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私は、独り、流される

ひとり、またひとり

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「ソレントだ…。」

声が震えたのが自分でも分かった。ギリューの身体は中身が見えるほど切り刻まれていたという。私が遺体を直接見ることは無かったけれど、その顔は悲痛に歪み、かなり惨たらしいものであったと掃除に来てくれる侍女さん達が噂していた。

それを聞いても可哀想と思えない自分は、薄情者なのだろう。1年共に旅をした人よりも、たった1日過ごしただけの魔族に思いを馳せる。あの子が殺されたと知った時、どれほど悲しかっただろう。約束を破られたと分かった時、どれほど苦しかっただろう。ギリューを殺した時、どれほど、虚しかっただろう。だってもうエイダンは帰ってこない。

彼はこれからどうするのだろうか。人間を憎み、殺し尽くそうとするのだろうか。それとも独り、あの森でひっそりと生き続けるのだろうか。

ソレントは、魔族らしくない魔族だった。限りなく人に近い容姿。森の奥に住み、気まぐれで人を拾った変わり者。彼は圧倒的な力を持っていながら戦うことに興味は無いようだった。

彼の関心はエイダンのみに注がれ、あの子がどう成長していくのかを見守っていた。

あの子が健やかであればいいと、そう言っていた彼の瞳は、優しく、そして穏やかだったのを今でも覚えている。

この世界はいつだって理不尽で不平等だ。どうして、何故、と思うけれど、私が泣き喚いたところで、世界は何も変わらない。

どうにも取り残されているように感じて、でもそれがヴィーと共にある証明であるなら、私はそのまま受け入れよう。もう一度ヴィーと出会うその日まで。

ギリューを殺した犯人探しで騒がしい今なら、きっと私がいなくなってもバレないのではないかと思う。準備が出来たら、そっと城を出よう。1人で旅をするのは怖いけれど、誰も巻き込む訳にはいかないから。

カバンに色々詰め込みながら、ソレントを思う。私達との約束が破られた今、ソレントを縛るものは何も無い。ソレントは何を選び、進むのだろう。



今日もまた1人、牢屋で騎士が殺されたらしい。その騎士も、あの森に入った者だった。
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