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君が、私を、目覚めさせた

踏み出そう、次の一歩を

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「つまりフォーレンは魔王のスペアで、魔王の役目を肩代わり出来る。だからどうにかしてオーグとかいう奴の住処に行かねえとだが人嫌いで方法が無い、と。」

「そう言ってたよ。」

ヴィオレットが目を覚ました時、レーシアとジルの姿はなく、静かに本を読み進めるエミリーとジャヴィ、ヴィオレットを抱えて武器の整備をしていたトールだけが居た。
話を聞いたヴィオレットは2人を迎えに行き、話し合いが行われることとなったのだ。

ヴィオレットが起きる寸前、マリーゴールドの名前を呼んだことは、トールしか知らない。

「オーグはたしか、魔法防御力が高いんだったかな。」

オーグという魔族は一周目に出てくることはない敵キャラクターだ。彼が一周目でフォーレンを倒した場合に二週目で現れる隠しエネミーであることをヴィオレットは知っていた。だからヴィオレットはフォーレンを見逃したのだ。マリーゴールド達の子孫達が少しでも平和に暮らせるように、と。

「あぁ。マリーからそう聞いてるが、ヴィオも知ってたのか。」

「…うん。ソレントから聞いた事があって。ソレントはなんて言ってたの?」

不自然ではない程の空白の後にヴィオレットは答える。ここにマリーゴールドが居たのなら彼女が嘘を付いたことに気付いただろう。

「オーグについてソレントに教えてもらったことは今の根城と人が嫌いなこと、それからオーグからフォーレンを奪うような真似はするなって言われたよ。」

「最悪じゃねぇか。フォーレンに肩代わりを頼まねぇとなのに。」

苦々しげに顔を顰めたトールを見遣り、ジルが口を開く。

「だがフォーレンの住処は分かっていない。オーグの所にいるうちでないと逃げられるだろう。」

「いくら魔族とはいえ、身代わりにするというのは…。いえ、すみません。彼女があの惨劇を起こした魔族だということは分かっているのですが。」

「見た目に引っ張られんなよ。情報をもらえたからといって絆されるのは危険すぎる。魔族は人を殺すことに意義を見出す種族であることを忘れるな。」

「はい。」

エミリーが目を伏せる。ヴィオレットはエミリーの手を取り、首を振る。

「身代わりにはしないよ。でも現状マリーが危ない。だから、少しの間助けてもらうだけ。詭弁に聞こえるかもしれないけど。フォーレンを身代わりにしてしまったら、何も変わらないもの。」

「ヴィオ。」

「目下の問題はどうやってオーグと交渉するかだな。」

ジルが腕を組み首を傾げると、ジャヴィが声を上げた。

「我が出る。我は人間ではない故。」

「…それは第一に頭に浮かんだけどよ、ジジイは無意識に煽るから却下した。」

「?何故。最善だろうて。アレを連れてくれば良いのだろう。」

「これだもんよ。」

「あはは…。」

トールが盛大に溜息を吐く。宥めるようにレーシアは苦笑を零した。

「私が一緒に行くよ。」

「主?」

「大人数では行けないでしょ?私はフォーレンと約束をしたし、一度魔王として眠った人間だから、少しは話を聞いてもらえるかもしれない。」

「ヴィオ。」

心配そうなエミリーの視線にヴィオレットは笑みを浮かべる。

「大丈夫だよ。それよりその間、皆に探してほしいものがあるの。」

「探してほしいもの?」

「うん。それは───。」



もしかしたらこのために、私は記憶を持って産まれたのかもしれないと、そんなことを思った。
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