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第0.5章 まほうつかいの国のアリス
68 お花畑と城と剣2
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「なんだこりゃ……」
どこを見ても真っ白な霧の壁を見て、レオは気の抜けた声を出した。
わたしたちは確かに、西のお花畑だと思うところまでやって来た。
でも、お花畑にはとってもとっても濃い、壁のような霧がかかっていて、とてもその中に入れる感じはしなかった。
どんなに目をこらして見てみても、霧の真っ白しか見えない。
本当に手前にある、ほんの少しのお花が見えて、その先にもきっとお花がいっぱい咲いてるんだろうなぁって、そんなふうに思えるくらいしかわからない。
右も左も、どこまでも霧が広がっていて、ぱったりと世界が途切れてしまってるみたい。
「これ、結界かな……ううん、もっと上位の空間遮断。きっとこれは、誰かの領域に制定されてるんだ」
高い高い空の上まで霧に包まれているのを見上げて確認しながら、アリアがポツリと言った。
『きょうみ』深そうに真っ白な霧のことをよーく見て、『みけん』にシワを寄せている。
「ここは禁域にされているから誰も来ちゃいけないところだけど、そもそも誰も入れないんだよ。この霧は侵入を阻む外壁。それに、ここには誰も近付けないような、そんな暗示の効果もあるじゃないかな?」
「だから女王陛下の兵隊がこの辺りで待ち伏せしたりしてこなかったってことか? でも、オレらはここまでは来られたぜ?」
「……うん。もしかしたら、アリスがいるからかも」
ムムムと首をかしげるレオに頷いて、アリアはすこし言いにくそうな顔をしながら私の顔を見た。
「領域の制定なんて、超一流の魔法使いでもなかなかできない高度な魔法。それがこんな広域にほどこされてる。そんなことができるのは、きっと……」
「ここはドルミーレの『りょういき』ってこと? わたしにドルミーレの力があるから、ここまで来られた……?」
「たぶん」
わたしの言葉に、アリアはすこし迷いながらうなずいた。
でもきっと、アリアはそれが正しいって『かくしん』があるんだと思う。
わたしも、なんとなくだけどそんな気がする。
それに、ココノツさんが言ってた。
ドルミーレは昔、『まほうつかいの国』の中に自分の『りょういき』を作って閉じこもったって。
それがここなんだとしたら、この国の人たちは、昔ドルミーレがいた場所だからって『きんいき』にしたのかもしれない。
「ドルミーレの、領域……。ここまで来てなんだけどよ、そんなとこに入って大丈夫なのか? てか、そもそも入れるか?」
「たぶん、入れる気がするよ」
『ふあん』げに言ったレオに、わたしは答えて、一歩霧の壁に近付いた。
霧に包まれたお花畑はちょっとあやしい感じもするけれど、でもわたしには不思議と悪い気はしなかった。
ここはわたしを受け入れてくれるって、なんだかそんな気がした。
「入れそうなら、わたしは入ってみたい。せっかくここまで来たんだもん。この中に、わたしが元の世界に帰れる方法があるかもしれないし」
「そう、だね。ここがドルミーレの領域なら、世界を超える手段が何かあるかもしれない。それに、ナイトウォーカーさんがここに行けって言ったんだもん。きっと意味があるんだよ」
「……わかった。じゃあ入ってみようぜ。ここでうだうだ言っててもしかたねーな」
レオとアリアはうなずいて、わたしの手をぎゅっとにぎってくれた。
二人とも、わたしが元の世界に帰るためにここまで一緒に旅をしてくれたんだ。
『ふあん』そうではあるけど、でもわたしを信じて一緒に行こうとしてくれてる。
その手が、とっても心強かった。
先の何にも見えない、何があるかもわからない霧の中に入っていくなんて、わたしだってとってもこわい。
でもきっとこの先に何かがあるはずだから、だから行かなきゃいけない。
一人じゃこわいけど、二人がついててくれればがんばれる。
「ありがとう、レオ、アリア。行こう」
わたしを安心させるようにニコッと笑ってくれる二人の顔を見てから、わたしは霧の中に一歩踏み出した。
あんまりにも真っ白で、先が見えなくて、壁のようになっているから、もしかしたらぶつかっちゃうかもしれないってこわさもあったけど。
でもいざ霧の中に入ってみようとすると、何事ないみたいにすんなりと入ることができた。
でも、真っ白な霧に包まれた瞬間、ここは今までの場所とはちがうって、そんな不思議な気持ちがした。
なんだろう。霧の中に入る前とは何かがちがうって、そう肌が感じてる。
それこそ、ちがう世界に入っちゃったみたいな。
これが、他人の『りょういき』の中に入るってことなのかな。
『りょういき』を『せいてい』するってことは、世界に自分だけの空間、世界を創るようなものって、前にアリアが言ってたし。
でも、そんな風にちがうって気がするのに、なんだかわたしにはとってもなつかしい気がした。
真っ白で何にも見えないけど、でもわたしはここに来たことがある、いたことがある、そんな気持ち。
わたしにあるドルミーレの力が、ドルミーレの『りょういき』に反応してるのかな。
わたしの手をにぎってくれてるレオとアリアの手に、ジトッと汗がしみてきてるのがわかった。
二人もきっと、この霧の中のちがう感じを感じてるんだ。
にぎる手の力が強くなって、わたしを絶対はなさないって、そんな気持ちが伝わってくる。
霧がとっても濃いから、すぐ隣にいる二人の顔もよく見えない。
だから、つないでるこの手だけが、二人がたしかにここにいるって教えてくれた。
そうやって三人で手を固くつなぎながら、すこしの間歩いていた時。
急にふわっと霧が晴れて、まぶしいくらいの強い日の光がわたしたちを照らした。
今まで霧がいっぱいだったのなんてウソだったみたい、わたしたちは突然雲一つない青空の下にいた。
「────ぅわぁ! すごい!」
そして、急にクリアになった目の前には、とってもとってもキレイな光景が広がっていた。
見渡す限り、どこ見てもたくさんのお花がじゅうたんのようにしきつめられてる。
お花じゃないところ、地面がぜんぜん見えないくらいに、どこもかしこもお花だらけだった。
色んな種類、色んな色のカラフルなお花畑。
あったかくて気持ちのいいお日様の光をいっぱい浴びて、元気よく咲きみだれてる。
ほんのりと流れる風が、お花の甘い香りをふわーっと流していて、すごくいい気分になった。
とっても、とってもキレイで、わたしたちはしばらく立ち止まって見とれちゃった。
わたしとアリアはもちろん、いつもは景色とかなんてぜんぜん気にしないレオも、同じようにお花畑をポカーンと見つめてる。
見渡す限りのお花畑。『ちへいせん』の『かなた』まで、ずっとずっとお花畑が続いてるみたいにおわりが見えない。
どこまでもずっと、たくさんのお花がめいっぱいに咲き続けてる。
そんなステキな光景の中で、とても目立つものがありました。
お花畑の真ん中に、大きなお城が建っていたのです。
まるでおとぎばしのような、絵本のお話に出てくるような、ツンツンお屋根の塔がある、真っ白なお城。
まるでこの世界の王様が住んでいるような、とっても『りっば』なお城が、お花畑にかこまれて建っていました。
どこを見ても真っ白な霧の壁を見て、レオは気の抜けた声を出した。
わたしたちは確かに、西のお花畑だと思うところまでやって来た。
でも、お花畑にはとってもとっても濃い、壁のような霧がかかっていて、とてもその中に入れる感じはしなかった。
どんなに目をこらして見てみても、霧の真っ白しか見えない。
本当に手前にある、ほんの少しのお花が見えて、その先にもきっとお花がいっぱい咲いてるんだろうなぁって、そんなふうに思えるくらいしかわからない。
右も左も、どこまでも霧が広がっていて、ぱったりと世界が途切れてしまってるみたい。
「これ、結界かな……ううん、もっと上位の空間遮断。きっとこれは、誰かの領域に制定されてるんだ」
高い高い空の上まで霧に包まれているのを見上げて確認しながら、アリアがポツリと言った。
『きょうみ』深そうに真っ白な霧のことをよーく見て、『みけん』にシワを寄せている。
「ここは禁域にされているから誰も来ちゃいけないところだけど、そもそも誰も入れないんだよ。この霧は侵入を阻む外壁。それに、ここには誰も近付けないような、そんな暗示の効果もあるじゃないかな?」
「だから女王陛下の兵隊がこの辺りで待ち伏せしたりしてこなかったってことか? でも、オレらはここまでは来られたぜ?」
「……うん。もしかしたら、アリスがいるからかも」
ムムムと首をかしげるレオに頷いて、アリアはすこし言いにくそうな顔をしながら私の顔を見た。
「領域の制定なんて、超一流の魔法使いでもなかなかできない高度な魔法。それがこんな広域にほどこされてる。そんなことができるのは、きっと……」
「ここはドルミーレの『りょういき』ってこと? わたしにドルミーレの力があるから、ここまで来られた……?」
「たぶん」
わたしの言葉に、アリアはすこし迷いながらうなずいた。
でもきっと、アリアはそれが正しいって『かくしん』があるんだと思う。
わたしも、なんとなくだけどそんな気がする。
それに、ココノツさんが言ってた。
ドルミーレは昔、『まほうつかいの国』の中に自分の『りょういき』を作って閉じこもったって。
それがここなんだとしたら、この国の人たちは、昔ドルミーレがいた場所だからって『きんいき』にしたのかもしれない。
「ドルミーレの、領域……。ここまで来てなんだけどよ、そんなとこに入って大丈夫なのか? てか、そもそも入れるか?」
「たぶん、入れる気がするよ」
『ふあん』げに言ったレオに、わたしは答えて、一歩霧の壁に近付いた。
霧に包まれたお花畑はちょっとあやしい感じもするけれど、でもわたしには不思議と悪い気はしなかった。
ここはわたしを受け入れてくれるって、なんだかそんな気がした。
「入れそうなら、わたしは入ってみたい。せっかくここまで来たんだもん。この中に、わたしが元の世界に帰れる方法があるかもしれないし」
「そう、だね。ここがドルミーレの領域なら、世界を超える手段が何かあるかもしれない。それに、ナイトウォーカーさんがここに行けって言ったんだもん。きっと意味があるんだよ」
「……わかった。じゃあ入ってみようぜ。ここでうだうだ言っててもしかたねーな」
レオとアリアはうなずいて、わたしの手をぎゅっとにぎってくれた。
二人とも、わたしが元の世界に帰るためにここまで一緒に旅をしてくれたんだ。
『ふあん』そうではあるけど、でもわたしを信じて一緒に行こうとしてくれてる。
その手が、とっても心強かった。
先の何にも見えない、何があるかもわからない霧の中に入っていくなんて、わたしだってとってもこわい。
でもきっとこの先に何かがあるはずだから、だから行かなきゃいけない。
一人じゃこわいけど、二人がついててくれればがんばれる。
「ありがとう、レオ、アリア。行こう」
わたしを安心させるようにニコッと笑ってくれる二人の顔を見てから、わたしは霧の中に一歩踏み出した。
あんまりにも真っ白で、先が見えなくて、壁のようになっているから、もしかしたらぶつかっちゃうかもしれないってこわさもあったけど。
でもいざ霧の中に入ってみようとすると、何事ないみたいにすんなりと入ることができた。
でも、真っ白な霧に包まれた瞬間、ここは今までの場所とはちがうって、そんな不思議な気持ちがした。
なんだろう。霧の中に入る前とは何かがちがうって、そう肌が感じてる。
それこそ、ちがう世界に入っちゃったみたいな。
これが、他人の『りょういき』の中に入るってことなのかな。
『りょういき』を『せいてい』するってことは、世界に自分だけの空間、世界を創るようなものって、前にアリアが言ってたし。
でも、そんな風にちがうって気がするのに、なんだかわたしにはとってもなつかしい気がした。
真っ白で何にも見えないけど、でもわたしはここに来たことがある、いたことがある、そんな気持ち。
わたしにあるドルミーレの力が、ドルミーレの『りょういき』に反応してるのかな。
わたしの手をにぎってくれてるレオとアリアの手に、ジトッと汗がしみてきてるのがわかった。
二人もきっと、この霧の中のちがう感じを感じてるんだ。
にぎる手の力が強くなって、わたしを絶対はなさないって、そんな気持ちが伝わってくる。
霧がとっても濃いから、すぐ隣にいる二人の顔もよく見えない。
だから、つないでるこの手だけが、二人がたしかにここにいるって教えてくれた。
そうやって三人で手を固くつなぎながら、すこしの間歩いていた時。
急にふわっと霧が晴れて、まぶしいくらいの強い日の光がわたしたちを照らした。
今まで霧がいっぱいだったのなんてウソだったみたい、わたしたちは突然雲一つない青空の下にいた。
「────ぅわぁ! すごい!」
そして、急にクリアになった目の前には、とってもとってもキレイな光景が広がっていた。
見渡す限り、どこ見てもたくさんのお花がじゅうたんのようにしきつめられてる。
お花じゃないところ、地面がぜんぜん見えないくらいに、どこもかしこもお花だらけだった。
色んな種類、色んな色のカラフルなお花畑。
あったかくて気持ちのいいお日様の光をいっぱい浴びて、元気よく咲きみだれてる。
ほんのりと流れる風が、お花の甘い香りをふわーっと流していて、すごくいい気分になった。
とっても、とってもキレイで、わたしたちはしばらく立ち止まって見とれちゃった。
わたしとアリアはもちろん、いつもは景色とかなんてぜんぜん気にしないレオも、同じようにお花畑をポカーンと見つめてる。
見渡す限りのお花畑。『ちへいせん』の『かなた』まで、ずっとずっとお花畑が続いてるみたいにおわりが見えない。
どこまでもずっと、たくさんのお花がめいっぱいに咲き続けてる。
そんなステキな光景の中で、とても目立つものがありました。
お花畑の真ん中に、大きなお城が建っていたのです。
まるでおとぎばしのような、絵本のお話に出てくるような、ツンツンお屋根の塔がある、真っ白なお城。
まるでこの世界の王様が住んでいるような、とっても『りっば』なお城が、お花畑にかこまれて建っていました。
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