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【ざまぁ回】第39話 勇者、勇者の資格を剝奪される
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勇者ハロンは、リエルさんが手紙を読むのをワクワクした表情で待っている。
『それでは読みますよ。
”第13勇者ハロン=モルナック。
ナット=ソイルレットとの決闘で破れ、聖剣を失った貴殿は勇者としてふさわしくないと冒険者ギルドは判断する。
よって、貴殿の【勇者の資格を剥奪】する。――冒険者ギルド長”。……だそうです♪』
「……え?」
勇者ハロンは、何を言われたのかわからない、という顔をする。
『剥奪ですよ、剥奪。勇者の資格を剥奪。只今をもって、ハロンさんは勇者ではありません。【元勇者】なら名乗っていいですよ♪』
「そ、そんな……嘘だろう!?」
『本当です。ダンジョン探索は赤字続き、貸し出しているゴーレムを壊す、街のゴミ捨て場を荒らす、などの問題が多数報告されています。さっきの背後からの攻撃も、報告すれば問題でしょうね。
さらに、聖剣を無くして戦闘力が落ちたとなれば、勇者の資格が疑われるのも当然というものです♪』
「ぐぅっ……!!」
言い返せない勇者、ではなく元勇者ハロンは拳を握る。
『さて、勇者の枠が1つ空いてしまったわけですが』
勇者の最大の役目。それは、13あるS級ダンジョンの番人だ。
S級ダンジョンは定期的にモンスターを討伐しないと数が増え、街にあふれ出てくる。
なので、勇者の枠を開けておくわけにはいかない。
『1週間後、新たな勇者の選抜試験を行います! 対象は、推薦されたプラチナ級冒険者!」
新しい勇者誕生か……。
どんな人が勇者になるんだろうか。楽しみだ。
シルバー級冒険者の僕には、関係のない話だけど。
『何を残念そうな顔をしているんですか、ナットさん。はいこれ、ナットさんの分の推薦状です』
「……え?」
『私が推薦しておきました♪ 私が知る限り、今一番勇者にふさわしい冒険者はナットさんですから』
「でも僕は、まだシルバー級で……」
ははは、とリエルさんは笑う。
『なれば良いじゃないですか。1週間でプラチナ級冒険者に。今のナットさんなら、難しくないはずですよ』
リエルさんはまじめな顔をしている。とても冗談を言っている風には思えない。
『どうしますナットさん? やめときます?』
「やります! 1週間でプラチナ級冒険者になって、勇者選抜試験に参加します!」
リエルさんは満足そうに頷いた。
「勇者ハロンを倒したお前ならやれる!」
「頑張ってくださいっス、ナットさん!」
「応援しているぜェ!」
闘技場に集まった人たちも応援してくれている。
「頑張りましょう、マスター! マスターの力があればきっとできるはずです!」
こうして僕は、諦めていた、少年時代夢見ていた【勇者】の称号を得るための挑戦を始めるのだった。
一方後で知ったのだが、元勇者ハロンはここからさらに人生のどん底へ転がり落ちていったらしい。
『それでは読みますよ。
”第13勇者ハロン=モルナック。
ナット=ソイルレットとの決闘で破れ、聖剣を失った貴殿は勇者としてふさわしくないと冒険者ギルドは判断する。
よって、貴殿の【勇者の資格を剥奪】する。――冒険者ギルド長”。……だそうです♪』
「……え?」
勇者ハロンは、何を言われたのかわからない、という顔をする。
『剥奪ですよ、剥奪。勇者の資格を剥奪。只今をもって、ハロンさんは勇者ではありません。【元勇者】なら名乗っていいですよ♪』
「そ、そんな……嘘だろう!?」
『本当です。ダンジョン探索は赤字続き、貸し出しているゴーレムを壊す、街のゴミ捨て場を荒らす、などの問題が多数報告されています。さっきの背後からの攻撃も、報告すれば問題でしょうね。
さらに、聖剣を無くして戦闘力が落ちたとなれば、勇者の資格が疑われるのも当然というものです♪』
「ぐぅっ……!!」
言い返せない勇者、ではなく元勇者ハロンは拳を握る。
『さて、勇者の枠が1つ空いてしまったわけですが』
勇者の最大の役目。それは、13あるS級ダンジョンの番人だ。
S級ダンジョンは定期的にモンスターを討伐しないと数が増え、街にあふれ出てくる。
なので、勇者の枠を開けておくわけにはいかない。
『1週間後、新たな勇者の選抜試験を行います! 対象は、推薦されたプラチナ級冒険者!」
新しい勇者誕生か……。
どんな人が勇者になるんだろうか。楽しみだ。
シルバー級冒険者の僕には、関係のない話だけど。
『何を残念そうな顔をしているんですか、ナットさん。はいこれ、ナットさんの分の推薦状です』
「……え?」
『私が推薦しておきました♪ 私が知る限り、今一番勇者にふさわしい冒険者はナットさんですから』
「でも僕は、まだシルバー級で……」
ははは、とリエルさんは笑う。
『なれば良いじゃないですか。1週間でプラチナ級冒険者に。今のナットさんなら、難しくないはずですよ』
リエルさんはまじめな顔をしている。とても冗談を言っている風には思えない。
『どうしますナットさん? やめときます?』
「やります! 1週間でプラチナ級冒険者になって、勇者選抜試験に参加します!」
リエルさんは満足そうに頷いた。
「勇者ハロンを倒したお前ならやれる!」
「頑張ってくださいっス、ナットさん!」
「応援しているぜェ!」
闘技場に集まった人たちも応援してくれている。
「頑張りましょう、マスター! マスターの力があればきっとできるはずです!」
こうして僕は、諦めていた、少年時代夢見ていた【勇者】の称号を得るための挑戦を始めるのだった。
一方後で知ったのだが、元勇者ハロンはここからさらに人生のどん底へ転がり落ちていったらしい。
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