形態モードを追加した。

 このサバイバル形式の試験なら、必ず役立つはずだ。

 ――――

”ドドドドドドド!”
・大型のインスタントゴーレムたちが、勇者候補3人組を追いかけている。

 インスタントゴーレムの足の速さは一般人程度。鍛えられた勇者候補達にはとても追いつけない。

 だが、振り切られたとしてもまたインスタントゴーレム達は勇者候補達を見つけ出し、追いかけ始める。

 今は5回目の追いかけっこの最中だ。

「なんで、なんで何度振り切って隠れてもすぐに居場所がバレるんだよ!? 俺たちに透明な監視役が張り付いて、ずっとあの土の使い魔に居場所を教えてるとでもいうのかよ!」

 勇者候補3一組のリーダーが叫んだ。

 その通りである。

 勇者候補達のすぐ隣を、アルカが追いかけている。

 隠密形態ステルスモード

 前に捕まえた、身体の色を変えて周りの風景に溶け込むモンスター、レインボーリザードの皮を使って搭載した機能だ。

 普段は目元以外を覆った黒装束なのだが、必要な時には周りの景色と同化してほぼ完全に見えなくなる。

 アルカには心臓の鼓動も呼吸音もないので、見つけることはほぼ不可能だ。

 ちなみにデザインは、極東の国に存在するという幻の隠密職”ニンジャ”の服装を参考にしている。

 専用の武器として、

 光の反射で目立たないように黒く塗った、短い反った剣

 同じく黒塗りの、独特の形の投げナイフ

 を持たせている。

 極東ではこれを”ニンジャト―”と”シュリケン”と呼ぶらしい。

「ええい、キリがない! こうなったらここで迎え撃つぞ!」

 ヤケになった勇者候補3人組が剣を抜いてゴーレム達に挑んでくる。

 だが、その背中はがら空きだ。

 そこを見逃すアルカではない。

”ドスッ”

”ドスッ”

”ドスッ”

 アルカが首筋に手刀を3回見舞い、勇者候補3人を気絶させる。

「この形態モードがあれば、直接戦闘を避けて消耗を抑えながら一方的に相手を倒せます。流石です、マスター!」

 勇者候補達がつけていたクリスタルを破壊しながら、アルカが嬉しそうに報告する。

「よし、それじゃあ次の相手を仕留めに行こう!」


――――

 次の相手は、勇者候補6人組だ。

 僕たちが作った砦ほどではないが、結構大掛かりな土の壁を作って、その奥に引きこもっている。

 ゴーレムの群れを突撃させても、勝てるだろうがかなりの数が撃破されてしまうだろう。

 正面から戦うのは避けたいところだ。

 と、いうわけで作戦を立てた。

「アルカ、火炎放射形態フレイムモードだ」

「了解しました」

 アルカが形態変更モードチェンジする。そして、火炎魔法で勇者候補たちの拠点の周りの樹に火を放つ。

「なんだこれ!? 山が燃えてる?!」
「やばいやばい、逃げろ!」

 勇者候補達が拠点から飛び出してくる。

 あらかじめゴーレムたちに周りの樹を切らせておいたので、炎が必要以上に広がる心配はない。燃えるのは、勇者候補達の拠点の周りだけだ。

 周りは火事になっているが、勇者候補達は冷静だった。適当な方向に逃げず、全員でまとまって川の方へ逃げていく。

 しかし、その先にも罠があるのだ。

「みえた、川だ! 飛び込め!」

 勇者候補達が川に飛び込む。

「ぷはぁ、助かった――ゴバ!?」

 水面から顔を出していた勇者候補達の1人が、急に水中に引きずり込まれる。

「何よこれ!? キャァ!」
「何が起きて――うわ!」
「水中だ! 水中に何かがいる――ぐわぁ!」

 勇者候補達4人が次々と水中に引きずり込まれる。

 周りが火事になったら水辺に逃げるだろうと思って、あらかじめ防水加工したゴーレムを水中に待機させておいたのだ。

 ゴーレムは呼吸しないので、防水加工さえすれば何時間でも水中にいられる。

 今頃ゴーレム達が水中で勇者候補達のクリスタルを破壊しているだろう。

 溺れないように、ゴーレム達が引きずり込んだ勇者候補達を浅瀬に運んでいく。

「くそ、一体何が起こっているっているんだ……?」
「生き延びたのは俺とあんただけだ、リーダー」

 2人の勇者候補が何とか岸に泳ぎつく。1人はリーダーらしい。
 
 どちらも30代くらいの男性で、貫禄がある。

「とりあえず水辺から離れて、作戦を……うわ!?」

 リーダーではないほうの勇者候補が悲鳴をあげる。ゴーレムに足首を掴まれたみたいだ。

 必死に岸にしがみついて抵抗するが、ゆっくりと水中に引きずり込まれていく。

「リーダー、俺はもうだめだ、リーダーだけでも逃げてくれ……!」
「馬鹿なことを言うな! 最後まで一緒に勝ち残ろうって、約束したじゃないか!!」

 先に岸に上がったリーダーが、勇者候補を引き上げようとする。だがそれでも、勇者候補はゆっくりと水に沈んでいく。

「リーダー、これを受け取ってくれ……」

 沈んでいく勇者候補が、剣をリーダーに渡す。

「それはお前が命より大切にしている宝剣じゃないか! そんなもの受け取れるか!」
「頼むよリーダー。リーダーの腕とこの剣が合わされば、誰にも負けない。俺たちの思いを継いで、勇者になってくれ……!」

 リーダーが剣を受け取る。

 同時に、勇者候補が完全に水中に引きずり込まれる。

「分かった……俺は! おまえの分まで勝ち抜いて、必ず勇者の称号を手に入れる! 見ていてくれ!!」

 リーダーが熱い涙を流しながら、空に向かって叫ぶ。

 ――そしてその背後には、隠密形態ステルスモードのアルカがいた。

”ボチャン!”

 アルカがリーダーを川に突き落とす。

「うわああああああああああああああああああぁ!!」

 リーダーは水中のゴーレムたちにあっという間に引きずり込まれる。

 10秒後。

 水に引きずり込まれた2人は、クリスタルを破壊された状態で、ゴーレムに浅瀬まで運ばれてきた。

 こうして、僕とアルカは誰もケガなどさせることなく勇者候補6人組を撃破したのだった。
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