87 / 122
君が、私を、目覚めさせた
踏み出そう、次の一歩を
しおりを挟む
「つまりフォーレンは魔王のスペアで、魔王の役目を肩代わり出来る。だからどうにかしてオーグとかいう奴の住処に行かねえとだが人嫌いで方法が無い、と。」
「そう言ってたよ。」
ヴィオレットが目を覚ました時、レーシアとジルの姿はなく、静かに本を読み進めるエミリーとジャヴィ、ヴィオレットを抱えて武器の整備をしていたトールだけが居た。
話を聞いたヴィオレットは2人を迎えに行き、話し合いが行われることとなったのだ。
ヴィオレットが起きる寸前、マリーゴールドの名前を呼んだことは、トールしか知らない。
「オーグはたしか、魔法防御力が高いんだったかな。」
オーグという魔族は一周目に出てくることはない敵キャラクターだ。彼が一周目でフォーレンを倒した場合に二週目で現れる隠しエネミーであることをヴィオレットは知っていた。だからヴィオレットはフォーレンを見逃したのだ。マリーゴールド達の子孫達が少しでも平和に暮らせるように、と。
「あぁ。マリーからそう聞いてるが、ヴィオも知ってたのか。」
「…うん。ソレントから聞いた事があって。ソレントはなんて言ってたの?」
不自然ではない程の空白の後にヴィオレットは答える。ここにマリーゴールドが居たのなら彼女が嘘を付いたことに気付いただろう。
「オーグについてソレントに教えてもらったことは今の根城と人が嫌いなこと、それからオーグからフォーレンを奪うような真似はするなって言われたよ。」
「最悪じゃねぇか。フォーレンに肩代わりを頼まねぇとなのに。」
苦々しげに顔を顰めたトールを見遣り、ジルが口を開く。
「だがフォーレンの住処は分かっていない。オーグの所にいるうちでないと逃げられるだろう。」
「いくら魔族とはいえ、身代わりにするというのは…。いえ、すみません。彼女があの惨劇を起こした魔族だということは分かっているのですが。」
「見た目に引っ張られんなよ。情報をもらえたからといって絆されるのは危険すぎる。魔族は人を殺すことに意義を見出す種族であることを忘れるな。」
「はい。」
エミリーが目を伏せる。ヴィオレットはエミリーの手を取り、首を振る。
「身代わりにはしないよ。でも現状マリーが危ない。だから、少しの間助けてもらうだけ。詭弁に聞こえるかもしれないけど。フォーレンを身代わりにしてしまったら、何も変わらないもの。」
「ヴィオ。」
「目下の問題はどうやってオーグと交渉するかだな。」
ジルが腕を組み首を傾げると、ジャヴィが声を上げた。
「我が出る。我は人間ではない故。」
「…それは第一に頭に浮かんだけどよ、ジジイは無意識に煽るから却下した。」
「?何故。最善だろうて。アレを連れてくれば良いのだろう。」
「これだもんよ。」
「あはは…。」
トールが盛大に溜息を吐く。宥めるようにレーシアは苦笑を零した。
「私が一緒に行くよ。」
「主?」
「大人数では行けないでしょ?私はフォーレンと約束をしたし、一度魔王として眠った人間だから、少しは話を聞いてもらえるかもしれない。」
「ヴィオ。」
心配そうなエミリーの視線にヴィオレットは笑みを浮かべる。
「大丈夫だよ。それよりその間、皆に探してほしいものがあるの。」
「探してほしいもの?」
「うん。それは───。」
もしかしたらこのために、私は記憶を持って産まれたのかもしれないと、そんなことを思った。
「そう言ってたよ。」
ヴィオレットが目を覚ました時、レーシアとジルの姿はなく、静かに本を読み進めるエミリーとジャヴィ、ヴィオレットを抱えて武器の整備をしていたトールだけが居た。
話を聞いたヴィオレットは2人を迎えに行き、話し合いが行われることとなったのだ。
ヴィオレットが起きる寸前、マリーゴールドの名前を呼んだことは、トールしか知らない。
「オーグはたしか、魔法防御力が高いんだったかな。」
オーグという魔族は一周目に出てくることはない敵キャラクターだ。彼が一周目でフォーレンを倒した場合に二週目で現れる隠しエネミーであることをヴィオレットは知っていた。だからヴィオレットはフォーレンを見逃したのだ。マリーゴールド達の子孫達が少しでも平和に暮らせるように、と。
「あぁ。マリーからそう聞いてるが、ヴィオも知ってたのか。」
「…うん。ソレントから聞いた事があって。ソレントはなんて言ってたの?」
不自然ではない程の空白の後にヴィオレットは答える。ここにマリーゴールドが居たのなら彼女が嘘を付いたことに気付いただろう。
「オーグについてソレントに教えてもらったことは今の根城と人が嫌いなこと、それからオーグからフォーレンを奪うような真似はするなって言われたよ。」
「最悪じゃねぇか。フォーレンに肩代わりを頼まねぇとなのに。」
苦々しげに顔を顰めたトールを見遣り、ジルが口を開く。
「だがフォーレンの住処は分かっていない。オーグの所にいるうちでないと逃げられるだろう。」
「いくら魔族とはいえ、身代わりにするというのは…。いえ、すみません。彼女があの惨劇を起こした魔族だということは分かっているのですが。」
「見た目に引っ張られんなよ。情報をもらえたからといって絆されるのは危険すぎる。魔族は人を殺すことに意義を見出す種族であることを忘れるな。」
「はい。」
エミリーが目を伏せる。ヴィオレットはエミリーの手を取り、首を振る。
「身代わりにはしないよ。でも現状マリーが危ない。だから、少しの間助けてもらうだけ。詭弁に聞こえるかもしれないけど。フォーレンを身代わりにしてしまったら、何も変わらないもの。」
「ヴィオ。」
「目下の問題はどうやってオーグと交渉するかだな。」
ジルが腕を組み首を傾げると、ジャヴィが声を上げた。
「我が出る。我は人間ではない故。」
「…それは第一に頭に浮かんだけどよ、ジジイは無意識に煽るから却下した。」
「?何故。最善だろうて。アレを連れてくれば良いのだろう。」
「これだもんよ。」
「あはは…。」
トールが盛大に溜息を吐く。宥めるようにレーシアは苦笑を零した。
「私が一緒に行くよ。」
「主?」
「大人数では行けないでしょ?私はフォーレンと約束をしたし、一度魔王として眠った人間だから、少しは話を聞いてもらえるかもしれない。」
「ヴィオ。」
心配そうなエミリーの視線にヴィオレットは笑みを浮かべる。
「大丈夫だよ。それよりその間、皆に探してほしいものがあるの。」
「探してほしいもの?」
「うん。それは───。」
もしかしたらこのために、私は記憶を持って産まれたのかもしれないと、そんなことを思った。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。
imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。
今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。
あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。
「—っ⁉︎」
私の体は、眩い光に包まれた。
次に目覚めた時、そこは、
「どこ…、ここ……。」
何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】
ちっき
ファンタジー
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる