上 下
15 / 65

第15話 ゴーレム技師、念願だった冒険者としての1歩を踏み出す!

しおりを挟む
 ――冒険者試験に合格した翌日。

 僕とアルカは冒険者ギルドに来ていた。

「しまった、早すぎたな……冒険者ギルドが開く前に着いちゃった」

「張り切りすぎですよ、マスター」

 正直、冒険者として自分の手でダンジョンを探索するのが楽しみ過ぎる。

 実のところ、昨日もあんまり寝れていない。

 そうこうしている間に、冒険者ギルドが開いた。

「では、このブロンズ冒険者でも受注可能なクエスト2つを受注させてください」

「かしこまりました。では、こちらの契約書にサインを」

 冒険者には、いくつかのランクが設定されている。

 入った直後は全員ブロンズ冒険者からスタート。そこから、シルバー・ゴールド・プラチナと昇格していく。そしてさらにその上に、13人の勇者がいる。

 ランクを上げるには、クエストごとに設定されている貢献度ポイントを貯めていく。そして、貢献度が基準を超えたら昇格試験を受けることができる。

 僕が目指すのは、勇者を除けば最上位のプラチナ冒険者。道のりは途方もなく長いけど、一歩一歩頑張っていこう。

 僕が今回受注したのは、薬草の採取とラージラビットの討伐だ。

 薬草は体力回復ポーションの素材になる草で、ダンジョン指定されている森の一部にしか生えないため、一般人ではなく冒険者が採取することになっている。

 はっきり言って薬草摘みは地図さえ読めれば誰でもできる仕事なので、駆け出し冒険者が装備を整えるための下積みによく受けている。

 もう1つのラージラビットは、畑を荒らす害獣だ。戦闘力は大して高くないが逃げ足は速いので、なかなか厄介な相手だ。そしてその分報酬は割高に設定されている。

 2つのクエストは常に発注されているので、いつでも受けることができる。

 どちらのクエストも、摘んだり駆除した量に応じて報酬が増える。

「マスター、ブロンズ冒険者でも受注できるクエストは沢山ありますが、なぜこの2つを選んだのですか?」

「ラージラビットの方は、単純に報酬が割高だから。なかなか捕まえるのが難しい害獣だけど、僕には捕まえるための作戦がある」

 アルカに【#火炎放射形態_フレイムモード_#】を追加するとき、フレアウルフの素材を耐火用防具に設定した。あの時の防具の加工は僕の専門外だったので、街の防具屋に依頼している。
 その時の費用で大分使ってしまい、今の手持ちは銀貨2枚しかない。普通に暮らしているだけでも5,6日でなくなってしまう金額だ。なので、早いところ安心できるだけのお金を貯えたい。

「薬草摘みを受注した理由は……じつは、駆け出し冒険者らしいことがしたいっていう理由かな」

 冒険者はほぼ全員、駆け出しのころに薬草摘みを受注している。

 ならば僕も、最初は薬草摘みというものを経験しておきたいと思ったのだ。

 いわゆる、”形から入りたい”というやつだ。

 勇者パーティーにいたころは、S級ダンジョンしか潜っていなかったから、駆け出し冒険者らしいことを僕は一切したことがない。

 お金の心配さえなければ1週間くらい薬草摘みだけやって、駆け出し冒険者生活を嚙み締めたいくらいだ。

 まぁ、流石にそんなことはしないけれども。

 ――というわけで。

 早速馬車を乗り継いで、2つのクエストの現場である森へと到着した。

 F級ダンジョン、ナーフィーの森。

 そこまで強力なモンスターが存在しないので、駆け出し冒険者がよくお世話になるダンジョンだ。

 が、僕は入るのは初めてだ。

「わくわくするなぁ」

「私も少し、楽しみです」

 アルカの顔にもウキウキした表情が浮かんでいた。

 一緒にダンジョン探索する以上、アルカにも楽しんでもらいたいと前から思っていた。僕は少し安心した。

 こうして僕とアルカは、冒険者としての1歩を踏み出した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...