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旅に出よう、彼女の元へ、行けるように
おやすみ
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あれから1週間が経った。
ライラと再会した後、私は何日か寝込んでしまい、この大自然の中ベッドの上で過ごすことになった。
たくさん眠って体調が戻った後、私はまず緑の泉に向かうことを希望した。もう一度、ライラに会うために。
でも、やっぱりというべきか、ライラには会えなかった。それでも諦めきれなくて、私はジャヴィさんに無理を言って毎日泉に通っている。泉への道を人間1人で進むのは難しい。それは1回目から実感していることだ。そして帰りは、体力的な面で運んでもらっている。
だいぶ年上のジャヴィさんだけれど、子供扱いはやっぱり少し恥ずかしい。助けてもらっているのだから、文句は言えないけれど。
今日もまた緑の泉に行き、景観に似合わない、私が寝ていたベッドのある場所まで戻ると、そこにはレーシアとトールが居た。
私たちに気付いたのか、レーシアが大きく手を振る。
「マリー!」
「あ、レーシア、トール。わぷっ。」
走ってきたレーシアにギュッと抱き込まれる。暖かい。
「よ、良かった~~!!本当に心配したんだよ?騎士達に見つかっちゃったのかと思ってさ、すごい焦った。」
「ご、ごめんなさい。よく分からないけど、ジャヴィさんが転移魔法で私を運んだみたいで。」
「マリーが謝ることじゃねぇよ。予告も無しに連れ去ったこのジジイのせいだしな。ジルが知らせてくれて良かったぜ。」
レーシアの横から、トールが私の髪をくしゃくしゃにかき混ぜる。
「こら、トール。女の子の髪を乱暴に扱わないの。」
慌ててレーシアが髪を整えてくれる。
いつもトールにぐしゃぐしゃにされた髪を綺麗にしてくれるのはヴィーだった。そしてヴィーの髪を整えるのは、私だった。
「ありがとうございます。」
「んーん。どういたしまして。」
少し寂しそうに笑ったレーシアも、同じことを思ったのかもしれない。
柔く撫でられていると、ジャヴィさんが首を傾げてトールに告げる。
「鳥が言ったのだろう。エルフの森に連れて行けと。」
「説明してからにしろってんだよ!マリーはまだ本調子じゃねぇんだから魔法なんざ使ったらキツいだろうが。」
「そうか。」
こくりと頷いたジャヴィさんに、トールが怒る。
「そうか。じゃねぇ!ったくこれだからジジイは。興味ねぇことにはとことん無知だよな。もう少し人の身について勉強しろ。」
「ヴィオレットが特別だと言うことは分かった。マリーゴールドは鳥ともヴィオレットとも異なるようだ。」
「そりゃそうだろう。俺とヴィオは、…あー、なんでもねぇ。とりあえずマリーを寝かせろ。帰りは抱っこして体力温存させたことは褒めてやるよ。」
溜息を吐いて、トールが話を切る。
やっぱりそうなのかという気持ちと、王に対する苛立ちと、よく分からないモヤモヤが心を揺さぶる。
「マリー、歩ける?」
「…うん。」
「まだ本調子じゃないね。今は回復することが第一優先。何も考えなくていいよ。大丈夫。言ったでしょ?おねーさんに任せなさい。」
「うん。ありがとうございます、レーシア。」
「どういたしまして。」
レーシアに連れて行ってもらって、ベッドに入って横になる。
森の中のベッドはやっぱりちぐはぐで落ち着かない。けれど、布団の上から優しくとんとんとお腹辺りを叩いてくれるレーシアの手に、ゆっくりと意識が解けていく。
「おやすみ、マリー。」
「おやすみなさい。」
レーシアの声があんまり優しかったからだろうか。
私の目から、ポロリと涙が1粒零れ落ちた。
あぁ、ヴィーに会いたい。
ライラと再会した後、私は何日か寝込んでしまい、この大自然の中ベッドの上で過ごすことになった。
たくさん眠って体調が戻った後、私はまず緑の泉に向かうことを希望した。もう一度、ライラに会うために。
でも、やっぱりというべきか、ライラには会えなかった。それでも諦めきれなくて、私はジャヴィさんに無理を言って毎日泉に通っている。泉への道を人間1人で進むのは難しい。それは1回目から実感していることだ。そして帰りは、体力的な面で運んでもらっている。
だいぶ年上のジャヴィさんだけれど、子供扱いはやっぱり少し恥ずかしい。助けてもらっているのだから、文句は言えないけれど。
今日もまた緑の泉に行き、景観に似合わない、私が寝ていたベッドのある場所まで戻ると、そこにはレーシアとトールが居た。
私たちに気付いたのか、レーシアが大きく手を振る。
「マリー!」
「あ、レーシア、トール。わぷっ。」
走ってきたレーシアにギュッと抱き込まれる。暖かい。
「よ、良かった~~!!本当に心配したんだよ?騎士達に見つかっちゃったのかと思ってさ、すごい焦った。」
「ご、ごめんなさい。よく分からないけど、ジャヴィさんが転移魔法で私を運んだみたいで。」
「マリーが謝ることじゃねぇよ。予告も無しに連れ去ったこのジジイのせいだしな。ジルが知らせてくれて良かったぜ。」
レーシアの横から、トールが私の髪をくしゃくしゃにかき混ぜる。
「こら、トール。女の子の髪を乱暴に扱わないの。」
慌ててレーシアが髪を整えてくれる。
いつもトールにぐしゃぐしゃにされた髪を綺麗にしてくれるのはヴィーだった。そしてヴィーの髪を整えるのは、私だった。
「ありがとうございます。」
「んーん。どういたしまして。」
少し寂しそうに笑ったレーシアも、同じことを思ったのかもしれない。
柔く撫でられていると、ジャヴィさんが首を傾げてトールに告げる。
「鳥が言ったのだろう。エルフの森に連れて行けと。」
「説明してからにしろってんだよ!マリーはまだ本調子じゃねぇんだから魔法なんざ使ったらキツいだろうが。」
「そうか。」
こくりと頷いたジャヴィさんに、トールが怒る。
「そうか。じゃねぇ!ったくこれだからジジイは。興味ねぇことにはとことん無知だよな。もう少し人の身について勉強しろ。」
「ヴィオレットが特別だと言うことは分かった。マリーゴールドは鳥ともヴィオレットとも異なるようだ。」
「そりゃそうだろう。俺とヴィオは、…あー、なんでもねぇ。とりあえずマリーを寝かせろ。帰りは抱っこして体力温存させたことは褒めてやるよ。」
溜息を吐いて、トールが話を切る。
やっぱりそうなのかという気持ちと、王に対する苛立ちと、よく分からないモヤモヤが心を揺さぶる。
「マリー、歩ける?」
「…うん。」
「まだ本調子じゃないね。今は回復することが第一優先。何も考えなくていいよ。大丈夫。言ったでしょ?おねーさんに任せなさい。」
「うん。ありがとうございます、レーシア。」
「どういたしまして。」
レーシアに連れて行ってもらって、ベッドに入って横になる。
森の中のベッドはやっぱりちぐはぐで落ち着かない。けれど、布団の上から優しくとんとんとお腹辺りを叩いてくれるレーシアの手に、ゆっくりと意識が解けていく。
「おやすみ、マリー。」
「おやすみなさい。」
レーシアの声があんまり優しかったからだろうか。
私の目から、ポロリと涙が1粒零れ落ちた。
あぁ、ヴィーに会いたい。
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